作家名:秋丸知貴(’97芸術学科)
出版案内
本書は、19世紀におけるフランス印象派と蒸気鉄道の関係を総合的に分析し、特にポール・セザンヌの造形表現に蒸気鉄道による視覚の変容が与えた影響を世界で初めて考察した博士学位論文の単行本版です。また、ヴァルター・ベンヤミンの「アウラ」概念を「同一の時空間上に存在する主体と客体の相互作用により相互に生じる変化、及び相互に宿るその時間的全蓄積」と解読し、近代技術による「アウラの凋落」と、近代絵画におけるルネサンス的リアリズムの凋落が同時代の相関現象であることを読解しています。そして、そうした近代技術(モダン・テクノロジー)による心性の変容の象徴的反映こそが、近代芸術(モダン・アート)における近代主義(モダニズム)の核心であることを指摘し、美術史の新しいパラダイムを提唱しています。なお、本書は2010年度~2011年度京都大学こころの未来研究センター連携研究プロジェクト「近代技術的環境における心性の変容の図像解釈学的研究」の研究成果の一部です。
目次
第1章 印象派と蒸気鉄道――マシネズリー(Machinaiserie) からマシニスム (Machinisme) へ/第2章 ポール・セザンヌの絵画理論――「感覚の実現」を中心に/第3章 ポール・セザンヌの造形表現――様式分析による一〇の特徴/第4章 ポール・セザンヌの最初の鉄道絵画――《ボニエールの船着場》(一八六六年夏)/第5章 ポール・セザンヌの鉄道画題――自然と近代の対比/第6章 ポール・セザンヌと蒸気鉄道――近代技術による視覚の変容/補章 近代絵画と近代技術――心性の変容の造形的反映
書籍情報
秋丸知貴『ポール・セザンヌと蒸気鉄道――近代技術による視覚の変容』(晃洋書房・2013年11月・定価3,500円+税)
WEB:http://www.koyoshobo.co.jp/booklist/1855/