No 13 鈴木 啓太さん(PRODUCT DESIGN CENTER)

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プロフィール
PRODUCT DESIGN CENTER、THE/ディレクター&プロダクトデザイナー
1982年愛知県生まれ。 幼少の頃より骨董蒐集家の祖父の影響を受け、ものづくりを始める。

2006年多摩美術大学を卒業後、(株)NECデザイン、イワサキデザインスタジオを経て、
2012年に、デザインオフィス PRODUCT DESIGN CENTER、プロダクトブランド THEを設立。

プロダクトデザインを中心に、 プランニングからエンジニアリングまでを統合的に行い、家電製品、モヴィリティ、家具、日用品、 アートに至るまで、国内外で様々なプロジェクトを手掛けている。 2015年にはフランスで開催された『 第9回サンテティエンヌ国際デザインビエンナーレ2015(Biennale Internationale Design Saint-Étienne)』に参加している。

インタビュー
聞き手:安次富 隆


学生時代の啓太くんとの思い出は多々ありますが、一番の思い出は何と言っても卒業制作ですね。簡単に言えば、「葉」の葉脈にヒントを得て、一枚の新素材のシートを折ることによって作られた傘の提案だったわけですが、あまりにも単純すぎてこれでは卒業させられない!という話まで浮上したために(笑)、急ぎ国立のファミレスで作戦を練って、この折り紙構造体のプロダクツへの応用可能性を示すことによって、一転、素晴らしい提案になりました。まぁ今思うと、「傘をデザインしておけば、可能性の広さはわかるはずでしょ?」という学生ならではの思い込みがあったのかナ?と思いますけど、その後のデザインに変革をもたらす可能性を秘めたアイデアを示す場合は、どれくらい深く考えているか?を具体的に示す示さないでは大きな違いがあると思っています。現在はそれを実践しようとしているのでは? 啓太くんのデザインを見ていると、物事の根本からデザインを見直し、示したいという強い意思を感じるのですが。
THE
傘の研究を通じて生まれたシェルター(卒業制作・2006年)

Q1:啓太くんがデザインで大切にしていることは何ですか?

デザインで大切にしていることって、考えてみたのですが、実はあまり無いなあと思いました。 でも、いつも、良いものを創りたいと思って仕事をしています。 だから、できるだけたくさんチームのみんなに会って、話をして、一緒に物を見て、ここはこうしたいよね、とか、これってもっとこうあるべきだよね!とか、そういう会話をたくさんするようにしています。企画チームの一員になりたいし、エンジニアチームの一員にもなりたい。そういつも思っています。

Q2:今回の展示で見せたいと思っていることを教えてください。

プロダクトの卒業生でも、こんなにも良く分からない人がいるってことを在校生の方に・・・冗談です。でも半分本当かもしれません。多摩美に通ってる人は、みんな真面目で真摯だから、こうなりたいとか、こうしなくちゃみたいな葛藤に、いつも悩まされているはずです。自分もそうでした。でも僕なんて、卒業して10年も経つのに、未だに自分が何ができるのか、よくわからない。今回だって自分の展示をまとめてみて、学生のポートフォリオみたいだなと思ってました。一貫性がない 笑。何でもやって、何でも楽しんでみたらいいんだよ。そんなことを学生の方に感じていただけたらとても嬉しいです。先輩風吹かせてすみません。 少し真面目にも書くと、展示は、全て、進行中のプロジェクトにしました。出来上がったものからは感じ取れない、生っぽくて泥くさい、この仕事の楽しさや醍醐味を感じ取ってもらえることを期待して。


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出展作品について


バスタブのプロセス
中田英寿さんが主催するREVALUE NIPPON PROJECT CHARITY GALA 2015 with GUCCIに出展予定の作品。
2015年度の招待作家として、今年のテーマである「漆」を使用した、3メートル近いバスタブを製作しています。
とにかく大きい。
https://www.takeactionfoundation.net
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01.
漆を塗る前の、原寸大のバスタブ原型。長野県の山奥にある工房に通い、形を修正しています。
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アウトラインや、面の成り立ちを、段ボールとラインテープで検証しているところ。検討はいつも原寸大。とにかく大きい。
03.
表面のクローズアップ。下地にあたる布着せの凹凸を活かし、足が滑られないような配慮もしています。

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通勤車両のプロセス

通勤車両の設計デザインを、もう2年近くやっています。 既存の躯体を活かしながら、古くなった車両を再生させるリニューアルプロジェクト。 吊革や、シートの細かい形状や素材の開発まで、徹底してやっています。大変。大きい。 同時に、新しい車両の設計にも取りかかっています。 なによりも安全が優先される公共物。ひたすらに安全と快適を志向していく機能デザインが、僕は大好きです。
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01.
あたらしい設計の吊革に挑戦中。どの角度からも持つことができ、手が滑らない、楕円曲線の吊手。たくさんモデルつくりました。
02.
今までの造作を全て取り除いたスケルトン状態の車両。普段あまり見られない電車の姿です。
03.
車両工場にて。車両を上から見ている写真です。電車って、とっても大きい。

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THE
THEは、水野学さん(good design comapany)、中川淳さん(中川政七商店)と一緒に立ち上げたプロダクトブランド。
『THE JEANS』とも呼べる「Levi’s 501」のような製品を生み出すことに憧れ、 これこそは「THE」と呼べるものを、自らの手で作り、流通をさせていくプロジェクトです。
THE
KITTE(丸の内)にあるTHEブランドの直営店『THE SHOP』です。
自分たちで作り上げた製品と、世界中から集められた[THE]が揃い、THEのコンセプトを体現するショールームの機能も果たしています。
THE
今年の春、東京ミッドタウンにオープンした『THE CORNER@isetan』は2店舗目の「THE SHOP」です。
内装は杉本博さん。


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ブータンのプロジェクト
ブータン王妃の財団「タラヤナ財団」とのプロジェクトは、もう3年近く続いています。 このプロジェクトは、ブータンの伝統工芸の発展と継続のためのプロジェクトです。 ブータンには、7つの伝統工芸があると言われていますが、実は誰も、その詳細を把握していないという問題がありました。 ものごとを整理整頓し、その上で、新しいものを生み出していくのは、僕がいつもやっていることです。何かお手伝いできるかもと思いました。 まず、僕は、2000kmに渡りブータン国内を移動する、リサーチプロジェクトを始めました。 ブータンは、ヒマラヤの麓にあり、標高が高く(3500~4500m)かなり辛いのです。でも、とても美しい場所です。 リサーチプログラムの中で出会えた何人もの若き工芸家たちと、今、ゆっくりとモノづくりを始めています。 プロジェクトの紹介のため、2013年には日本橋三越と共同で展示を企画し、工芸品の展示や、ブータンにまつわる様々な方のトークショーを行いました。 つくることから、拡げることまでをデザインすることの大切さを知った、とても大変だけど、とても楽しいプロジェクトです。 ちなみに、ブータンには、定規がありません。だからいつもビニールテープを切って、それを渡して寸法指示しています。
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01.
ブータンの竹工芸の職人とつくった抹茶椀。竹の節を活かしながら、漆で仕上げた椀です。 これまでにブータンにはなかった強度を、竹工芸に持たせています。
02.
2013年に制作されたBHUTAN in BHUTANのロゴです。チベッチ仏教の「円」の考え方に基づいており、地水火風を基本とした4つの円で構成しています。(デザイン:高岡一弥)
03.
ブータンで最も心打たれた瞬間です。素朴で、ありのままの道具の美しさを見ました。

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Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことは何ですか?

右も左も分からないまま、いろいろな課題をやって、当時はその価値が分からないこともあったけど、今は、それらが全て血となり肉となっていることを実感しています。よくプロをなめるなと怒られた気もします。学生扱いせず、真剣に向き合っていただいた先生がいたことは、とても嬉しいことでした。それと、いろいろな人に出会えて、いろいろなデザインの思想や流派に触れることができ、その度に「自分にとってデザインとは何か」を突きつけられ続けたことがとても良かった。一生の恩師でもある先生に出会えたことも、とても良かったです。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします

僕は絶対にこういう場に呼ばれないタイプの卒業生です。笑 なので、へーこんなんもいるんだね程度の珍種として見て頂ければと思います。何かあれば、メールをください。

笑。なぜ「僕は絶対にこういう場に呼ばれないタイプの卒業生」と思っているのか?には興味がありますが、それはまた今度聞かせてください。 啓太くんがプロダクトデザインに軸足を置きながらも、プロダクトデザインの概念を固定化していないことに共感しました。これからの活躍も楽しみにしています。ありがとうございました!

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