No 15 伊藤 彰吾さん(スズキ株式会社)

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プロフィール 
2011年卒
2011年:スズキ株式会社入社
2014年:トレールバイク DR200S担当
2015年:オンロードバイク Bandit1250S ABS担当

インタビュー
聞き手:安次富 隆

彰吾くんの良さは負けん気の強さだと思っています。決して器用ではないのですが、人一倍モビリティデザインに対する熱い想いがあって、妥協することが大嫌い。それは卒業制作のKART BOARDのデザインに取り組んでいる時に強く感じました。スケートボードのように動力はないけどバイクのようにスリルあるコーナリングを楽しみたいという想いを、坂を下るモビリティという発想で実現させました。まぁ、危険な乗り物ですよね(笑)?しかし、誰が止めてもやってやる!という意思を、いつものように「人を睨みつけるような目」に感じていました(笑)。そういう負けん気の強さと意思の強さを、今回出展してくれるトレイールバイクDR200Sのデザインにも感じます。迷いがないスタイリングというか。

入学以前から様々な先輩方の作品を見ていてモビリティを作ることに憧れていたので、僕も卒制ではオリジナルのモビリティが作りたいと思っていました。そして卒業制作で僕がKARTBOARDを作ると言い出した時、先生方からかなり反対をされた覚えがありますが心の中ではモビリティを作ることに決めていました。
スズキ
KARTBOARD(2011年、卒業制作)

KARTBOARD
は安次富先生のおっしゃる通り危険な乗り物です、少し過激な発想かもしれませんが危険なものにこそ楽しさがあると考え、スケボーのホイールベースをそのままにトレッドを広げて過度にクイックにしたコーナリング性能を下り坂で使ったらとてもスリルのあるスラローム走行ができるのではと思い実際に作ってしまいました。


スズキ
機構から何度も概念モックを作ったり、試作車に乗ってスタイリングを調整したり機構をいかに溶け込ませるかなどスタイリングには凝ったことを覚えています。作業の速さに対してやりたいことが多すぎたてまったく作品が出来ず、講評時にはまだモデルが完成していなかったことが最大の危機でした。

スズキ

Q1:彰吾くんがデザインで大切にしていることは何ですか?

バイクという乗り物はいわゆるクルマとは少し毛色が違う様で、趣味性が強く実用車といっても疾走感みたいな意味での見た目をかなり重視している傾向にあると思います。なので買う人が乗った時を想像してワクワクするようなデザインを心がけていますし、僕自身もバイクがすごく好きなので自分自身が滾るようなものでないとだめだと思っています。 バイクは目に見えるところが常に体に触れているので人体や動きに沿った美しい形状をデザインすることと、動体なので常に移り変わるハイライトがきれいに見える面構成などを心がけています。 それとバイクは小さな車体にエンジンをはじめとする様々な物が詰め込まれているのでかなり制約が大きいのですが、僕は条件が何もない“空想のバイク“を考えるよりその条件がある程度厳しい方が工夫のし甲斐なんかがあってやりがいを感じてしまいます。

Q2:今回の展示作品デザインについて解説してください。
スズキ
トレールバイク DR200S

今回の展示車両のDR200Sは「軽快で力強く、オフロードやアウトドアをイメージさせるスタイリング」と「長距離ツーリングやトレッキングを可能とするスタイリング」をテーマにスタイリングデザインを行いました。 少ない給油で長距離を走り続けるという使用シーンと車体構成そのものは旧モデルから引き継いでいるので、外観のイメージチェンジとライディングポジションの向上を狙うことをメインに開発しています。 実際に試作車に乗ってシート形状を見直したり旧モデルより改善されているかの確認もしたりもしました。
オフロードバイクは車体が細いことが絶対条件ですが、タンクの容量を確保しつつシュラウドでタンクを覆うと幅が広くなってしまうのでシート形状を変更しタンクがシート下に若干入り込ませると同時にシュラウドもタンクの周りのみをカバーする形状にすることで容量の確保とライディングのしやすさを効果的に実現しています。また、シュラウドが小さいので視覚的にも軽快感が生まれました。そのため以前よりも圧倒的にスリムなのでいかなる環境でもストレスなくライディングに集中できるようになりました。 モトクロスの競技車両ではなく、シティーユースの車両なので前後のフェンダーは立体感と強い前傾感を持たせスポーティーで軽快なイメージにしています。 旧モデルと同様のフレームに、イメージを一新した外装がそのままつくようにスタイリングを成り立たせることが一番苦労しました。
スズキ

Q3:多摩美のプロダクトで学んで良かったと思うことは何ですか?

デザインについてスタイリングがどうこうだけではなく、物事の考え方やまとめ方など会社ではあまり教えてくれないデザインにまつわる周辺のことを学ぶことが出来ました。 在籍している先生方が多く様々なジャンルに関係しているので様々な学生のやりたいことに対応できることは重要だと思います。それとプロダクトの先生方は気さくな方が多く話しやすい環境もあるのでどんな小さな相談にも乗ってくれるところが良いと思います。実際に僕も課題における小さな悩み、就職関係から趣味の話まで無駄かもしれない事まで話していました(スミマセン) それと、僕の場合はバイクと車という趣味を持っていてプロダクトにはそのような趣味の合う人も多くいたのでその中でもお互いを高めあえたかなと思います。 あと何よりイベントが多く、どれもとても手がかかっていたので準備するのは大変でしたがとても楽しかったです。

Q4:最後に在校生へのメッセージをお願いします。

僕は学生時代、バイクや車に乗ったり弄ったりばかりで課題が疎かになっていました、今思えばもっとしっかり課題をやるべきだったなと後悔しています、ですがそのバイク車漬けの日々があったから今の職業に繋がったのかなとも思っています。興味のないことと違って好きな事はいくらでもできるから好きな事がある人はただひたすらそのことに打ち込んだ方がいいと思います。(課題はそこそこにと言いたいところですが課題もしっかり・・・) 近い道を志して入学しているのもあって大学時代の友人は一生ものだと思うので友人と多くの経験をしてください、そうすれば後に酒の肴も増えると思います。なにより大学時代の思い出が課題しか無いというのは何だかさみしいような気もしますし(笑) あと、先生方とは沢山コミュニケーションを取った方がいいと思います。先生方と話すのは緊張するかもしれませんが、雑談でも何でもいいのでなるべく多く話した方がいいと思います。そこから何か思いつくこともありますし、課題の相談もしやすくなると思います。

そうですね。彰吾くんとは沢山しゃべったなぁと思います。ボクはバイクのことは詳しくないから、熱く語る彰吾くんの話を「意味分かんない・・」と思うこともしばしばでしたが(ごめんね。笑)、それでも熱い想いだけは伝わって「彰吾はすごいかも」と思い、「やってみれば!」と応援していたと記憶しています。(何度も叱った記憶も。笑) そういう半ばデザイナーの直感のようなものが、的を得ていたことを実感できて嬉しくなるお話でした。ありがとうございました。

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