東京FILMEXレポート2〜特別招待作品『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』〜

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 特別招待作品部門でサプライズ上映に選ばれたのは、『セントラル・ステーション』(1998)や『ビハインド・ザ・サン』(2001)で知られるブラジルのウォルター・サレス監督によるドキュメンタリー映画『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』(14)。

 上映前に登壇したジャ・ジャンクー監督は、サレス監督がジャ監督のドキュメンタリーを制作することになったきっかけを語った。1998年のベルリン国際映画祭でサレス監督は『セントラル・ステーション』、ジャ監督は『一瞬の夢』(1997)が上映され、二人はその時からお互いを注目し始める。そして、2007年にブラジルのサンパウロ国際映画祭での対談でサレス監督は「ジャ・ジャンクー監督の映画を撮りたい」と伝え、それが2013年に実現したのだ。

 撮影期間はパリでの3日間、北京での3日間、そしてジャ監督の故郷中国・山西省汾陽(フェンヤン)での8日間。最終的にパリでの撮影部分は使われなかった。『一瞬の夢』や『プラットホーム』(2000)の舞台となったフェンヤンでの監督の幼少期や出演者からの話を聞きながら、『世界』(04)や『罪のてざわり』(13)といった北京の風景へとカメラは移ってゆく。本作は監督の作品の軌跡を追っただけでなく、ジャ監督の中で描かれる若者の苦悩も同時に描かれている。撮影期間は短いながらも、98年のベルリン国際映画祭から、ずっとジャ監督の映画を見ていたというサレス監督によるジャ監督への深い理解が込められた作品だ。

『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』(ブラジル/2014年/103分)
英題:A GUY FROM FENYANG: JIA ZHANGKE
監督:ウォルター・サレス
撮影:インティ・ブリオネス
編集:ジョアナ・コリエール
インタビュアー:ウォルター・サレス、ジャン=ミシェル・フロドン
出演:ジャ・ジャンクー、ワン・ホンウェイ、チャオ・タオ、ユー・リクウァイ、ハン・サンミン

文=韓松鈴