リーフレット『井筒俊彦全集』推薦文寄稿

安藤礼二所員がリーフレットに推薦文を寄稿しています。

『井筒俊彦全集』(全12巻・別巻)(慶應義塾大学出版会)
編集顧問 鈴木孝夫/鳥居泰彦/松原秀一
編集委員 岩見隆/鎌田繁/坂上弘/澤井義次/野元晋
編集担当 木下雄介/若松英輔
シリーズ2015年春完結予定。

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井筒俊彦は20世紀の日本が生み落とすことができた最大かつ最高の思想家である。思索の対象としたジャンルと地域の多様性においても、その理解の深みにおいても、他の追随を許さない。柳田國男の民俗学と折口信夫の古代学さらには西脇順三郎の詩学を一つに統合し、西田幾多郎の哲学と鈴木大拙の宗教学に橋渡しした。『コーラン』の読解によって宗教の起源を砂漠のシャーマニズムに探り、『神秘哲学』の構築によって哲学の起源を舞踏神ディオニュソスの憑依に探った。そしてユーラシア大陸の極西に生まれた神秘主義思想と、ユーラシア大陸の極東にまで達した神秘主義思想を一つに結び合わせた。東洋という視座から日本、アジア、世界を統一的に論じる道を拓いた。そのとき、もはや学問的な研究と詩的な表現の間の差異は消滅してしまう。グローバルであることとローカルであることの差異もまた。井筒俊彦を読み直すことから、次なる100年の思想と表現が始まる。(リーフレットより)