No 12 瀧下 琢也さん(有限会社オッティモ)

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プロフィール
1979年静岡県生まれ。
2003年多摩美術大学プロダクトデザイン専攻を卒業。 同年より同専攻研究室に副手として4年間勤務。
2007年有限会社オッティモに入社。現在に至る。

受賞歴
2008年グッドデザイン賞
2014年グッドデザイン賞金賞、グッドデザイン賞

インタビュー
聞き手:安次富 隆 


私が勝手に師匠と思っている山本秀夫さんのデザイン事務所、オッティモのデザイナーとなったたっきーは、弟弟子のように思っています。笑。 そのたっきーが、昨年グッドデザイン賞を受賞した「壁掛式吸引器(株式会社セントラルユニ)」をデザインしたと聞いた時、感慨深いものがありました。というのも、あれは3年次の時だったと思いますが、たっきーがデザインした救急箱を思い出したからです。お父さまは消防士だったこともあり、人を救うプロダクトをデザインしたいと言っていたと思います。それが製品として実現したことが何よりも嬉しかったのです。
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救急箱(3年次の課題作品)
救急箱の課題の時は2ヶ月前に911事件があったのも大きな影響を受けました。学生時代から「人の役に立ちたい」という漠然とした思いはありましたが、現在こうして医療機器デザインの仕事をしているとは夢にも思いませんでした。

Q1:たっきーがデザインする上で大切にしていることは何ですか?

使う人の立場になって考える
ということを大切にしています。自分で実際に触って使ってみることはもちろんですが、可能な限り使われている現場を見学させて頂いてお話を聞いています。とにかく徹底的に調べて、分析する。そうすると対象が抱えている課題が明確になってきて客観的な視点に立つことができます。独りよがりにならないための大切な作業だと思います。形状検討の段階では必ず原寸モデルで検討しています。モデルを作りながら使う人を思い浮かべると、「ここは広くしておかないと作業しにくそうだな」とか「こんなに大きいと女性の小さな手では扱えなさそうだな」と言った問題点に気付く事ができます。そしてモデルからのフィードバックを図面に落とし込む作業を繰り返して精度を上げて行きます。 !図面も最初は手描きである程度まで描いています。CADはいくらでも拡大できてしまって原寸感覚が狂うので、デジタルツールに操られてしまわないように気をつけています。 自分の身体感覚を使って検討する事はとても大事だと思います。結果的に膨大な作業量になりますが、それが自信の裏付けになってくれると信じています。

Q2:今回の展示作品のことを解説してください。

今回の展示には操作に専門的な技術が必要な壁掛式吸引器と、誰でも一度は遊んだ事があるであろうオセロを選びました。日々人命に関わる過酷な環境で使用される医療機器と日用品であり娯楽を老若男女に提供する玩具。この2点は一見対極にあるように見えますが、使いやすさや収納、片付けなどデザインする上で心がけたことは全く同じことであることを、在校生に感じてもらえたらうれしいです。
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壁掛式吸引器(株式会社セントラルユニ)

壁掛式吸引器は医療現場において自発的に痰を吐くことができない患者の口や気道から、痰等の分泌液を吸い取って除去するための医療機器です。 術者にとって扱いやすく環境を清潔に保ちやすいようサポートできる製品であり、また患者にとって安心して身を託すことができるよう、使用するカラーリングとグラフィックを整理し医療機器として信頼できる佇まいを作り出す事を目指しました。

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壁掛式吸引器(株式会社セントラルユニ)


ベストオセロは日本発のボードゲーム、オセロの誕生35周年を記念したモデルです。 入門編としてちょうど良いサイズを目指して開発しました。 打ち心地の良い石(コマの呼び名)と盤面のサイズバランス、石の収納部を盤面と一体化したコンパクトな本体が特徴です。石の収納部は蓋を開けた時は石を取り出しやすく、また閉じた時は本体のフォルムにすっきり馴染むようにデザインしています。
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ベストオセロ TM&©Othello,Co. and Megahouse(株式会社メガハウス)

ベストオセロは入社して初めて担当した製品なので個人的な思い入れも強い製品です。以前、友達のお子さんが3歳くらいのときにプレゼントした事がありました。対象年齢が5歳以上なので、プレゼントした時は石を積み上げたり弾き飛ばしたりとゲームにはならなかったのですが、先日7歳になったその子に久しぶりに会ったら「オセロやろう!」と誘ってくれました。その成長に触れた喜びと、その成長の過程に手がけた製品があった事がうれしかったですね。

Q3:多摩美のプロダクトで学び、副手として4年間働いて良かったと思うことは何ですか?
学生時代は課題で本当に忙しくて、あの忙しさを経験したら割となんでも平気になりました。あの過酷な状況で身に付いたタフさは今も役に立っています。 また、私の学年は割と自由奔放にやらせて頂いていたので、科内はもちろんですが科外の方々、工作センターの皆さん、守衛さん、用務員さんには本当にお世話になりました。特に工作センターの皆さんには道具の大切さを教えて頂いたり、制作方法の相談に乗って頂きました。あの頃教えて頂いたモデル作りの基礎が今に繋がっており感謝しています。副手時代は科の運営のためのマネージメントが主な業務でした。私が在籍していた頃は60人体制への移行期だったこともあり、通常業務に加えて新しいプロダクトデザイン学科を立ち上げるための数多くの交渉を行なわせて頂きましたが、その大きな変革期に微力ながらも携われた事はいい経験になりました。 一方で日々ものづくりができないという葛藤があったので自主的に作品を制作して発表する事に決め、定期的に作品を作りました。その過程で「やっぱりデザインがやりたいんだな」と確認できたので4年は決して無駄ではなかったと思っています。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。
デザインが活躍できる領域は皆さんが思っているよりも広いです。安次富先生が授業で「A4の紙だってプロダクトデザインだ」とおっしゃっていたのを今でも覚えていますが、学生時代の私は目から鱗が落ちる思いでした。目に見えるもの全てにデザインが役に立てる何かがまだまだあると思います。どこにデザインのニーズがあるか、目を凝らして観察しながら日常を過ごしてみて下さい。とんでもない発見に出会えるかもしれません。 そして、皆さんはこれから人生の岐路に立つ訳ですが、一旦決意したら必死になって突き詰めてみて欲しいと思います。私は事務所に入所して9年になりますが、とにかくこの9年必死にやってきました。初めて挑戦する分野も多く日々もがいていますが、いろいろな領域のお仕事をさせて頂けるのも事務所で仕事をする魅力の一つで、毎日新しい発見があっておもしろいです。 継続は力なりではないですが、しばらくやってみないと本質は見えて来ないと思います。

たっきーが一番大事にしているのは人なのだということが良くわかりました。中でも子供やお年寄り、病人など、社会的な弱者への優しい眼差しを感じます。その優しさは、たっきーの学生時代、副手時代にも感じていました。見た目も頼りがいのあるたっきーが(笑)、同級生や後輩たちに慕われ、その輪が社会に広がっていっているのですね。 今日はありがとうございました。 

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