IAAD について

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多摩美術大学 アートとデザインの人類学研究所(Institute for Anthropology of Art and Design, Tama Art University)では、「芸術」という営みを数万年におよぶ「人類史の時空からとらえなおす」研究をおこなっています。従来、考古学や文化人類学などの研究に限定されてきた人類の創造活動を、初めて総合的芸術研究の中で正面から対象化し「芸術学×人類学=アート・アンソロポロジー」として発進させたのがはじまりです(2006年に多摩美術大学芸術人類学研究所が開所)。芸術人類学とは、人類史の長大なスパンにおいて過去・現在・未来へと進むあらゆる「表現(リプレゼンテーション)」を、自然と人、人と物、人と人の「関係性において刻々に生成するもの」としてとらえ、そこから人の有機的な心身のはたらきを明らかにしていく行為です。そのため私たちは「アート&デザイン」「ヒューマニティーズ(人文科学)」「サイエンス(自然科学)」の3領域を結びつけ、わが国と世界の民族・文化集団の芸術の生成と展開を先史からみつめ探究しています。人が自然から恵みを受け、その心・知・術によって創造してきたもの表現の蓄積を掘り起こすことによって、私たちは21世紀の現在が最も必要としている、真の「生命力の再生」へ寄与していきたいと考えています。

IAAD の活動

IAADでは4つの研究部門があり、いずれも広く社会にかかわり、下記3つの交流的創造とクロスした活動をおこなっています。

1.《学科間交流・大学間交流=インター・ディビジョン、インター・ユニヴァーシティ》

①多摩美術大学学内の諸学科、美術館・図書館、ゼミナール、課外活動を通じて在学生、卒業生、「タマビ」をめざす受験生をはじめ、幼児・初等教育機関との交流をおこないます。
②他大学や研究機関などと相互交流と連携活動を推進しています。また全国の美術館・博物館、図書館、一般企業の展示館、アトリエ、映像スペースなどと、積極的なコラボレーションをおこないます。

2.《地域交流=インター・ローカリティ》

研究所が所在するこの多摩地区をはじめ全国のコミュニティ、スクール、学びのシェアスペースや企業との交流を通して知識と実践をつなぐプログラムを推進しています。

3.《国際交流=インター・ナショナリティ》
①海外の大学・美術館・博物館・研究機関・企業などとの共同研究・展示プロジェクトなどを推進しています。
②これらの諸活動の成果を内外の各種メディアなどを通じて発信しています。

所長メッセージ

世界の総人口は2022年に80億人を突破しました。国連の「世界人口推計」が明らかにした数字は、これまで成長をつづけてきた人類による諸活動が、未曾有の事態を引き起こしているという現実のさなかにもたらされたものです。パンデミックを経験したわたしたちは、地球のあらゆる場所が繋がっていること、人間は人間以外の存在とも分かちがたく結ばれている状態にあることを、思い知らされました。生命とは何か、人間とは何かという大きな問いに、あらためて向き合わざるを得なくなったとも言えるでしょう。

その問いに答えるには、知性と感性の調和が必要です。サイエンスとアートはその長い歴史をつうじて、豊かな想像力を育み、総合的な知のあり方を模索してきました。そして今日、人文諸科学との対話は世界のすべての文化との対話へと発展し、知の驚くべき多様性をもたらしつつあります。人間が生きるところであれば、どんな場所にもユニークな「野生の科学」が存在すること、モノを作り出す人間にはどこか共通する知恵の使い方があることが、さまざまなクリエーションをとおして明らかになっています。

「アートとデザインの人類学研究所」は多様な世界における人間の創造性を、美術やデザインにはじまり考古学、歴史、宗教・哲学から音楽や文学まで、幅広い分野との協同をとおして探ってゆきます。シンポジウムや研究会の開催、展覧会や刊行物の発行などによって、その研究成果を学生や社会一般の方々にも公開していきます。

今後も国内・国外のさまざまな機関との連携をとおして、本研究所の活動が豊かな結び目となっていくことを目指します。引き続き、多摩美術大学・アートとデザインの人類学研究所の諸活動に、みなさまからのご支援、ご指導を宜しくお願いいたします。

アートとデザインの人類学研究所 所長
港 千尋