Inside the soul

準大賞

portrait
praween piangchompu
Thailand
Title:
Inside the soul
Technique:
woodcut
Image Size:
13x14cm

審査評: 峯村敏明/美術評論家

もう一つの準大賞作品とは対照的に、心の内側だけを見つめて、それをありふれた食器ひとつの存在感に仮託した作品である。けれど、造形的には視覚的あいまいさを周到に演出して、存在するものの不確かさ、それを見ることの不確かさを的確に表現している点で、二つの作品は驚くほど共通している。異なるのは、この作品が、そうした不確かさをかいくぐってなお現われ出ずにおかないものの清澄なヴィジョンを、寡黙に、あくまでも優しく差し出している点であろう。技法は木版だけのようだが、線と形態と色彩の表現に便利なはずの木版技法から、このような高度のあいまいさを引き出した例は、木版大国の日本でもまれではなかろうか。薄青の水を少しだけ底に含んだ広口のボウルが、よく見ると銀灰色の箱様に仕切られた空間に収められているのだが、箱様の空間は、見る角度によっては消えてしまうくらい、在るか無きかの不確かさである。同僚の版画家の話では、銀の効果によるらしい。形而上期のモランディを思う人もいよう。むろん、本作の方がもっと深く、もっと良い。