No 06 上山 桂さん、長妻 正人さん(株式会社スノーピーク)

スノーピーク2
上⼭桂  ウエヤマ  ケイ
2005年 多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業
2007年度グッドデザイン賞受賞  ダッチオーブン [コロダッチシリーズ]   
2009年度グッドデザイン賞受賞  携帯箸 [和武器]
展示製品 コロダッチシリーズ(コロダッチポット・コロダッチカプセル・コロダッチオーバル)
スノーピーク2
長妻 正人(ナガツマ マサト)
2010年 多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻卒業 
2013年度グッドデザイン賞受賞  シェルフコンテナ 25 [シェルフコンテナ 25]   
2014年度グッドデザイン賞受賞  テーブル [ジカロテーブル] 
展示製品 ジカロテーブル ・ヤエンストーブ レギ ・ヤエンストーブ ナギ ・シェルフコンテナ

インタビュー
聞き手:安次富 隆

学生時代の上山くんはシンプルなモノが好き、長妻くんはメカニカルなモノが好きというイメージがあります。二人の卒業制作の作品がそれを象徴しているように思います。上山くんは、竹の集成材の弾性を活かし、見た目も構造的にもシンプルな椅子をデザインしていました。長妻くんは、見た目も複雑でメカニカルな介護用のアシストスーツをデザインしていました。全く嗜好の異なる二人が、世界的なアウトドア用品メーカー、スノーピークのデザイナーとして活躍していることが面白いと思っています。

Q1:二人がデザインで大切にしていることは何ですか?

上山:
デザインをしようとする対象の製品カテゴリーの定義や本質的な機能のあり方を、再度捉えなおしてコンセプトを考えることを大切にしています。
長妻: ユーザーに与える体験価値を大切にし、それを実現する為の最適な解としてのデザインを追求するように心がけています。


Q2:上山くんがデザインした「コロダッチシリーズ」のデザインポイントを教えてください。
スノーピーク2
コロダッチシリーズ(コロダッチポット・コロダッチカプセル・コロダッチオーバル)

上山:
元来、ダッチオーブンは大きく重たい鋳鉄製の鍋の為、男性の調理器具のイメージが強いものでしたが、より多くの方にダッチオーブンの魅力を感じてもらう為、「コロダッチシリーズ」では「小ささ」と「軽さ」を追求し、キャラクター性のある外観により、性別を問わずに受け入れられる製品を目指しました。

Q3:長妻くんがデザインした出展作品のデザインポイントを教えてください。
スノーピーク2
ジガロテーブル

特に、都市型の生活を送る人々にとって、自然に囲まれるという行為は非日常であり、心を癒してくれる効果があります。そのような環境で食や暖をとりながら、語り合える満たされた環境は、心に残る体験価値を生み出します。この商品では、自然の中で火を中心に皆が集まり、食事を愉しみ、語らうというコミュニケーションの形を提案しました。ガスコンロの炎と焚火の炎では、テーブルの快適なポジションが異なります。異なる大きさ・仕様用途の炎に対し、最適なポジションを与える為に、4分割したユニットを組み替え、開口部の大きさを変えるという工夫をしました。


スノーピーク2
ヤエンストーブ レギ

仲間と協力しながら山に登り、調理器具をシェアして食事をする…といった、一連の協力の中で絆を深める為のツールとなる事を目指しました。その為に必要な「数人の料理がまかなえる」「不整地での安定性」「軽量・コンパクト」という要素を高次元で実現するための様々な工夫がなされています。ガスカートリッジを脚の一つとする事で、広い設置面積を有する3脚構造とし、不整地で数人用の鍋を載せても、抜群の安定性を発揮します。また、本来必要であった脚を一つ省略することにより、軽量化にも貢献しています。さらに、ねじれ方向に回転軸を追加する事で、凹凸に合わせてガスカートリッジの底面が追従し、通常では設置不可能だった3次元的な地面でも、安定した設置が可能となりました。


スノーピーク2
ヤエンストーブ ナギ

登山用ガスコンロの市場では、軽量コンパクトや燃焼効率を盲目的に追及するあまり、「調理性能」がないがしろにされがちでした。「調理性能」の価値を今一度見直し、野外という風が吹く環境でも、ストレスなく「煮る、焼く、炒める」等の様々な調理を可能とし、山で仲間とおいしい食事を囲むという体験価値を多くの人に提供する事を目指しました。 風防のパネルは一方向に互いが突っ張る構造をしており、本体を持ち上げても、円弧が崩れることなく一つの個体として扱える剛性感を備えています。収納時は風防パネルとバーナー部のそれぞれを畳む事ができ、コンパクトな収納形態を実現しました。


スノーピーク2
シェルフコンテナ

「収納棚を持ち運ぶ」という発想により、今まで道具の置き場所により捉えられていた趣味の活動領域を広げる事をコンセプトとしています。物を持ち運ぶときは「コンテナ」として、持ち運んだ先では変形して積み重ねる事で「シェルフ」として機能します。


Q4:お二人が多摩美のプロダクトで学んで良かったことは何ですか?

上山:
在学中は課題ごとにモデルの製作をしていましたが、金属加工、木工加工、樹脂加工など様々な素材の加工を自分の手で行ったことにより、社会に出てからのモノづくりの基礎経験値として役に立っています。
長妻: アイディア展開の仕方と、スピードの基礎は在学中に得たと自覚しています。また、バリエーションに富んだ様々な課題をこなしていくうちに、自分が得意な分野(自分はメカを考えるのが好きでした)を見極め、自分が最も実力を発揮できるスタイルを見つける事が出来ました。

Q5:最後にお二人から在校生へのメッセージをお願いします。

上山:
自分自身、大学を卒業し社会に出た直後は、多様な業務をこなさないといけない中で、大学で勉強したことの半分も役には立たないと思っていました。しかし、社会人としての年数が経つにつれて、大学時代に培ってきて役に立っていること、逆に培っておくべきだったことがじわじわと分かってきました。大学生はこれを勉強しなさいという枠組みは特にないので、自分を型にはめず、貪欲にいろいろなものを吸収していってくれたらと思います。
長妻: 多摩美のプロダクトデザイン学科が如何に恵まれた環境であったのかと思い返す事があります。第一線で活躍されている先生に話を伺えるのは勿論の事、モチベーションの高い仲間たちと一緒過ごせる事も貴重な体験です。今にしてみれば、もっとあの先生に話を聞いておけばよかった…などと後悔することもあります。一杯失敗して、いろんな人に話を聞いて、悔いの残らない大学生活を送ってください。

上山くん、長妻くん、お二人のの真摯なデザイン姿勢が伝わるお話が伺えたと思います。 本当にありがとうございました。 

facebook share twitter share ページトップへ