No 04 佐藤 友昭さん(株式会社ホンダアクセス 商品企画部デザインGr.)西尾 恵さん(元 株式会社 本田技術研究所 四輪R&Dセンター)

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プロフィール・受賞歴

1983年熊本県宇城市三角町生まれ。
2007年プロダクトデザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業、同年(株)ホンダアクセス入社。
2009~2014年 Honda  STEPWGN 純正アクセサリー
2014年 N ONE NATURAL Concept(コンセプトカー)他

インタビュー
聞き手:安次富 隆

友昭くんの学生の頃の作品で最もインパクトがあったのは、トラックのデザインです。あれは何年生の時の作品でしたっけ?ちっとも上手くないのだけど、ものすごくインパクトがあって今でもそのカタチを覚えています。当時学科長だった岩倉信弥先生と「とってもいいデザインだね」と話したことも覚えています。ともかく真直ぐな性格で、何事にも一生懸命取り組む真摯な姿勢がデザイナーとして信頼できます。
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学生時代にデザインしたトラック’Transporter Concept’

学生時代のエピソード
この時の課題、実は最初の提出時、車をテーマにする者同士で1/5スケールに統一しようと話していましたので、 僕のトラックは2m程の巨大モデルとなり、塗装も半分だけ、PCで三面図書いたものの印刷できずプレゼン時にノートPCの画面提示(しかし図面は画面表示されていませんでした。)  プレゼンボードも作成できていなかったので、ホワイトボードに書きながらプレゼンという、恐ろしいほどの破綻ぶりでした。  しかし、巨大モデルのインパクトと取組姿勢(?)だけは汲み取っていただいたコメントをいただいたと思います。  その後、年明けに1/10スケールに改め、気持ちを入れなおして提示した今回の写真のトラックで OKをいただきました。  ですので、もしかしたら初回提出の時のインパクトと再提出の時のことが相まって印象に残していただいているのかもしれません。  在学中、最も留年の危機だったと思います。

Q1:友昭くんがデザインで最も大事にしていることは何ですか?

ものを使ってくれる“人”が、その人の人生で“自身が主役”と感じられること。デザインを通してそういう実感が持てるための手伝いができればと思っています。 モノではなく人が中心・主役で、人の生活や人生を引き立てることがデザインの大事なことだと考えています。

Q2:今回展示してくださるHonda S660 Modulo ( Honda 純正アクセサリー)のデザインのポイントや、デザインで苦労したことなどを教えてください。

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Honda S660 Modulo
今回、企画段階から車両本体のデザインスタジオにも席を設け、車両チームとより密に連携を取りながら、プロジェクトを進めたことが印象的でした。その結果、“走りの機能アイテム”、“質感・ディテールアップアイテム”、“ユーティリティアイテム”という3つの商品群を、より高いクオリティで実現するところまで持ってくることが出来ました。 !苦労したことは、全体的にその連続だったのですが、前後バンパー、リアアクティブスポイラーは走りの機能とスタイリングの両立、という点で最も苦労した部分です。 あまり気にする機会は無いかもしれませんが、バンパーに当たる空気の流れ方や車両の上下を流れる空気の流れ方で、車体の動きは全然違うものに感じられます。Moduloのパーツとして、その空気の流れを利用して より誰でも楽しめる車に仕上げていくという目標がありました。 そのために、デザインの初期段階で北海道鷹栖のテストコースに行き、空気の流れ方で車両の動きにどういう変化を感じられるのか、を学ぶところから始めました。
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実際の造形にあたっては、車格が似ている25年前のHonda Beat を用いてテストコースを走り 空力的に必要な造形要素の抽出を行い、スケッチを展開、4分の1モデルのクレイ作業、更に鷹栖のテストコースを走行して検証を行う。そして1分の1クレイにつなげていく。この作業をテストドライバー、設計者、モデラー、デザイナーが一体となって進めていきました。 同時に今回のアクセサリーのコンセプト“HEART STRINGS SPORT スポーツカーの先進性と普遍性でスポーツカー好きの琴線に触れる”というテーマを具現化するため、スタイリングスケッチもかなりの数を展開し、開発チームや室課の合意を得ていくという作業も苦労して進めたことを覚えています。
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この空力への取り組みとスタイリングスケッチの行き来を繰り返し、最終的に“CRAUCHING & STABILITY 勢いと安定感”というスタイリングテーマを掲げ、機能とスタイリングの両立を果たすことができました。 例えば、リアのディフューザー形状に良く見られる縦フィンが無く、今回滑らかな形状をしている点や、リアアクティブスポイラーの高さなど、全体を通して空力との整合性がとれたスタイリングが出来、大変好評をいただく結果を得ることが出来ました。

Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことはありますか?

多摩美のプロダクトで学んで本当に良かったと思いますし、今でも自分の中に大きな存在感を感じています。 多摩美では様々な先生方に恵まれ、本当に多彩なことを学べる時間だったと思いますし、何かを得ようと思えばどれだけでも得るものがあったと思うと、今ではもったいなかったほどに感じることもあります。 そして、一番の財産になったと思うのが、本当に一生懸命ものごとに取り組む仲間と一緒に4年間を過せたことでした。理想ややりたい事に向かってぼろぼろになりながらも諦めずに課題に向き合う雰囲気、イベント等の時に人に楽しんでもらう一心でやり込んでいく風土は常にポジティブなエネルギーで満たされていて、昨日の事の様に感じることが出来るほど印象的でした。 また卒業後も新たに先輩方や、後輩の人達と親交を深めることができたり、つながりを持ち続けられることも良かったと思う点です。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。

多摩美で過ごす時間は、将来デザインをしていくうえでの 原点を作り上げる時期だと思います。在学中に感じる、課題のなかでの悩みや、大変さ、チームプロジェクトのなかでのごたごた、イベントの際の一体感。そしてそれぞれにやりきった時に感じる達成感。 就職してしばらくは思う様にいかないことも多いかと思いますが、前向きに取り組み続けることができれば、多摩美プロダクトで得てきたことが必ず活きてくると信じています。 そのためにも、在学中に経験するすべての事を大事にして、多くの事を感じ、周りの人達とのつながりを深めていって、とにかく後から振り返ってみて宝物のような時間だったと思える様に過ごしてほしいです。

友昭くんのどんなことにも前向きで一生懸命に取り組む人柄が伝わるお話が聞けて嬉しく思いました。本当にありがとうございました。


出展者紹介
西尾 恵さん(元 株式会社 本田技術研究所 四輪R&Dセンター
※佐藤友昭くんと共にS660のインテリアデザインに関わる 
西尾
プロフィール  
1985年 和歌山県岩出市生まれ
2008年 プロダクトデザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業、            
同年(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター入社。
2011年 EV-STER 2013年 S660concept、N-WGN 2014年 Vision XS-1
2014年 FCV CONCEPT (上記いずれの機種も、メーターや情報パネル等のIF領域のデザインを担当) 
2014年(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター退社後は、DRIFT Stage D-Likeでデザインのお手伝いをしながら、フリーでメーターのデザインをしています。

西尾
西尾
EV-STER(電気で走る、次世代のHondaスモールスポーツカーのコンセプトモデル) 

インタビュー
聞き手:安次富 隆 
西尾さんは、今でも大学で話題にする伝説のカーデザイナーです(笑)。 「私はランボルギーニのデザイナーになる!」と言って入学。1年生の最初の課題は「携帯電話のデザイン」だったのに、ランボルギーニのカタチをした携帯をデザインしました。「これのどこがランボルギーニなんだい?」と思えるほどヘタクソだったのですが(笑)、そこで落ち込まないところが西尾さんの本領。そこからがむしゃらにカーデザイナーを目指して頑張った。2年次には、ホンダのモデラーにクレイモデルの作り方を学ぶワークショップで、ホンダの方々に見初められていましたね。その時「コイツは凄いナ!」と思いました。結果ホンダからラブコールを受けて入社。西尾さんのドラマチックな成長には本当に驚かされました。 ですから友昭くんから今年結婚退社したと聞いた時は、ちょっとだけショックでしたが、D-Likeというドリフト専門のラジコンメーカーのお手伝いをしていると聞いて「そうこなくっちゃー!」と思っているところです。
西尾
西尾
1年次の第1課題でデザインした「車の造形美を取り入れた携帯(ランボルギーニ携帯)」

Q1:西尾さんがデザインで最も大事にしていることは何ですか? 
ふとした時に「何か良いな、素敵だな」と思ってもらえること。 使ってくれる人とモノが良い関係になれる手伝いがしたいと思ってデザインしています。

Q2:Honda S660 Modulo ( Honda 純正アクセサリー)のデザインでは友昭くんとどのように共同作業したのでしょうか?
実は直接的にはほとんど関われませんでした。というのも、私がS660の開発には、初期から中期までの間を担当していたためです。 しかしこのS660開発当初では、佐藤さんと意見交換をしたことをしっかりと覚えています。 車の目指したいキャラクターや方向性、また、アクセサリーであれば嬉しい、グッとくると思うもの等…ワクワクしながら話したのを覚えています。 学生時代にも、佐藤さんとは車のことで盛り上がったりしていたので、なんだか学生の頃を思い出すようで、懐かしい気持ちと、佐藤さんとならきっと良い車が創れるとキラキラした気持ちで開発に取り組んでいたことを思い出します。

Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことはありますか? 
同じ目標に向かって進む仲間がいることは良い刺激になります。良い意味で、負けられない!!と思って当時頑張っていたように思います。 後、自分の未熟さを痛感出来たこと(笑)。 当時とにかく自分はへたっぴで、考えも浅かった。 今思えば、デザインをとことん追求出来、色んな価値観や経験を持った先生やクラスメイト、先輩達と意見を交換出来る、あんなに恵まれた環境は無いと思います。 今もう一度、学び直したいくらいです。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。 
とにかく、大学生活を思う存分楽しんでください!! 好きなことを見つけて、情熱をもって取り組めば、少しずつですが進歩して行くと思います。 そしてその情熱や自分の考えを発信していくこと。 発信した時には、誰からも受け止められなくても、ふとしたきっかけで「そういえばあいつこんなこと言ってたよなぁ~」とチャンスが巡ってきたりする時もあります。 発信することで、同じ目標に向かう人達と出会えたり、意見を交換することも出来ます。 タマプロでひたむきに努力すれば、デザインする上で必要な考え方やスキルは必ずつくと思います。 なので、どんどん色んなものを見て、感じて、時には失敗して、考えて、デザインして、思う存分楽しんで欲しいと思います!! 

そうそう。西尾さんは「あーしたい、こーしたい」と、うるさいくらい情報発信していた記憶があります(笑)。で、アドバイスされたことは全てやってみる「ひたむきさ」に、私を含め先生方はヤラれていたように思います(笑)。西尾のためなら何でも協力したくなるんです。Hondaの方々から「ぜひウチに来てね」とラブコールされたのも、そういう西尾さんの魅力に惹かれたのではないでしょうか。デザイナーとして、人として大切なことを教えて頂きありがとうございました。 

 

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