今回の調査の目的のひとつに、浄土真宗の重要行事「報恩講」への参加がありました。 富山県は、浄土真宗(一向宗)が深く根付いている地域です。 そして、秋から冬にかけて、開祖・親鸞の命日を偲んで、「報恩講」という講が行われます。 今回は南砺市で住職をしていらっしゃる太田浩史さんと南砺市ヨスマ倶楽部の皆様のご案内で 参加することとなりました。
太田住職は民藝にも造詣が深く、自然今回の旅でも民藝との出会いが多くありました。 「芸術は『私』があるけれど、民藝には『私』はいらないのです。」と太田さんは仰います。 「そこにあるから普通に使うし、高価だから、希少価値があるからといって、飾ったり蔵にしまう だけということはしません。道具は使われるために作られたのです。だから、使ってあげるのが いい。その民藝の気風と、私たち南砺市の土壌に育っている蓮如上人以来の伝統、『他力』の精神風土 が合っているのでしょうね。」 他力とは、自我を主張することや個人主義、自分だけ得をすればいいという考えとは反対に、 生きること自体を「おかげさま」と人びとがお互いに感謝することだと言います。
柳宗悦は、弟子・棟方志功の作品に、この「他力」の影響を見て、それを追究して理論化し、 「土徳」を発見したのでした。そしてまた、そこに民藝の精神と同じものを見出しました。
(とても薄手の中国のお皿ですが、よく見ると、たくさんの魚の姿が手で描かれています。 何気ないお皿一枚にかける手間を惜しまず、楽しんでいることを感じさせます。) (雑誌『工藝』の初期本です。タイトルが漆によって手描きで起こされています。) (こちらは、当時の布張りの表紙に、やはり手描きで文字が書かれています。民藝運動の志がそのまま 表紙や本の作りにも表れているようです。)
「『土徳』は本来、普遍的なものです。ここだけにしかないものではないし、 その土地土地で違う土徳が存在している。だから、本来は私たちがあえて『土徳です』と 言うのもおかしいのです。なぜなら、それは言葉にならない、空気のようなものですから。」 太田住職は、「三流の都会であるよりも、超一流の田舎でありたい」と言います。 表向きの生活面が便利になればよいのではなく、その根にある思想や土着性を捨てずに育てながら 生活をしていく姿勢が、その言葉に伺えます。
※本年のブログはこれで一休み致します。 この調査報告は、1月も続いて終了する予定です。
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