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大学院教育改革支援プログラム
異文化相互批評が可能にする高度人材育成

大学院教育で私たちが目指す新しい取り組み

about
—アート&デザイン国際講評会の実現に向けて—
多摩美術大学大学院 美術研究科デザイン専攻 教授博士(経営学)
International Art&Design Critiques Committee運営責任者
CO-COREプログラム代表

岩倉信弥


このたび多摩美術大学大学院( 博士前期・後期課程)は、文部科学省の競争的補助金事業である「大学院教育改革支援プログラム」の採択プログラムに選定されました。

私たちが日頃取り組んでいる教育プログラムが高く評価されたと言うことであります。大変光栄に、うれしく思っています。

私たちの教育プログラムは、「異文化相互批評が可能にする高度人材育成」と名称しております。加えて副題で具体的に「閃きを誘発する国際講評会の実現」としました。

講評会というのは、私たちにとってなくてはならない大変重要な教育的節目です。学生は講評会に向け作品や研究に磨きをかけ、指導教員や関連学生の前でプレゼンテーションを行います。それまでは自分の中で組み上げ、熟成してきたものをいきなり人目にさらすわけですから、彼らの緊張感は手に取るようにわかりますし、また、その「本番」を経験することで彼らはひとつ大きくなれるのです。

講評会は、基本的に健全な批評の場です。

共感もあれば疑問もあります。予期せぬ批判もあるでしょう。それをはねのける発想や工夫に結びつくでしょうし、また同期学生の言葉から、稲妻のようなインスピレーションが舞い降りてくることもしばしばあります。だからこそアート& デザイン領域における講評会は、大学院生の人間成長に欠かすことができない重要な場なのです。

前後しますが、少し概略的なお話しに戻らせていただきます。私たちの大学院教育は、大きくアートとデザインの両領域にまたがっており、その両研究分野が、専門性を構築するとともに、双方が刺激をし合い、より刺激に満ちたシナジー効果を生み出すというきわめて有効かつ、高度な構造を持っています。言うまでもなく、専門教育というものは縦軸の流れを持ち、その中で厳しい教育課程をひとりひとり学生が登山をするように一歩一歩あゆみを進めるものです。

しかしながら同時に、教育というのはそれだけでは十分ではありません。人とのふれあいや、私たちの教育現場で言うならば、展覧会や研究会への参加、自主的な発表の場を持つことなど、人間的な幅を身につけ、豊かに深めてほしいという、学生個人個人の成長に期待する面も持っています。また、予期せぬ作品、予期せぬ人との出会いがもたらす瞬間的な創造というものも、人間成長には大変重要な要素です。
私たちは、これを「横軸」と呼び、アート& デザイン教育には欠かすことのできないものと尊重してきました。

講評会は、私たちにとってもっとも重要で魅力的な「横軸」であり、「縦軸」との交点であります。この「横軸」を重視した上で生まれる交点を、もっともっと機能的に活用したいと考えている最中の、補助金採択でありました。私たちの地道な日頃の取り組みが国によって評価されたわけですから、これほど喜ばしいことはありません。

私たちはこのプログラムの中で、大きく二つのことをしたいと思っています。ひとつは、世界を舞台にした「アート& デザイン国際講評会」の立ち上げと実施。

詳細は本編に譲りますが、私たちと同じく講評会を中心に横軸教育に取り組んでおられる大学院は全世界にたくさんあります。私たちは、その中のいくつもの教育機関をおたずねし、学生主導型・学生同士の活発な「国際講評会」を実現したいと考えているのです。

もうひとつは、世界中の学生がここに参加してほしいという願いを込めて、「クリティカル・ノート」というアーティスト・インデックスを、私たちだけでなく、世界中の学生とともにインターネット上に作り上げていきたいと思っています。国際講評会本番までに、双方の学生たちの作品を事前に知り、知識を深めておくことができます。また、このデジタル・ノートは本番のプレゼンテーションでも大変有効に活用されることになるでしょう。

もちろん、国際講評会とクリティカル・ノートの教育効果というものを私たち教員は十分注意深く設計していかねばなりません。そのために、早期に世界中の大学院教員、研究者をメンバーとした研究会を実現し、十分検討していきたいとも思っています。

私事で恐縮ですが、本学を卒業後ホンダという企業にあって、一デザイナーから経営陣の一人として商品担当役員を務める中で、さまざまなレベルの「評価会」が、私を育ててくれたと考えています。高度な決断の場面、異質な意見との戦い、国内にとどまらず海外の消費者との志向の違い、こうした自分以外のレベルや考え方の異なった人たちとの触れ合いや触発が、私の能力向上に大変役立ちました。

このような経験を通じ、この度の教育プログラムには強い思い入れがありますとともに、ぜひ今の若い学生といっしょになって実現していきたいと決意を新たにしているところです。

最後になりましたが、私たちはこの取り組みに「CO-CORE」という名称を与え、親しんできました( ココアと読みます)。飲み物のココアという温かいイメージもありますし、「共に・中心である/ 中心を作る」という意味を含めたCO-CORE でもあります。教育プログラムの総称としてもこのCO-CORE を引き続き使っていくことを先日決定し、より一層親しみを感じているところです。

私たちはこのパンフレットをメディアとし、これから世界中の大学院、教育機関に呼びかけていこうと思います。
みなさんのご関心をいただけましたら、またご参加をいただけましたら、これほどうれしいことはありません。よろしくお願いします。
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