カリキュラム
彫刻を学ぶことは全てを学ぶこと

 かつての造形芸術、今で言うところの彫刻や絵画、工芸や建築などはそれぞれが密接に関わり、融合しながら一つの文化を形成していました。ところが近代になって、各々が自らの純粋性を求めて独自の道を模索するようになりまた。つまり、形と色、芸術と技術、礼拝と鑑賞と言ったようにです。

 しかし、この様な尺度だけでは、様々なメディアを取り込みながら拡張を続ける美術表現や、複雑な現代社会を捉えることは出来ないでしょう。彫刻学科では、現代における美術の歴史性や社会性、その概念の拡張や崩壊を前提としながら、つねに「彫刻とはなにか」を問い続けることによって、開かれた表現領域の開拓と、次世代の作家の育成を目指します。彫刻は身の回りにある物質全てが材料となりますが、それらの材料を加工し、形にしていくには様々な知識や技術が必要です。そして、その技能には、長い間培ってきた人類の記憶が含まれているのです。

 つまり、彫刻を学ぶことは極論すれば全てを学ぶことと言えます。私たちは人と物質との記憶を起点に、いかに自己のイメージを喚起し、拡張しうるかを初源的な関わりから見つめていきます。1・2年次の基礎課程では、物質と形態、そして自己との関係を理解しながら「ものの視方」を養い「物質とかたち」についての理解を深めます。3・4年次の専門課程では、基礎課程の体験を軸に彫刻概念の深化と拡張を前提とし、つねに現在に立脚しながら「彫刻の可能性」を探ります。

 そして、身の回りにある様々な物質との関わりを実践する場が独立して建てられた全6棟の専門工房群です。カリキュラムごとに学生個々の指向性にあわせて、多様な素材、技法に対応した大小30もの専門実習室を自由に選択しながら、新たな彫刻領域の開拓の場として、次世代を担う人材の育成を目指します。