No 01 上島 弘祥さん(TIDS | THE INDUSTRIAL DESIGN STUDIO)

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プロフィール
1979年福井県生まれ。2003年多摩美術大学卒業後、パナソニックデザイン社、ドイツのyellow design gmbh に勤務し、家電製品をはじめとする様々な工業製品のデザインプロジェクトに携わり、これまでにレットドットデザイン賞やドイツ・デザイン賞を始めとする国内外の国際的なデザイン賞を受賞。2015年にTIDS|THE INDUSTRIAL DESIGN STUDIOを設立。

受賞歴 
 レッドドットデザイン賞(ドイツ)
iFデザイン賞(ドイツ)
ドイツデザイン賞 特別賞(ドイツ)
ドイツ連邦共和国 デザイン賞 ノミネート(ドイツ)
フォーカスオープン賞 (ドイツ)
ユニバーサルデザイン賞(ドイツ)
グッドデザイン賞(日本)
東京ビジネスデザインアワード テーマ賞(日本)
シカゴ・グッドデザイン賞(アメリカ)
World Design Impact Prize ノミネート 


インタビュー                                                       
聞き手:安次富 隆

学生時代の弘祥くんのことで一番印象に残っていることは、「世界の上島弘祥になる!」と宣言していたことです。数々の受賞歴を見ても、有言実行しており、すごいなぁ!偉いなぁ!と思っています。 

Q1:弘祥くんがデザインで大切にしていることは何ですか?

世界の上島に、、、そんなこと言ってたかも知れませんね(笑)。そんな大口を叩いていた頃とは真逆のように聞こえるかも知れませんが、大切にしているのは〝常にフラットな存在であろうとすること〟です。 デザイナーって個性が大事とかよく言われるんですが、僕自身は個性を出す事よりもクライアントやユーザーとそのプロダクトが使われる環境との関係性の中に最適解を出す事が一番だと考えています。 考えてみると、僕自身、物を選ぶ際はデザイナーの個性を買っているのではなくて、プロダクトそのものの素晴らしさやそのストーリーに惹かれて商品を買ったり使ったりしていますからね。 だから、僕が何かをデザインする際はクライアントの技術や歴史を大事にしながらプロジェクトに介在する課題や価値を的確に見つけ出し、それらを破綻無く一つの魅力に落とし込める存在であろうといつも心がけています。 !それはつまり、個性を持たないことが僕の個性と言えるかも知れません。だから事務所の名前も無記名性を持たせ、僕の名前は入れないことにしました。 それはおそらくパナソニックという大きなメーカーとドイツという国でデザインをしてきたことが影響しているのかも知れません。 日本メーカーの高い技術力を魅力的にプロダクトに落とし込むことや、積み重ねてきた歴史をじっくり進化させるドイツデザインのプロセス、そんなことをずっと考えてきたので自分の個性を出さない事が自然と身に付いて来たのだと思います。

”常にフラットな存在であろうとすること”は、かなり高い目標だと思います。それを達成するために「個性を出さない」ようにしているということですが、上島くんが言っているようにそれが上島くんの個性だと思います。おそらく上島くんは、自分が関わることによって、作り手も使い手もニュートラルにモノそのものの価値を享受できるようにしたいのだろうと理解しました。

Q2:今回の展示作品のデザインのポイントを教えてください。

目に見えない機能や技術を〝美しいカタチ〟で世の中に伝えようとしたことです。今回、出展させて頂くMISOKA・ISM は水で磨くことが出来る画期的な歯ブラシです。 毛先にコーティングされたナノサイズのミネラルイオンの働きによって、毛先を水につけるだけで歯を磨くことが出来ます。 それにコップ一杯の水で済むので、水の使用量を削減でき、また化学物質を含んだ水を排出することもない、とても環境に優しいプロダクトでもあるんです。 そんな水とミネラルの力で磨くという機能と、自然に寄り添ったプロダクトであることを誰にでもシンプルかつ魅力的に伝えること、そして使う人の生活空間をみずみずしく心地の良いものに するという、目に見えない価値を美しさに変えて世の中に届けるプロセスを生み出す答えとして〝流れる清らかな水〟のような姿を考えました。
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また、この複雑な形状から成り立つデザインは見た目の美しさだけではなく、持った時に指をそっと添える様な仕草を促して歯と歯茎に優しいブラッシングが自然に出来るようになっていたり、起き上がり小法師のように必ず毛先が上向きに浮いた状態になって清潔な状態を保つようになっていたりと、機能的な側面も持ち合わせているんです。
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このMISOKA・ISMを今年のミラノフォーリサローネで発表したところ、〝デザインと機能の美しい融合だ〟と多くの方が感動して下さり、また世界中のメディアからも沢山取材して頂いたりと、当初の想いの通り、デザインの力で日本の技術が世界に魅力的なものとしてどんどん拡がって行っていることを実感出来ているのがとても嬉しいです。
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MISOKA・ISMは、審美性と機能性がバランス良く融合されたデザインだと思います。機能の良さをさりげなく流水形状の中に落とし込んでいる点が秀逸ですね。サローネの展示は、まさに天から水が滴る印象があり、一発でMISOKA・ISMのデザイン・コンセプトが伝わってきます。 今回はサローネと同様のイメージを特別にアレンジして頂けるそうなので、とても楽しみにしています。

Q3:プロダクトデザイナーになって良かったと思うことは何ですか?

やはりこの仕事は、自分のアイデアを通して沢山の人の喜びが生まれる瞬間に立ち会えることですね。一つの物が世に生み出される課程には色んな人の色んな種類の喜びが生まれます。 例えば、メーカーさんやクライアントさんが持っている技術や想いが美しく魅力的な製品に仕上がったとき、それを作り上げた彼らの中に「これは自分たちにしか作れないものだ」という誇りが生まれます。 手に取ってもらったユーザーの人達はもちろんですが、クライアントや設計者の方、モノを売る人などモノを生み出す側の人達を幸せにすることもプロダクトデザイナーの大事な役割だと常に思っています。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。

人生は自分を信じ思い切って行動すればとても楽しいものになります。 僕自身は知らない世界を怖がらずに自分を信じて飛び込んでみる、ということを大事にしてきたお陰で、自分の世界観やスキルを拡げられてきたと思っています。 それは決して向こう見ずということではなく、動きたいときに動けるだけのスキルを身につけ、人生の波を逃さずに掴むという感覚ですね。 実はドイツで働こうと決めたのも旅行で訪れたベルリンの街を歩き「この国なら住めそう、住んでみたい」とその場での即決でした。 すぐにドイツ語教室に通い始めたり、ドイツでの仕事を探したりと必死に行動しましたね。そうやって〝必ずドイツに住む〟と自分を信じられる状態に追い込んで行ったんです。 渡独後は、言葉の壁、文化の壁がある中でとても高いデザインクオリティを求められましたが、言葉が通じにくい分、スケッチやアイデアの数で勝負しなければ行けない状況で必死になれたことで自分の力がすごく伸びていったのを実感しました。 僕自身、あの時自分の決断に必死に食らいついたからこそ今があると思っています。
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本日は弘祥くんのデザインに真摯に向かい合う姿勢を深く知ることができました。展示会でお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございました。  
   

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