ユーロ=アジアをつらぬく美の文明史

鶴岡真弓

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この部門は「芸術人類」によって培われた「アート思考」を、先史・古代・中世に溯り、諸民族の「生命デザイン」を通して探究するものである。

その調査範囲は、西はブリテン諸島の西の極み・アイルランドから、東の極み・日本列島に至る広大な「ユーロ=アジア世界」である。東西1万キロに届くこの文明圏は、人類史において最も繁くヒトが行き交い、表現を交換し共有してきた時空である。

ヒトによるアート(思考)の行き交いは、現代の「グローバリズム」とは比較にならないスケールでおこなわれてきた。6万年前の「出アフリカ」以来、ホモ・サピエンスの旅は4万年前にヨーロッパ、シベリア、日本列島に及び、1万3000年前に北米へと架橋された。

荒ぶる大自然に生身と素手で向き合わざるを得ない人類は、有限の生を自覚し、「生命の循環」を欲し祈り、それを「生命デザイン」として形にする困難さと歓びとを見だしてきた。本部門で調査対象とする、シンボリックでマジカルな造形表象としての「装飾・文様」(ヨーロッパ新石器時代、古代中世ケルト、古代中央アジア騎馬民族スキタイ、先史シベリアの石線刻画、縄文など)にその観念が結晶化されている。

それらは狩猟・採集・遊牧・牧畜・農耕・漁労を背景とし、動物とヒト、誕生と死、天と地など、異質なもの同士を、アナロジカル(喩・類比的)な想像的手法で照応させる構造をもつ。「生きとし生けるもの」を食糧や供儀とし、それらを豊饒の神々として畏敬する、アンビバレントなわれわれ人類の存在(論)自身が、その独特の「循環的造形」に表出されている。

メカニズムの便利さに乗る現代人が喪失した「生命をみいだすアート思考」が、広大な「ユーロ=アジア世界」の民族の手になる稠密な美的工作物から顕れるだろう。

Art Anthropology 16号《ユーロ=アジアをつらぬく美の文明史》

アイルランド発「ケルト三部作」アニメとジャック・B・イェイツ/鶴岡 真弓

 


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