No 10 山田 悦代さん(PROPELLERDESIGN)

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プロフィール・受賞歴
1975年東京生まれ。
2000年多摩美術大学プロダクトデザイン科卒業。
IDEO JAPAN を経て、PROPELLERDESIGNへ参画。通信機器から日用品、パッケージ、バックなどの量産品のデザインを手がける。
2014年から販売の実験的ショップALLを始動。同時に生産者とPROPELLERDESIGNがつくるオリジナルブランドHITOHIを店頭販売開始。
グッドデザイン賞多数。

インタビュー
聞き手:安次富 隆 

学生の頃からの悦代さんのイメージは「スマイル&パワー」です。いつもニコニコしていてゆったりしているイメージなのですが、恐ろしくパワフルにデザインする姿が印象に残っています。特に卒業制作の『子供用電動車椅子』は、とても難しいテーマでしたが、リアリティーのある完成度の高いデザインでした。ある意味この研究は、悦代さんと同じように子供たちに「笑顔と力を与える提案」だったのかもしれませんね。それは今でも続いているように感じています。

Q1:今回は色々な作品を展示して頂けるようですが、悦代さんがデザインで大切にしていることを教えてください。

多摩美術大学の80周年ということで、80にこだわった展示を考えてみました。バックやストールといった布もの、生活雑貨、通信機器などなど、ごちゃっと並べますので、幅を見ていただけたらなぁとおもってます。 デザインで大切にしていることですが・・・次につなげるということを目指してやっています。「次」というのは、プロジェクトによっていろいろなことを指すのですが。企業が継続して開発できる「次」だったり、ユーザーが長年にわたり使い続ける「次」だったり、さまざまな「次」を大切にしています。

Q2:今回の展示作品のデザインのポイントや苦労したことなどを教えてください。

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±0 ティッシュケース X010
ホテルでも一般家庭でも使えるティッシュケースというのがオーダー内容でした。その回答として、部屋でも使え、設置面積の少ない洗面所でも設置しやすいよう、立てることが可能なフォルムを提案しました。ホテルでは、ビニールパックの業務用ティッシュを詰め替えるんですが、一般の人たちは、ボックスティッシュが主流なので、どちらでも入るサイズ感にしています。もう一つ大きなミッションがありました。それは、金型費を極力抑えたいということなんですけど、立てることをクリアするには、金型が複雑になり金額がUPしてしまう、2部品で構成されているので、それぞれに複雑な金型を使用するのはNGでした。そこで、エンジニアから1部品を左右反転させて構成させたらどうかと提案をもらい、製品化が可能になったんです。一人の脳みそで考えれば×1ですが、いろいろな人の脳みそを借りると×2以上になるんだと改めて考えさせられたプロダクトの一つです。

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PLYS キッチンディスペンサー Photograph Kazushi Yoshinaga

世の中で売られている食器用洗剤のディスペンサーは、PUSH型がほとんどです。洗い物をしていると、洗剤をスポンジへかけたいタイミングというのは1回ではなく、何回か出てきます。油ものなどには、直接洗剤をふりかけてつけておくということもありますよね。そのような洗い物の所作を考えた時に、片手持ちできるディスペンサーというコンセプトが生まれました。

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ブラシ職人シリーズ まるまるブラシ+ペンシルブラシ

和歌山県の小さなブラシ屋さんが一つ一つ手作りで植毛するブラシシリーズです。毎年1~2アイテムづつ追加され、現在では7アイテムになりました。継続的に商品開発をおこなっていますので、今後もアイテムが追加されていく予定です。 掃除って、やるぞと決めてすると大変なのですが、日々、ちょこっとづつ気になった時に出来ると、案外大変じゃないですよね。そんなちょこっと掃除をコンセプトとして、外に出しておけるブラシを開発しています。家の中のどこかに自然に出しておけるように、掛けたり・置けたりできることを形に表現し、一つの機能としました。掃いたり、こすったりとブラシの使い方ってとてもシンプルなので、毛の色や樹脂の色を特性によって変え、視覚的に機能を伝える試みもしています。

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IDEA MILESTO×ANA STLAKT Photograph Tatsuro Masaki

今までのANAオリジナルのトラベルバックを購入している人たちは、50オーバーの方々がほとんどで、これから、30代40代のビジネスマン・ビジネスウーマンも獲得し、ターゲットを広げていこうという狙いから、IDEAとANAのコラボレーションが始まりました。このプロジェクトは現在進行中で、アイテムの拡張をおこなっています。旅先でとても役立つ機能を搭載したアイテムが続々と登場しますので、楽しみにしててください!
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KDDI ホームゲートウェイ Aterm BL190HW Photograph Takako Yamada

このホームゲートウェイは、KDDIでネット契約をすると自動的に送られてくるレンタル機器として開発されました。今でははほとんどが光回線になってしまったので、使っている方は少ないとおもいますが、ADSLの時代のものです。回線の開通時から家のどこかに置かれ、ONされ続けるものということで、樹脂の色とLEDの光り方にチャレンジをしています。その当時、白色のレンタル機器というのは珍しかったのですが、インテリアに溶け込む色ということで、採用していただきました。LEDは、24時間365日光り続けても、あまりノイズにならないよう、透明樹脂を使用し照度をおさえています。 この製品は、6枚の写真の中では一番古く、フリーランスになって2~3年ぐらいのプロジェクトなので、放熱孔の穴一つ決めるのにとてつもない時間をかけてたとおもいます。その時の自分に根気よくつきあってくれた技術者やクライアントの方々には、本当に感謝しています。
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NEC WiMAX wm3500rb

クライアントからオーダーいただいた当時、Wimaxモバイルルーターのシェアは2位以下で、とにかくシェアNo.1を目指したいというのがオーダー内容でした。 写真は黒一色なのですが、カラーバリエーションとして3色持つことを提案し、その中に女性をターゲットとした赤色を入れました。筐体の仕様も塗装やメタリック印刷を使い、コスメティックな仕上がりにしたんです。結果として、競合の中では目立つことができたので、この機種ではシェアNo.1は実現できましたが、かなりコストオーバーになってしまい、次機種からコストダウンが課せられてしまいました。技術の進歩や変化で、寿命の短い商品とはじめから分かっているアイテムならではの難しさを知ったプロダクトです。

Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことは何ですか?

外側だけではなく内側(フローや取り組み方など)を重要視する教育だったとおもいます。最近の流行り言葉ではありますが、モノではなく「コト」が重要というベースを体に叩き込んでくれたのは、プロダクトでの4年間だったとおもいます。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。

「こんな事したい!」「あんな風になりたい!」なんでもいいのですが、強い思いみたいなものがある人は、その思いを大事にして社会に出てきてほしいなぁとおもいます。その思いが自分を高めていく際の支えになってくれると思うので。 

悦代さんのデザインの話がたくさん伺えて本当に良かったです。望まれたデザインのミッションに対して、丁寧に最適解を求めていっている姿勢が特に印象的でした。「こういう風にしたい!」という悦代さんの想いの強さが優れたデザインの創出に繋がっているのだと思います。本当にありがとうございました。

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