リーフレット『宗教学名著選【全6巻】』寄稿

安藤礼二所員がリーフレットに推薦文を寄稿しています。

 

『宗教学名著選【全6巻】』(国書刊行会)

編集委員 島薗進/鶴岡賀雄/山中弘/松村一男/深澤英隆/奥山倫明/江川純一

企画協力 南山宗教文化研究所

シリーズ2014年度完結予定

各巻予定価格 本体5,000円〜6,000円+税

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近代宗教学が誕生した19世紀後半以降、我々は「宗教」という言葉で何を摑もうとしたのか。そしてその一方で、「宗教」という言葉が覆い隠してしまったものとは何か——。19世紀後半から20世紀半ばにかけて「近代的宗教概念」を成立させた最重要文献の中から、その重要性を認められながらも未訳であったもの、翻訳が存在するが抄訳、重訳であったものをすべて新たに訳し下ろし収録する。「宗教」という言葉そのものの再考をせまる一大叢書。(リーフレットより)

 

「起源の宗教学」の可能性

宗教学が生み落とされたのは19世紀後半のことである。それまで人々は個別の世界に生きていた。しかし産業革命と資本主義の興隆は、否応なく世界を一つにしてしまった。ヨーロッパの人々は、自分たちとは異なった世界観を抱き続けてきた人々と出会った。その出会いは一つの方向性に固定されたものではなく、柔軟な双方向性を持つものだった。人間は集団の中に生まれ、可視の現実世界だけではなく不可視の超現実世界を生きている。宗教学は近代を条件としながらも、人間にとっての「普遍」を射程に収める。超現実世界は、超越的な「神」と内在的な「魂」の間にひらかれている。近代が一つの臨界を迎えようとしている今こそ、自然と文化の関係をはじめて普遍という地平から問うた「起源の宗教学」の可能性が検討されなければならない。その最良の素材が生きた日本語で提供されるのである。貴重な研究の成果であると同時に、われわれ自身を知るために不可欠となる一連の書物である。(リーフレット寄稿推薦文より)