No 19 早川 和彦さん(早川和彦デザイン事務所)

早川
プロフィール 
1984年 岐阜県高山市生まれ

2007年 アートセンターカレッジオブデザイン(LA)交換留学
2008年 多摩美術大学プロダクトデザイン学科卒業後、セイコーウオッチ株式会社勤務
2014年 早川和彦デザイン事務所設立 多摩美術大学Pacific Rim Project非常勤講師(2012/2014) 

Bicycle Street Design Competition Aoyama最優秀賞、 神戸ビエンナーレ国際玩具展・奨励賞、 木のデザイン展・入選、Heineken open design exploration in milano salone・日本代表選出 など

インタビュー
聞き手:安次富 隆


早川くんは学生時代から「おしゃれ」という印象を持っています(笑)。容姿だけではなく、デザインも如何におしゃれであるか?を追求しているように感じていました。デザインにおけるおしゃれとは見た目だけでなく中味もおしゃれでなければなりません。卒業制作の「その風のエアーサーキュレーション」は、人感センサーを備えた41個のファンを個別に制御することで、自然の風のように室内の空気を循環させる装置の研究でしたが、システムもスタイリングも、おしゃれだなぁと思った記憶があります。 「何故、本体を白色にするの?」と質問した覚えがありますけど、自然と人工の絶妙なデザインバランスを追求していたからに違いなく、今思えば愚問だったと反省しています。
早川
そよ風のエアーサーキュレーション(卒業制作、2008年)

ものの価値とは機能や形状だけではなく、そのものに含まれるコンテクストが大事だと思います。なぜならば、価値は時間の中で揺れ動き、時代にとって相応しい物事も変化してゆくからです。そのために、物事の前後にある環境・状況等様々な文脈から関係性を導きだし、それぞれに適した手法や表現方法でデザインを行っています。人類が脈々と受け継がれてきた是迄のものづくりの歴史の上で、時には起源まで遡りフラットな視点で思考し、次の時代へと続いて行くデザインをしていきたいという思いがあります。

Q1:早川くんがデザインで大切にしていることは何ですか?

デザインで大切にしていることは対象によって様々ありますが、自分にとってデザインとはと考えた時、個人として活動を始めた頃からずっと悩み続けていました。ある時、人に話していて気がついたのは、物事を考える時、ルーツというか起源にまで遡りそもそもそのものは何だったのかと探る癖があるということでした。普段無意識にしている自分の行動や思考を知る事が一番難しいのかもしれません。今ではそれが、意識的にデザインを考える上での自分のスタイルの一部になっています。人類が昔から繰り返してきた事や、DNAに刻まれている感覚、民族を超えてのそこにある共通性のようなものに興味があります。 おしゃれと言って頂きありがとうございます(笑)。デザインを考える上でおしゃれということを最優先にしている訳ではありませんが、おしゃれとは今いる時代の空気感やバランス感覚や「らしさ」のようなものだと思っています。ですので、提案する上でそのセンサーは持っていたいし、心地よさや調和等、過剰なものではないおしゃれさみたいなものは意識しているのかもしれません。

Q2:今回の展示作品デザインについて解説してください。

今回展示は製品化になったもの、ならなかったプロトタイプも含め、活動初期のころの作品から、現在進行中のプロジェクトまで、考え方の最初の部分から生み出したものを選びました。

展示作品について

早川
BRICK STAND
自転車スタンドのコンペで最優秀賞を頂いた作品です。コンクリートを用いて、景観を損なわず、環境に応じて配置や保管可能な自転車スタンドのデザインをしました。

早川
早川
Half stool 
初めての家具の提案です。持つ座るという機能だけでなく、空間の中での親和性や台としても機能するスツールを考えました。 様々な物が空間を占める中で半分に切り取られ た面があるからこそ、空間に存在する他の家具や面との親和性があり、すんなりと生活空間に馴染み収まることができるのではないかと考えました。 玄関先のスツール、ベッドやソファーのサイドテーブルとしても使用できます。

早川
Blooming curiosity(アクリル玩具)
透明アクリルの中に彩色されたアクリルを封入するという技法のもと、透明な中に輪郭が溶けたような色の形が浮かぶアクリルの玩具を作成しました。花や植物に見られる形態を抽象化しその形状を積み上げる事と、その重なりの中で形が表れることの現象を取り入れました。反射し 色を透過し、見る角度によって見え方が変化し様々な表情を見せる光のオブジェでもあります。

早川
Oil & SAUCE POT / SALT & PEPPER  
既存のものに何かを加える事で新しい用途を生み出すという試みの一環で制作しました。既存のガラスの容器に、穴や注ぎ口等の機能のある栓を 加えることで、オイル、ソースポットやソルトペッパー等の テーブルウェアとして使用することができるシリコン性の栓をデザインしました.
早川
Illumicap(KIRIN x WHITE共同開発) 
飲料メーカーであるKIRINが仕掛けるIotプロダクトのデザインを担当しました。IotとはInternet of thingsという言葉の略でインターネットにつながるモノを表します。飲料から新しい体験をというテーマのもとアプリと連係して光を自在に操ることのできるデバイスとその拡張性も含めデザインしました。スパイラルの溝は、その外へ繋がる実用的なスクリューとして機能し、ボトルとの接続だけでなく様々なアクセサリーとの接続を可能にします。

早川
Dining table  
製品化途中のダイニングテーブルのデザインです。鉄の鋼板のみを素材としたの構造という制約の中、シンプルにしすぎてモダンな印象になりずぎず、古いアンティークの椅子やモダンな椅子まで組み合わせて使用出来るという要望を叶えるデザインをしました。アンティークで扱われる家具は西洋のものが多く、その家具の歴史を遡り様々な意匠のなかから抽出された形状の骨組みをテーブルの脚のデザインに取り入れました。

Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことは何ですか? 
当時の僕は身勝手なところが多かったように思います。これだ!と思って勝手に進んでみて、違った失敗したと思ってまた次は違う方向で試すの繰り返しで、自分の課題を振り返っても一貫性がなかったなと思ってます。自由に発想を展開出来た環境の中での学びといっても独自のデザイン論などを教わる講義ではなく、課題を通して先生方が一人ひとりの考えやプロセスに対して真摯に向き合い指導をして頂ける環境にあったことで、考える事とはなにか、観察することとは何かという、プロダクトデザイナーを育てる以上のデザイナーとしての大事な基礎を学べたと思っています。卒業して数年経ちますが、当時の自分ではまだまだ理解に及ばなかった先生方から言われていた事が時間差で効いてくる薬のように、今の自分を支える言葉となっていることにとても感謝しています。また、今となってもそれぞれ活躍し刺激し共有し合える仲間に出会えた事も良かったと思うことです。 

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。 
個人で仕事を始めてからですが、様々な人と出会う中で学生の頃に思っていた以上にプロダクトデザイナーが活躍出来る場所が多くあるという発見がありました。自分もまだまだ未完成な身ですが、今は学生の頃のように新しい分野に入って揉まれて進んで戻ったりしながら、プロダクトデザイナーとしての仕事の可能性をもっと拡げていきたいと思っています。ですので、活動の範囲を決めすぎず自分の好きな事、興味や気になる事、学科やデザインに関係がないと思う事全て深く掘り下げていってみて下さい。その先に新しい発見が待っていると思います。 

早川くんが言う「時には起源まで遡りフラットな視点で思考し、次の時代へと続いて行くデザインをしていきたい」という考えに共感します。 モノはあくまでも、ある目的を達成するための手段でしかありません。私たちプロダクトデザイナーがデザインしなければならないことは、モノを媒体として提供される価値です。そのため、モノの起源まで遡ることは、モノに内包された価値の変遷を知ることに他ならず、次の時代に引き継ぐべき価値を発見する唯一の手段とも言えると思います。早川くんは、そういう高い目標にチャレンジしているんダ!と思い嬉しくなりました。ありがとうございました。 

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