2010.07.26
卒業生だより -仙田周平 さん-

『卒業生だより』5回目は、仙田周平さん(2007年卒)です。
仙田さんは、今年イタリアのデザイン事務所に転職が決まりました。そのきっかけとなったのが
「MACEF DESIGN AWARD」の2008年に一位、2010年に二位に入賞したことだったそうです。


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(1)「MACEF DESIGN AWARD 2008、2010」の作品を詳しく説明してもらえますか?

「MACEF DESIGN AWARD 2008」
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「2015年の食卓」というテーマに対する作品です。
このスプーンは「私たちは、自然の恵みを受けて生きているのだ」ということを、そっと感じさせてくれます。
将来、私たちが今以上に「食」を人間の根源的な営みとして、大切に想ってくれるようにとの願いが込められています。





「MACEF DESGIN AWARD 2010」
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「the intelligent hand」というテーマに対する作品です。
手で描かれた折り目により機能する書類用ファイルを提案しました。
従来のファイルは、直線の折り目によって機能(開いたり閉じたり)しますが、
このファイルは、それが自由な曲線で出来ています。
これにより、従来のものより、美しく機能し、審美性も向上します。
アイテムの構成要素全体でなく、ある一部分が大きな違いを生み出すことこそが
「the intelligent hand」であるとこのファイルは表現しています。
このファイルは、CDケースや写真や書類のファイルに応用できます。




(2) 「MACEF DESIGN AWARD」に二度も応募した理由を教えてください。

2008年のときは、それまで、食をテーマとしたデザインや、
テーブルウェアのデザインに取り組んだことがなかったから、という単純な理由でした。
2010年のときは、「the intelligent hand」というテーマが、とても興味深かったからです。
それは、卒業制作時に、手を使って考えるデザインの手法に取り組んでいたので、
思い入れがあったのだと思います。ですので、同じのに2度応募したことはほとんど偶然です。
あと参加するかどうかは、いつもテーマで決めますが、どちらもそれが魅力的だったことが理由だと思います。


(3) 在校生へのメッセージをお願いします。

失敗や評価を気にしすぎず、やりたいと思うことがあるなら挑戦し、
出来ることからひとつずつ自分のペースで歩み、
自分なりに得られた何かから始めることが大切だと思います。
それを受け入れることが出来るだけの環境がここにはあると思います、がんばってください!


2010.06.17
卒業生だより -三井てまり さん-

先日、研究室に素敵な照明が届きました。
さっそく、卒業生の作品や参考製品が集まる「サロン」に置かれています。

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4回目の卒業生だよりは、この照明のデザイナーで、
オーデリック株式会社の三井てまりさん(2007年卒)です。


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(1)ododo誕生の逸話を聞かせてください。


この照明のコンセプトは『コードがしっぽの光るいきものたち』です。
この商品は通常の業務であるカタログに載る照明器具とは違い、オーデリックのアンテナショップのために
制作したものです。そこでスタンドタイプの照明を考えるということになり、そのとき最初に思ったことは

「どんな風に作るのであれ、出来上がった照明にコードがなんとなくぴよーっと出てしまうのは何か嫌だな・・・。」

ということでした。そこで、

「コードをしっぽのように見立てて、なんだかよくわからないけど、
 モノとしてかわいらしいような愛着のわくようなものはできないかな。」

ということを考えました。

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(2)デザインで苦心したことがあれば教えてください。


これは波佐見焼といって長崎県波佐見町というところで作られている磁器です。
磁器は陶器とは違って透過性があります。磁器は陶石という石を粉砕して粉にし、
それをこのような中空の形を作る場合は、鋳込みという手法によって成形されます。
鋳込みは急須や土瓶などを作るのに適した手法です。その際は陶石の粉を水などで溶いてさらさらの泥のような液状にし、
それを石膏で型に流し込み、型の内側に肉厚が付いたら、余った泥を捨て、しばらく型を放置した後、成形されたものを
型から外す。という手法です。そこから乾燥・素焼きをし、釉薬をかけ、また焼いて完成です。

元は泥のようなものなので、あんまり薄かったりするとできません。
あと、型から外すときや焼くときなどにも形自体に十分な高さや厚みがなかったりすると、崩れてしまいます。
そういうことを窯元の方とやりとりをして修正を繰り返していきました。

その修正というのも、単に焼き物としての製造上のことだけでなく、
ランプを入れて長時間点灯した場合を想定した試験を繰り返し、
なかなかその基準をクリアしなかったため、何度も修正を加えざるを得ませんでした。
会社の人にも、窯元の方にもずいぶんご迷惑をかけてしまったと思います・・・。

そんなこんなで出来上がったものですが、コードがしっぽのように見えるかは・・・微妙な気がしないでもないですね(笑)。
当初のコンセプトである何の動物なのか言い当てられないような変な、愛嬌のあるフォルムにするのが目的でしたので、
そこを見てもらえたらいいなと思っています。


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(3)後輩へのメッセージを頂けますか?


学生の頃の私は(今もあまり変わらないけれど。)可もなく不可もなくというか、
強いて言えば元気だけが取柄で(そのくせ何かあるとすぐ落ち込むのです。)周りのみんなに刺激されながら、
大学での日々を過ごしていました。
とりわけ成績が優秀というわけではありませんでしたし、何をデザインしたいかという確固たるビジョンが
あったわけでもありませんでした。

ただ何かしらの表現を通して、人の生活とか暮らしとか、そういうものに関わっていけたらいいな。とは思っていました。
そんな私も友達に支えられ、先生方や副手さんにもとてもお世話になり、笑ったり、悩んだり、ときには泣いたりもして、
周りの人たちに迷惑掛けてしまったことも多々ありました。
周りと比較して、自分にガッカリすることもたくさんありました。(というか今もあります!!)
褒められてうれしかったり、痛いところを突かれて落ち込んだりの連続です。
とはいえ、月並みですが、そのときがあったからこそ、今があるのだと思います。
そして、現在の私が過ごしている『今』という時間も今後の私の在りようや考え方に影響していくことでしょう。

学生の時の『今』はまだ、自分が将来どうなりたいかわからないかもしれないですが、どんな方向に進むのであれ、
自分に自信をもって取り組むことが大事だと思います。
そして、美しいとかきれいだとかを感じる心を大切にしてほしいです。その気持ちを通して、自分なりの表現が生まれるのだと思います。

それが将来的にどんな形であっても、モノとしてでなく、コトでも何でもいいのだと思います。
当り前だけれど、自分は自分以外にはなれないのだから、みんながちがっていてもいいはずです。
解答はいかようにもあるはずですし、絶対的な正解が存在するものでもありません。
それは人によって、そしていろんな状況によって、また様々な力関係によって変化すると私は思っています。
その中で、どういうラインを自分が選び出すのか。それが自分にしかできないモノ、コトにつながるのだと思います。
(と、自分に言い聞かせつつ書いています・・・。)

あと、大学で出会った同級生たちは私にとって大切な友達であり、ライバルであり、そして尊敬の対象でもあります!!
不思議な感情ですが、そのような人たちに出会えたことに感謝しています。
だから、みんなで切磋琢磨して(ときにはモチベーションが下がるときもあるだろうけど。)自分のラインを見つけていってほしいなと思います。

となんだか話が長くて、ありきたりで、偉そうで・・・恥ずかしい限りですが、自分なりの考えを持って、物事に取り組んでほしいと思います。
最後に今回紹介させていただいた商品はDay by Day青山店にて販売しております。

Day by Day青山店
〒107-0061
東京都港区北青山3-7-10 MTビル2F
注:ちなみにこの店舗は今年の10月に吉祥寺の伊勢丹跡地に建てられる商業施設に移転予定です。
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三井さん、ありがとうございました。


[tkhn]

2010.02.05
卒業生だより -青柳翔太さん-

3人目の「卒業生だより」は卒業後、ロンドンのRoyal College of Art(RCA)に留学中の
青柳翔太さんから、留学生活の模様をご紹介していただきます。


- from aoyagi -

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2009年に多摩美のプロダクトデザイン専攻を卒業し、その年の秋からロンドンの
Royal College of Artという学校に留学中です。

こちらに来てから5ヶ月ほどが経ちました。今回が初めてのレポートになります。

僕はこの学校のDesign Productsというコースを専攻しています。
ここは大学院大学なので基本的に1、2年生しかいません。

僕の専攻には2学年合わせると70名ほどの学生がおり、
そのうちの半分以上がイギリスの外から来ている留学生です。

授業の言語はもちろん英語ですが、教室にいるといつも多様な言語が聞こえてきます。
みんなひとつの教室の中にいます。




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教室にある掲示板

Design Productsにはプラットフォームという独自の制度があります。

これは日本の大学にもあるゼミのようなもので、2〜3人の講師が
それぞれを担当していますが、彼らの関係に上下はありません。

またこの専攻を管理する側がプラットフォームを持たないので、
全てのプラットフォームは対等で、その独自性を維持しています。

これが多種多様なアウトプットがRCAの学生から生まれるひとつの要因かもしれません。

プラットフォームは個別に異なる嗜好を持っていてるので、講師によるプレゼンテーションのあとに
各自が学びたいことに最も近いと思うところを選ぶことになります。

現在、6個のプラットフォームがあります。
つけられた番号は2・6・8・10・12・13とバラバラで、どこか永久欠番のようでかっこいいです。


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基本的に、各自の属したプラットフォームでの課題・研究が大学での中心的な活動になりますが、
その他に面白いものとして回路設計や電子部品の操作などへのサポートもあります。

Arduinoといったプログラミング操作が可能な基板を使用し、
簡単な用途としては照明などの光の強弱をコントロールできたり、
カメラやマイクなどのセンサーを使用してインタラクティブな装置を制作するなど
用途は色々考えられそうです。

実際に動くモデルを作ることで得られるリアリティはとても大きいです。

他人に体験してもらえばその場でフィードバックがすぐに得られるし、
検証からさらに飛んだアイディアにつながるかもしれません。

このプログラムには、数年前にRCAを卒業したデザイナー(写真左)が講師として来てくれています。
上の写真はコイルを使って金属に磁力を持たせる簡単な実験をしているところです。

授業が終わってから片付けをしていたときの雑談から始まったのですが、みんなとても興味深々です。

その後、コイルの話からRFIDの話題になりOyster Card(日本のSuicaのような交通カード)を
学校のカードリーダーに近づけるとお金を吸い取られる とか、だったら逆にハックできるんじゃないか
と話は変な方向に。。。技術的には可能だそうです。

今回は僕のいるコースを簡単に紹介しました。
次回はWork in Progress Showについてレポートします。

–青柳


青柳さんには今後も留学生活の様子をレポートしていただく予定です。
どうぞお楽しみに!



2010.01.27
卒業生だより -兵野涼子さん-

卒業生だより」の第2弾です。

2009年に卒業した兵野涼子さんの卒業制作がWallpaper*のWEBサイトに掲載されました。
世界各国の美術・デザイン学校の卒業制作が紹介されているなか、兵野さんの卒業制作も選ばれました。

今回は兵野さんに卒業制作の紹介や思い出をお話ししていただきました。

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(1)卒業制作の作品を紹介してください。

泡や雪のように繊細で美しい白色を表現したい。
この思いから、光の乱反射を利用したパーティションを作成しました。
光の乱反射によって生まれる「白色」を形として表現することがこの作品のコンセプトです。

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この作品は、アクリルに泡のイメージから抽出したグラフィックパターンをレーザー加工で刻み込んでいます。複雑な乱反射を作り出すためにアクリルをレイヤー状に5層重ね、距離感や浮遊感を演出しました。


Deepenでは造形と密接に関わった色彩表現をテーマに、構造色や光の乱反射から
生まれる白色など顔料や色素以外の「色」を研究しました。

そこから、光の乱反射によって白色に見える素材の収集、サンプル作成などを経て
レーザー加工での表現方法を模索していきました。


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(2)卒業制作で苦労したことや良かったことなど思い出を教えてください。

一番苦労したのは構造です。

なにしろアクリルの総重量が70kgもありましたので、私一人では知識不足のため
物理的な強度や構造を考慮したデザインをイメージすることができませんでした。

そのため毎日工場に行き、形のイメージやコンセプトを伝えながら作品にとって
最も適した構造を職人さんと一緒に模索しました。

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自分が理想とする素材や技術にチャレンジ出来たこと、これが一番良かったことです。
通常の課題では入手しやすい素材を用いて制作しますが、卒業制作では理想の素材を
惜しげも無く使うように心掛けました。

その為、加工方法や素材など多くの知識を得ることができ、加工方法に自分なりの工夫や
こだわりを取り入れることが出来ました。

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(3)これから卒業制作に取り組む後輩たちに向けてメッセージをお願いします。

卒業制作は、4年間一緒に頑張ってきた仲間と取り組む最後の課題です。

同じ思いを胸に抱く仲間と作品を作り出す経験は、なかなか出来るものではありません。
卒業制作自体は個人制作ですが、まずこのことを大切にして欲しいと思います。

あとは諦めないこと。デザインに、時間に、自分自身に。

理想とするデザインを実現する事やモチベーションを維持するのはとても難しいことですが、
諦めずに一歩一歩積み重ねていって下さい。

体力のあるデザイナーになることが、社会の中では大切なのかな、、
と最近、私は思います。

思い通りにいかないこと、自分に歯痒さを感じることは沢山ありますが、
諦めずに進む事が何よりも大切だと思います。

頑張って下さい。



2009.12.15
卒業生だより -横井康秀さん-

「卒業生だより」・・・・

こちらでは多摩美プロダクトデザインの卒業生がつくったもの、卒業生の活躍をご紹介していきます。


その記念すべき第1回目として2007年に卒業し、現在は株式会社ニコンでデザイナーとして活躍されている
横井康秀さんに開発に携わった製品をご紹介していただきました。

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(1)Nikon COOLPIX P90ってどんなカメラですか?

コンパクトでも多機能・高性能を手軽に楽しみたいユーザーに向けたカメラです。
広角から超望遠までカバーする光学24倍ズームNIKKORレンズ/チルト式液晶/多様なモード設定など、
これまでにはなかった撮影体験を存分に楽しむことができます。

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(2)デザインで苦心した点を教えてください。

一眼レフカメラを買うほど意識は高くないけれど、ちょっと手軽に本格的なカメラを使ってみたい。
そんなユーザーに向けたデザインテーマとして『わかりやすい本格感』と、カメラらしさの範疇を
守りながらも際立つ表面処理等で『贅沢さ』を表現する事を狙いました。


主なアイデアとして以下を提案し製品にて実現しました。

・本体の「レザートン塗装」と、前面ロゴ部分及びグリップ上面の「ピアノブラック光沢」によるコントラスト
表面処理のコントラストが映えるよう考案したカタチと独特なパーツ分割構成、つやつやの黒塗装実現などに苦心しました。設計難易度/製造工程/コスト/安全性など、大量生産品ならでのハードルを多数乗り越え、実現に至りました。

・本格的な道具を思わせるモードダイアルの菱目ローレット
突起形状のディテールを詰め、またカチカチというクリック音と触感も重要な演出要素として、設計者と協力しながら最後まで微調整しました。

・グリップ形状
コンパクトサイズは守りつつ、本格的な一眼レフカメラと同じく握りやすいグリップを追求しました。ラピッドプロトタイプを数多く制作するなどして、粘り強く検証に検証を重ねた箇所です。

その他に、可動モニター/ボタン/レバー/ダイアルなどの操作性と見た目のバランスも、最後の最後まで詰め作業を行いました。
設計担当者がデザイナーの意見にも積極的で、難問に対して親身に取り組んでもらえたことも非常に大きかったと思います。


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初期のイメージスケッチ



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開発中に数段階にわけて確認モックアップを作成。これら以外にも3Dプリンターによる簡易モデルを随時作り、形状を確認した。



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塗装やメッキなど表面処理のバリエーションを多数試作した。



(3)後輩へメッセージを頂けますか?

社会に出てからのデザインも学生の頃と大きくは変わらず、アイデアを検証しカタチにする、の繰り返しです。もちろん関わる人が増える分、使い勝手/製造/販売面など、次から次へと降り掛かる難問に対してアイデアを提案しなければなりません。うまく行かない時は何度もアイデアを練り直します。
カメラという職種柄かもしれませんが、この練り作業は学生の頃よりはるかに粘り強く、長く、大量に繰り返されます。学生のうちからもっとねちっこく制作していたら…と思うこともしばしばです。
ですが多摩美で培った柔軟な発想を実現するためだからこその、生みの苦しみの作業だと思います。またその分、製品として発売され実際に使っている人を見たときは、それまでにない気持ちがこみ上げてきました。
多摩美ならではの自由さと貪欲な探究心で、濃い学生生活を送って下さい。


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