林 杏樹《eco book ~舞姫~》

 表紙には、極太明朝体で「舞姫」の文字が置かれ、プラスチックの頁=袋を捲ると、版面が姿を現す。薄い袋の表層を、森鷗外「舞姫」は二段組で組まれつつ、覆う。包むものの根拠は、奥付の装幀者森鷗外の名をもって据えられた。この捻れた関係に、著者による行を、どこに見ればいいか。頁=袋は、天から千切られることで、一般に本が見せない袋状の空間を開いた。
 『eco book~舞姫~』における本文とはなにか。素材に、文に、身近であることを選びながら、制度とはひとつの翻弄であることの疑惑。開かれるとき、一体なにが、問われるだろうか。[Y. Noguchi]