take off … (Green)

審査員賞

portrait
toru tohiguchi
Japan
Title:
take off … (Green)
Technique:
serigraph
Image Size:
20x20cm

審査評:小林敬生/版画家「あそび心に喝采」

現代の版表現には2つの潮流がある。即ち「版画」と「プリント・アート」。

創作版画以来の自画・自刻に拘り、培った技術と自らの技法を手に版と対峙する版画家たち。彼らにとって版材は単なるものではなく何ものにもかえがたい共犯者なのだ。

コンセプトメーキングを重視し、printによってその概念世界を実証しようとするプリント・アート。スクリーンプリント或はデジタルプリントなど現代のテクノロジーを活用する作家たちアーティストが躍動する。

私が選んだ東樋口徹氏の《take off ... (Green)》はプリント・アートそのものである。Printの積み重ね(30回以上は刷り重ねている)によって生まれた色層レイヤー活用いかして輪郭線だけのフォルムに独特のリアリティーを与えている。同時に、ただひたすら刷り重ねるという行為の重さを微塵も感じさせない潔さが心地良く、図像と画題タイトルから透けてみえる“あそび心”が楽しい。作者のこの作品に込められた意図メッセージを読み解こうとする時、すでに私たちは彼の術中におちているのだから……。

さも意味あり気にコンセプトを云々することや生真面目に版と対峙する姿勢を揶揄するが如き“あそび心”に喝采!!である。