研究室企画展
多摩美術大学80周年記念学内展
彫刻の超克ー解体と習合ー
2015年10月6日(火)〜10月17日(土)
日本の美術教育は国の近代化とともに西洋アカデミズムの移植に始まり、以降殖産興業の名のもとに伝統と改革という二律背反を含みながら展開されます。それは西洋的「美術」の創設に伴うジャンルの出現がもたらした文化の統合と分離であり、また日本と西洋の相克の歴史でもありました。その流れの中で日本の「彫刻」は西洋的価値を摂取しつつも、高村光雲や荻原守衛をはじめ、橋本平八らなども自らの伝統との「習合」を模索しながら独自の進化を遂げて行きます。ここであえて「習合」と言及するのは「融合」との相違です。「融合」とは両者が溶け合い一つになる事ですが、「習合」とはそもそも宗教上の様々な神々の重なり合いであって、互いを尊重し序列を避けながら共存を意味するものだからです。 様々なメディアが融合し新たな美の創造が試される今日、あえて「彫刻」を試みる若手作家の動向を「習合」的観点から肯定的に捉えながら「彫刻」の抱える問題を浮き彫りにし、その表現の可能性を展観できればと思います。
多摩美術大学彫刻学科教授 水上嘉久