ユーロ=アジアをつらぬく美の文明史

鶴岡真弓

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わたしたちの「日本/列島」は、西洋キリスト教文明が「世界史」を構築していった大航海時代以来、インドやカタイ(中国)の彼方にある「極東の島国」として描き出されてきた。『魏志倭人伝』に記されたように、漢民族、中華文明からまなざされる場合も、東海の彼方の周縁とみなされた。
しかしながら、北半球で最大にして地球上最も多様な民族文化を培ってきた「ユーラシア」大陸を見渡せば、この極東の列島は「東の縁(ふち)」ではなく、「東の極み」を占める文明の「極」であることを発見させられる。
すなわち日本/列島は「大陸」には属さないが、特殊・孤立の性質とは逆に、ユーラシア「世界」を東の極みから眺望するヴィスタを占めてきた。その芸術文化は、およそ一万年前の縄文文化から、「開かれたユーロ=アジア性」を、芸術や宗教儀礼に表し営みをつづけてきたのである。
たとえばアイヌの人々の衣「アトゥシ」は、シベリア沿海州のナナイ族の人々の花嫁衣装にいまも生きる曲線文様を共有し、さらにそれは、カザフスタンの騎馬草原文化から出土する、動物の躍動的なシルエットを反映させている。「フローラ(植物)界とファウナ(動物)界」を交流させた、北方ユーラシアに普遍的な「生命のしるし」のデザインとしてそれはあり、遠く、西の極みの北方ヨーロッパ文明(たとえばケルト文明)の意匠にまで、通じていることを発見させられる。
この部門の探求は、これまで個々別々に観察されてきた民族・集団の芸術を、閉じられた伝統的枠内からではなく、それらの間に動的に「分かち持たれた共有性」から見直してゆくことにある。
そのようにして得られる「ユーロ=アジア世界」の文明史のネットワークによって、人類がつくりあげてきた、「デザイン=構想の力」の真のダイナミズムを、掘り起こしていくものである。

Art Anthropology 12号
Ⅴ《ユーロ=アジアをつらぬく美の文明史》アイルランド「万霊節」の「火と陽」の新発見――ハロウィンからサワィンへ/鶴岡 真弓


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