Color

審査員賞

portrait
maria dolores orozco
Spain
Title:
Color
Technique:
other
Image Size:
17.3x11.9cm

審査評: 峯村敏明/美術評論家

とりとめのない線や形態や色彩のかけらが一面に浮遊するこの作品。意味や形態や何らかの主題を期待する向きには不評だろうが、私には一定の絵画的愉悦をもたらしてくれる。作者の同国人オルテガ・イ・ガセットが1世紀も前に説いたように、これは窓の向こうを見せる絵ではなく、窓そのものの表面で生起する事象として成り立つ近代絵画の常道に則った作品である。版画芸術はとかくその常道を嫌って「窓の向こう」の形態やイメージに独自性を求める傾向が強いけれど、そしてそのこと自体は咎められるべきではないけれど、本作のような作品も版画技法で十分可能だということを確認したいのである。もっとも、本作がどのような版画技法を用いているのかは分からない。技法欄には「other」としか記載されていないが、混合技法ということか。できれば具体的に明記して欲しいものである。さらに注文するなら、窓の表面を見るということは、窓の向こうに否応なしに見えるものを無視すべきだということではないはずだ。今日の視覚表現は現実の多元性にこそ対応すべきである。