学外のこと|展覧会・イベント
2024.4.11
日野之彦 個展 「人と人影」
本学油画専攻教授 日野之彦先生の個展が開催されます。
日野之彦「人と人影」
会期:2024年4月5日(金)〜 2024年5月18日(土)13:00 - 19:00
*日・月・火・祝日は休廊
会場:SNOW Contemporary / 東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404
オープニングレセプション:2024年4月5日(金)17:00 - 20:00
SNOW Contemporaryでは2024年4月5日(金)から5月18日(土)まで、日野之彦の個展「人と人影」を開催いたします。
日野之彦は1976年石川県輪島市に生まれ、2005年には「VOCA展」にてVOCA賞を受賞しました。インパクトの強い人物像を描く独特の画風が一躍注目され、それ以降も国内外で多くのファンを持つアーティストです。日野はVOCA賞受賞後も油彩のみならず、水彩や色鉛筆によるドローイング、彫刻作品など、さまざまなメディアを通じて新たな挑戦を精力的に継続してきました。
日野の描く人物像はその存在そのものが前景化されています。それは日野が「物語性を排除し、人間の存在感のみを純粋に抽出したいという欲求」があると語っているように、人間の存在を浮かび上がらせることによって、感情や精神の受け皿としての身体が強調されるのです。
また「結果的に生まれる空虚なイメージが私自身の心境や、今を生きる人々の空気を反映するのではないか」という作家の言葉からも読み取れるように、描かれた人物像は現代人が日常的に抱く不安や孤独、虚無感といった感情を代弁するかのような印象を与えます。
約2年半ぶりとなる今回の個展では、油彩およびドローイングの新作を約10点展示します。 「人と人影」というタイトルの通り、新作群では人と常に不可分な影のようなモチーフが人物像とともに描かれ、より複雑な精神性と強烈なイメージが提示されます。
日野の描く新たな人物像の世界を是非ご体感ください。
アーティスト・ステートメント
日野之彦
本展は、2022年から2024年にかけて描いた新作で構成しています。
鏡に映る姿、人型を模したお面、半透明の服や水滴による屈折した身体など、実体を持たない、あるいは実体をぼかすモチーフを扱った絵で構成しているところから「人と人影」というタイトルをつけました。また私が制作する上で、実際の人間も実体のつかみにくい影のような存在として描いていることも、このタイトルの根拠になっています。
こうした考えは、2019年から2022の制作によって強く意識するようになりました。
この約4年間は人物モデルを直接見ながら、作品によっては写真を全く使わずに描いていました。実際に生きたモデルを見ながら描くと、静止しながらも微妙に動き続けるモデルの身体や自分自身の視点、変化し続ける光の様子にあらためて気がつきました。生きている人間が発する揺らぎと、それによって変化する捉えどころのない影のような存在感を、観察と描写を重ねることによって再発見するという経験でした。生きているモデルを長い時間をかけて一枚の絵に集約していく過程で、ズレや矛盾により歪みが生成されます。その歪んだイメージと、人間の内面で起こる不安定な心理状態を連想させるイメージが、私の中で結びついてきました。
モデルを見ながら描こうとしたきっかけは、人間の存在感を直接感じ取ろうと考えたことでした。それ以前は自分の姿を写真に撮り、それを元に変形を加えながら描いていました。だいたい2003年から2018年の間です。表情やポーズ、体型、服装を操作して、特定の感情や年齢、性別、状況などを想起させない人物像を描くことを意図していました。物語性を排除し、人間の存在感のみを純粋に抽出したいという欲求がその行為の源でした。
それとともに、結果的に生まれる空虚なイメージが私自身の心境や今を生きる人々の空気を反映するのではないかという考えがその根底にありました。
この考えは1998年から2002年に描いた作品のテーマから発展したものでした。この当時に描いた人物像のポーズや表情、目の表現は現在の制作に直接つながっています。これは私が日常で感じていた空気や自分自身の心境を表そうとした結果の表現でした。不安、孤独、虚無、そのようなことを考えていました。暗くネガティブな言葉が並びますが、暗くも明るくもない、どちらともいえない何かだと私は捉えていました。現在に至るまで、表現方法は様々に変化させてきましたが、このテーマはすべての作品に通底しています。