04 10月 

こんにちはCMTELです。2018年6月14日(木)に開催した透明樹脂を用いた樹脂成形ワークショップ、「透明樹脂(クリスタルレジン)を始めよう!」のレポート記事です。記事の後半では粘度のあるレジンを使う際に、一手間でクオリティがグッと上がる小ワザをご紹介します。

今回のワークショップは日新レジン株式会社様にご協力をいただきました。

使用した樹脂のご紹介
今回のワークショップでは高い透明度が魅力の透明樹脂、クリスタルレジンを扱う内容に挑戦しました。

クリスタルレジンとは主剤硬化剤の2液性の注型用(ちゅうけい)※1エポキシ樹脂で、数ある樹脂の中で透明度が高く低粘度で泡抜けに優れた樹脂です。そのため、素材封入(ふうにゅう)にもってこいの材料です。
こちらの商品は大学内の画材店でも取り扱われています。

※1 注型とは…型に材料(樹脂等)を流し込み固化させた後、型を外して製品を作る方法。

ワークショップは2部構成。まず、「素材封入(ふうにゅう)」に関しての講義・実習、次に「樹脂の着色」についての講義・実習を行いました。

 


●講義1「エポキシ樹脂の性質と扱い方」
はじめに日新レジン株式会社の講師の方々から樹脂の性質、取り扱いの講義を受けます。

デモンストレーションを交えながら講師の方々はとても分かりやすく樹脂についてのお話をしてくださいました。

●実習1「素材の封入」
樹脂の扱い方を理解したら各自テーブルに移動し、実習に移ります。

一つ目の実習として、学生の皆さんがそれぞれ用意してきた素材を樹脂に封入していきます。あらかじめ1層の硬化(こうか)※2 済みの樹脂の上から、素材と2層目の樹脂を流し込み硬化させ、最後に3層目を流すというプロセスです。
※2 硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。

トレーナーからの説明をよく聞き、2種類の樹脂を計量し攪拌(かくはん)※3していきます。攪拌が完了したら、樹脂を型に流し入れ、素材を配置します。
※3 攪拌(かくはん)とは…かき混ぜること


思うところに配置ができたら2層目の樹脂を流し、さらにその後3層目を流していきます。

●完成
24時間経ち完全に硬化したら、樹脂を型から取り外します。3層構造で作ったことにより、奥行きが生まれ素材と素材の重なりが豊かなものになりました。また、型に丸みがついているので、角度によって素材の見え方が変化します。レンズのような効果が生まれ、素材の形が湾曲して見える点も面白いです。


●講義2「透明樹脂の着色」
クリスタルレジンは透明着色剤のNRクリアカラーを使用することで、透明に鮮やかな色をつけることが可能です。4色の着色剤の混合比率を変えると作れる色の幅も広がります。



●実習2「透明着色剤の混合」
色見本を見ながら自分が作りたい色に調色していきます。


着色ができたら硬化剤と合わせ攪拌し、配布されたシリコン型にゆっくりと流して硬化させます。

●完成
みなさんそれぞれとてもカラフルな色になりました。


調色は、鮮やかさを保ちたい場合には2色程度がお勧めです。色数を増やすと、落ち着いた渋い色味も出すことができます。


ワークショップの概要は以上となりますが、ここで学生のみなさんの作品ををもう少し見ていきましょう。

●作品のご紹介
出来上がった成果物をみると、みなさん様々な試みをしています。中では、お菓子などグミをいれた実験的なもの、おもちゃなど小さなミニチュアを封入したものなど、素材ごとに違う面白い表情が出ていました。





●小ワザ紹介「粘度のあるレジンの泡抜けをよくするには?」

最後に、クリスタルレジンを扱う上でクオリティを上げるためのちょっとした小ワザのご紹介。気温の低い時期にクリスタルレジンを使う方は必見です。

記事の文頭でお話しした通り、クリスタルレジンは主剤硬化剤を混ぜ、攪拌することで硬化する2液性の樹脂です。低粘度ではありますが主剤は常温だと粘り気が高く、はちみつ程度にとろとろしています。攪拌や着色時に慎重に扱っても気泡が入りやすくなっています。

泡が残ると、仕上がりの見栄えにも影響が出てくるため、注型する前は出来るだけ気泡が無い状態にしておきたいところです。

そこで、前準備として大事なことは、あらかじめ主剤と硬化剤を50~60℃程度に温めておくこと。温めることで常温のものより段違いに粘度が下がりサラサラになります。計量時や攪拌時、硬化時に巻き込んでしまう気泡の量を極力抑えることができます。

温めるのに用意するものは、密閉できるチャック袋2枚耐熱ボウル。袋を2重にして、その中に主剤・硬化剤の缶を入れます。(袋に入れることで缶内に水が混ざってしまったり、容器の缶が錆びてしまうことを防ぎます。)
次にチャックを閉めお湯を張った耐熱性のボールでゆっくり湯煎にかけます。※お湯の取り扱い時にはヤケドに気をつけましょう。

温まったらやけどに注意しながら、タオルなどを介して袋から缶を出し使用します。

少し手間がかかる作業ではありますがこの行程を踏むことで仕上がりが目に見えて変わるので、これから透明樹脂を扱う方、気泡に悩んでいる方は試してみてください。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました、今回のワークショップは全2回でどちらも満席となりました、残念ながら参加できなかった方々もまたの機会にぜひご参加ください。

 

※このワークショップは日新レジン株式会社様にご協力いただきました。

04 9月 

EVENT REPORT!「トレンドセミナー」

Posted by CMTEL  |  2018/09/04 14:20

こんにちは、CMTELです。今回は2018年6月1日に行われた、2019-2020秋冬シーズントレンドセミナーのイベントリポートです。

Edelkoort East 株式会社(TREND UNION)様より家安 香氏を講師としてお招きしセミナーを開催。実際にトレンドブックを閲覧しながらトレンド予測の必要性やその背景の説明を行いました。(以下敬称略)

●トレンドブックとは?
社会背景の分析やリサーチを行い、それに基づいて1年半から2年半先のトレンドを予測し作られたブックです。詩的なキーワード、カラー、ヴィジュアルで構成されており、デザインしたり構想を練るために役立つ情報が詰まっています。そしてファブリックサンプルも多数添付されており、実際に触れることができます。インスピレーションの源になる貴重なブックです。

TREND UNION(トレンドユニオン)とは?
Lidewij Edelkoort
リドヴィッジ・エデルコートを中心として、本拠地のパリでトレンドに関する情報発信を行っています。キーワード、カラー、テクスチャーなどトレンドを知る上で大切な情報をブックにまとめ発行。また、世界各地で年2回セミナーも開催しています。TREND UNIONは、人間が本来もつクリエイティビティーを信じ、その「自然の欲求」が向かう先を繊細かつ大胆に捉えている全10種類のトレンドブックを年2回発行しています。

 

セミナーの様子

1.講義
「人が物を作るのはなぜ?
家安氏は前置きとして、“人がものを作る理由は何?”と問いかけました。

原始的な時代において、衣服は“身体を隠すため”、履物は“足をケガから守るため”として、「必要性」によって人が作り出しました。

その後、“自己を他者よりも特別に見せたい”という心理が発生した頃、豪華な装飾品が生み出されたように、「必要性」だけではなく「欲求(動機)」もものづくりのきっかけになりました。

「欲求を探るには、今がどんな時代かを考えることが重要」
“何を作ろう?”と考える時、に目を向けてみましょう。今起きている出来事、人の欲求や価値観ライフスタイル。大きなスケールで考えるだけでなく、一番身近な自分にも今を知るヒントは存在します。情報過多な現代でこの作業は大変なことではあるのですが、「今ってどんな時代?」「なぜ?」と考えることが、ものを作る・生み出すために必要なことだといいます。

昔の人々が衣服や履物を作り出したように、「必要性」「人々の欲求」分類・分析することで、作るべき対象の方向性が見つかります。その方向性はデザインの分野(プロダクトやグラフィック、建築など)はもちろん、業界を問わず様々な分野(食品、サービス、金融など)で展開しかたちにしていくことができます。


「トレンドには流れがある」
トレンドは断片的ではなく、過去・現在・未来と連なっており流れを持ちます。前述で「今を分析すること」が重要だといったのは、この点が理由です。未来を予測するには「今」を知らなくてはなりません(もちろん過去も重要です)。ここで時代がどのように変化しているか“お茶”を例に説明したいと思います。

人々が一つの製品に求めるものが、時代とともに大きく変化していることが分かります。


「デザインの2つの役割」
“デザイン”という言葉には、意匠・設計・下絵など様々な意味がありますが、ここでいう“デザイン”は下の2つの役割を果たします。
①特徴・特性を分かりやすく伝えるための手段
②ものの新しい観点・価値観をもたらすはたらき

今回のお茶の例において、①②は次のように言い換えられます。
①→ネーミングやパッケージ等で体脂肪を気にする人に効果があることを伝える
②→飲むことがダイエットにつながるという、お茶の新しい価値観の提案

人々の心の変化が発端となり、“お茶”のあり方に新たな一面が生まれました。このように人々の心の変化を捉えること未来を読み解くヒントに繋がるのです。


「2020年秋冬のテーマ Enlightment(啓発)

テーマを象徴する16のキーワードを挙げながら、家安氏よりテーマについての解説を行いました。その中から、ここでは1つをご紹介します。


「Switch Off(スイッチを切る)」
このキーワードの解説のはじめに、家安氏から“腕時計をしている方はいますか?”という質問が投げかけられました。

この問いに対して、意外な程多くの人が手を上げました。腕時計を身につける理由として会場内からは、“すぐに見られる” “アナログ時計だと時間の経過が分量として視覚的に分かりやすい”といった意見も出ました。

家安氏が某時計メーカーの方から聞いたエピソードによると、携帯電話の普及と同時に時計離れが進んでいたにもかかわらず最近リバイバルの兆しが出てきているというのです。その理由の一つに、“携帯電話だと時計以外の情報(SNSやメッセージアプリ)が目に入ってしまい、思わず時間を取られてしまう”といったものがあったそうです。

確かに、時間を問わず飛び込んでくるメッセージの着信音に、わずらわしさを感じたことは誰しもあるのではないでしょうか?時間を知りたかっただけなのに、メッセージが届いていたことに気がつき返信をし始め、SNSもチェック…、いつの間にかあっという間に時間が経っている。コメントや反響が返ってくることは嬉しい反面、そういった“ノイズから自分の時間や空間を遠ざけたい・守りたいという心理が強まる”というお話に、共感を覚えた参加者も多かったようでした。

また、この心理から単機能を欲する傾向が今後強くなるといいます。

例えば服装において、この心理を持つ人はどのようなものを求めるでしょうか?肌を露出してオープンな服装というよりかは、自分を外界からを隔てるため身体を覆う面積を広くしたものに落ち着きを感じるかもしれません。襟の形、袖の長さ、ファブリックの質感や色、このように考えるとデザインすべき服装のイメージの輪郭が浮かんでくるようです。

参加者の中には、“Switch Off”というキーワードの説明を聞き、「自分にも当てはまると実感した。時代やトレンドの流れに自分も無縁ではなく、その中に存在しているんだということを感じた。」という感想をもつ方もいました。


2.トレンドを具現化したオーディオビジュアルの上映
今回のセミナーではトレンドのイメージを感覚的に表したオーディオヴィジュアル(音と映像)の上映を行いました。セミナーの会場のみで上映されるムービーでは、美しい写真に合わせて流れる音楽は歌詞もその場面に合ったものを選曲しているのだそう。オーディオビジュアルで使用されていた十数曲の音楽にも、興味を持つ学生が沢山いました。


3.ブックの閲覧
セミナーでは普段CMTELには無いジャンルを含む計12冊のブックが閲覧可能でした。オーディオヴィジュアルとリンクしているGENERAL TREND、プロダクトやインテリアのヴィジュアルが豊富なLIFESTYLEなど、幅広いジャンルのブックを取り揃えました。ブックは最新の2019-20秋冬シーズンと、セミナー開催時の2018春夏シーズン。今と未来を見比べることができました。

今回のセミナーには過去最多の90名の方々が集まりました。ブックを十分見ることができなかった参加者のみなさんは、一部のブックをCMTELに常設していますので、ぜひ見にきてくださいね。


4.質疑応答
講義の終了後、時間の許す限り家安氏に質問をする学生もいました。


今回の参加を逃してしまったという方、2018年度後期開催予定のセミナーにぜひご参加ください。(開催日程は決定次第このブログ・Twitterにてお知らせします)

またCMTELでは常時下記のブック(日本語訳の解説ブックつき)が閲覧できます。豊富な写真と添付してあるファブリックを、ぜひ見に・触りにお越しください。
2017年春夏号 GENERAL TREND
2017-2018年秋冬号 GENERAL TREND
2018年春夏号 ACTIVE WEAR
2018-2019年秋冬号 ACTIVE WEAR
2019年春夏号 GENERAL TREND
2019-2020年秋冬号 GENERAL TREND

※今回のセミナーはEdelkoort East 株式会社様にご協力いただきました。

23 2月 

こんにちは。2018年1月12日(金)のワークショップにて「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」を開催しました。講師として株式会社JAM様より辰巳氏・吉野氏をお招きし、デモンストレーションを交えながら製版〜プリントまでのプロセスを体験できる内容でした。今回のブログでは当日の様子をご紹介。

●講義「孔版印刷(シルクスクリーン)について」
まず初めに孔版印刷の種類やシルクスクリーンの仕組みの紹介です(詳細な情報はこちら)。シルクスクリーンはTシャツやトートバッグの印刷にも使用されている身近な印刷技術です。

従来、シルクスクリーンの紗(しゃ)※を作るには多くの時間機材・薬剤専用の作業空間、そして何よりテクニックが必要でした。しかし今回は手軽に作ることのできる「デジタル製版機」を使用します。機械とパソコンを繋ぎ、Illustlatorで作ったデータを送信すると、図柄状に孔(あな)の開いた紗が出てきます。プリンタで印刷するような感覚で紗が完成しました。

※紗:繊維がメッシュ状に織られた布で、図柄以外の部分のメッシュの孔を何らかの方法で目止めし、インクが通らない部分を作ったもの。

だるま(図柄部分)に孔が開いた状態の紗が数分で出てきました(だるまの周りの色面は孔が開いていません)。スピーディーな点もさることながら、デジタル出力のため同じ紗を何枚でも作ることができる点も魅力的です。

●準備「枠に紗を張って版を作る」
1.使った道具

シルクスクリーンには紗を張るための枠が要ります。今回使うは、パーツを連結させて7種の大きさの枠を作ることができるフレームパーツです(詳細はこちら)。

今回のワークショップでは印刷サイズが200×200mmのため、青色と黄色のパーツのみ使用します。なお、紗は参加者が事前に製作したデータから出力したオリジナルデザインのものを用意しました。

2.紗を張る
組み立てた枠の上に紗を乗せます。枠にある溝に、紗の上からゴムチューブを一周埋めていきます。付属のローラーを使いゴムチューブを埋め終わると、ピンと紗を張ることができました。シルクスクリーンでは、紗をたるみなく張る必要があり慣れないと難しいものです。しかし、初めての参加者でも簡単に上手に張ることができました。(張り方の詳細はこちら)

それでは準備もできたところで、早速プリント実習に移っていきます。


●プリント実習①「紙・布用インクを刷る」
プリントをするアイテムは各々持参してもらった好きな素材。色紙やトートバッグに靴下に手ぬぐいなどなどが集まりました。12色の中から選びます。

へのプリント後、インクの種類によっては洗濯でインクが落ちないよう定着させるためにアイロンでの熱圧着の必要があります。使用するインクにはアイロンの仕上げがいるのかどうかチェックしましょう。アイロンが必要なインクの場合、熱で布が変形しないよう、プリントする布製品は綿50%以上である必要があります。

今回用意した「金・銀・銅色」のインクは、株式会社JAM様で扱っているオリジナルインクでアイロン作業が不要のインクです。そのため、熱に弱くアイロンがけの出来ないアクリルポリエステルといった化学繊維にもプリントができます。ただし、金銀銅などのラメ入りのインクを使う場合、紗は荒目(今回使用した紗は荒めの70メッシュ)のものでないとインクに含まれているラメが詰まってしまうので注意しましょう。

1.インクはたっぷり使う
図柄部分の幅をしっかりカバーできる量のインクを置きます。もし刷っている間に紗の上でインクが無くなってしまうと、かすれの原因になってしまいます。(印刷後、版に余ったインクは乾燥していなければ再利用できます。)

2.スキージでインクを刷る
スキージというインクを伸ばすための専用のへらを使い刷っていきます。刷る時のコツは4つ。

・“ジー”という音がたつくらいの力加減で刷ること
力を入れても意外と大丈夫でした。余分なインクをこそぎ取るようなイメージで、しっかりスキージで紗を擦りましょう。
・深くスキージをつかみ、指を広げしっかりと持つこと
スキージに加わる力にむらが出来てしまうと、インクの乗りが厚い部分・そうでない部分ができてしまいます。
・スキージの角度を45°にすること
角度が低過ぎると、インクが余分に紗を通ってしまい滲みの原因になってしまいます。
・図柄の幅に合わせて的確な大きさのスキージを使うこと
図柄の幅に対して大き過ぎるスキージを使った場合、スキージにかけた握力が分散してしまいます。そうするとインクの付着が均一にならず、ムラができやすくなります。小さい図柄よりも大きい図柄をプリントする方が難易度が高いです。

力を入れてスキージを動かす際、版が動いてしまうため参加者同士で枠を押えます。トートバッグなどマチがあるものは中に板や厚紙を入れて、印刷面をフラットにしてから刷るときれいに刷れます。

版がずれると、このように図柄がブレる原因になるのできっちり固定しましょう。

版を外す時は、枠の一辺を押さえゆっくり持ち上げるとプリントした物が版にくっつかずうまく剥がせます。

プリント後はすぐに、版の裏側から濡れたウエスインクを拭い目詰まりを防ぎましょう。インクが乾燥すると紗の目が詰まり、次のプリントの際にその部分だけインクがのらなくなってしまいます。

3.仕上げにアイロンをかける
アイロンがけの必要なインクを使ったものにはアイロンをかけましょう。熱によってインクが定着します。

4.完成!
以下の画像2枚は参加者に大人気だった銅色のインクでプリントした作品です。この写真では見えないのですが、細かいラメが入っていてキラキラしています。

同じく銅色のインクでプリントした作品です。黒地の色が透けることなく、図柄部分にこってりとインクが乗っています。濃い色のものにプリントすると、下地の色が透けるインクもあるのですが、このインクは不透明色なのが特徴です。

表面に編み目の起伏がある靴下にもプリントができました。

みなさんコツをつかみ、完成度の高いプリントが続々とでき上がっていきます。出来上がりの嬉しさから、思わずその場で着用する学生も…!


●プリント実習②「箔を転写する」
とは金・銀のメタリックな質感をもつ転写フィルムです。ホットバインダーを刷った箇所に乗せ、アイロンをかけることで定着させることができます。

1.ホットバインダーを刷る
ホットバインダーとはフィルムやシートを印刷物に転写するための接着剤です。加熱すると溶け、接着力を発揮します。プリント時には2回刷りましょう、粘り気が強く粒子も大きいためしっかりと印刷物にホットバインダーをのせるためです。また紙布用インクよりもさらに乾燥が早いので、印刷後はすぐに濡れたウエスで紗を拭い目詰まりを防いでください。

画像中央の、うっすらと見える丸い図柄部分がホットバインダーを刷った色面です。触ってもホットバインダーが手につかない程度に乾燥させます。

2.熱圧着する
アイロンを150度に温めます。蒸気孔のあるものだと穴の跡がついてしまう可能性があるので、かけ面がフラットなアイロンを使用しましょう。また、アイロン台は表面が柔らかなものだと圧力が分散し圧着がうまくいかないので、下に敷くのは硬い板や厚紙がオススメです。

布製品でバッグなどの筒状のものには中に紙や板を入れましょう。アイロンの熱で溶けたホットバインダーが、裏側の生地に染み込んでしまうのを防止するためです。(紙など、ホットバインダーの染み込まない素材は必要ありません)

ホットバインダーを刷った部分に箔が上向きになるように重ねます。その上にクッキングシートを被せ、アイロンを3秒ほど当てます。きちんと圧着させるため、クッキングシートの上からアイロンを数秒かけた後、乾いたウエスで撫でてホットバインダーと箔の間に残っている空気を抜きます。箔がずれないように気をつけながら、さらに20秒加熱。体重を乗せしっかりをかけます。

3.箔フィルムを剥がす
最も重要なポイントがここです!フィルムを剥がしたくなる気持ちをぐっとこらえ、熱が完全に冷めきるのを待ちましょう。この間でホットバインダーと箔が固着します。冷めきらないまま剥がしてしまうと、このように箔がまだらになってしまいます。十分冷えてからゆっくりフィルムを剥がしましょう

4.完成です!!


●プリント実習③「起毛加工をする」
起毛シートとは台紙の表面に短かい毛がついたシートのこと。ベロアのようにふわふわした手触りをしています。箔フィルムよりも少し難易度が高くなります。

1.ホットバインダーを刷る
箔の時と同じく、ホットバインダーをプリントします。起毛シートの定着がうまくいくかどうかは、元々のホットバインダーの乗り具合大きく影響します。2度刷りでしっかりプリントします。ちなみに図柄の大きさによっては、慣れてくれば下の画像のように片手で固定し一人で作業することも可能です。刷った後は乾燥させます。

2.熱圧着する
印刷面の上に、白い台紙が上になるよう起毛シートを乗せ、さらにクッキングシートを被せアイロン(温度設定165度20秒)をかけます。あまりに圧力をかけすぎてしまうと、起毛がつぶれて寝た状態で貼り付いてしまいます。適度な圧力のかけ具合を、みなさん感覚で探っていきます。

3.起毛シートの台紙を剥がす
先程の箔フィルム同様、大事なことなのでもう一度繰り返します。台紙は冷えきってから剥がしましょう

印刷面に毛が付き、ケバケバしたテクスチャーに…!起毛シートの毛が残っている余白部分はまだ使用ができます。切り取って小さな面積のプリントに使いましょう。



1度の定着でうまく起毛がつかなかったら…?
起毛シートは難易度が少々高く、始めはうまくいかない場合もあります。そういう場合には、もう一度圧着を試みましょう。ホットバインダーが残っていれば、接着が可能です。アイロンをかける圧力を調整したり、部分的に起毛がついていない場合にはその部分へ重点的にアイロンをかけてみてくだい。


 

孔版印刷やシルクスクリーンと聞くと大変で難しいイメージを持っていた学生もいましたが、今回のワークショップを経てイメージが変わったようでした。

ちょっとした工夫ポイントを押さえれば、初めてでも上手に刷ることができます。思ったようにいかなくとも、意図しない効果がでて想像よりも良い仕上がりになったりなど、手作業ならではの発見もあります。興味を持っている方は、ぜひ挑戦してみてください!

製版〜プリント・特殊加工という内容盛り沢山のワークショップは、2018年度も開催予定です。今回参加のできなかった学生のみなさん、次回をお楽しみに。

ご協力いただいた株式会社レトロ印刷JAM様では、今回使用した枠の販売はもちろん、孔版印刷サービスも行っています。都内にワークスペースもありますので興味のある方はHPをご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・レトロ印刷 JAMにご協力いただきました。

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22 2月 

こんにちは。2017年10月5日(木)、6日(金)のミニワークショップにて「UVレジンと素材で『アクセサリーバッジ』を作ろう!」を開催しました。(2日間で計6回開催)

今回は、透明なUVレジンに色々な素材を組み合わせて、オリジナルのアクセサリーバッジを制作しました。UVレジンの使い方・注意点についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

封入(ふうにゅう)には、CMTELで用意した素材に加え、学生が各自で持参した素材も使いました。オリジナリティーのある面白い作品がたくさんできました!ブログでは当日の様子に加えて、学生作品を紹介していきます。

●UVレジンとは
使用した道具・UVレジン
UVレジンとは、紫外線に反応し化学変化を起こして固まる性質をもった樹脂です。身近で使われている例としてはジェルネイルがあげられます。樹脂特有のにおいもほとんどなく、紫外線を照射するUVライトを使えば5分ほどで制作ができます。また綿密な計量や攪拌(かくはん)のプロセスがないため失敗も少なく、初心者でも気軽に楽しめます。

●ワークショップの模様
1.素材を選ぶ
各自使いたい素材を選びます。持参した素材とCMTELの素材との組み合わせでイメージが広がり、アイデアがどんどん浮かびます。1つの案に絞るのに悩む学生が続出でした…!

テーブルに移って作業スタートです。

2.シリコーン型に素材を並べる
今回準備したのは正円のシリコーン型(直径3cm、深さ5mm)。ピンセット・爪楊枝を使って、素材をレイアウトしていきます。

3.UVレジンを流す
空気が入らないように、ゆっくり流していきます。もし空気が入ってしまった時は、爪楊枝を使って泡を取り除いていきましょう。

4.UVライトをあてて固める
今回使用したUVレジンは、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線の量ではすぐに固まりません。紫外線を照射する専用の機材がこのUVライトです。青く光っている時に、紫外線が出ます。紫外線を当てる時間は、シリコーン型の上面から2分、型ごとひっくり返し底面から2分、合計約4分程。硬化したばかりのUVレジンは高温になるので要注意です。熱が冷めたら型から取り出します。

5.ピンバッジ用金具を裏側に接着し完成

 

●完成作品のご紹介!
今回のミニワークショップでは、封入する素材を学生本人に持ってきてもらいました。学生ならではの視点で選ばれた、面白い素材が多く集まりました。その一部を完成品と一緒にご紹介します。

ドライフラワー

UVレジンに浸ることで、薄っすら透けた花びらの表情が綺麗ですね。透明感のある素材とUVレジンの相性は良いようです、繊細な美しさが引き立ちます。

虫の標本

蜂の奥には写真を切り抜いた黄色い紙も封入しました。UVレジンに着色はしていませんが、全体が黄色くなり琥珀のようです。UVレジンの表面から蜂がレリーフ状に浮き出ています。あえて封入させきらずに立体感を残すのも面白いですね。

コーヒー豆

コーヒー豆だけを封入したシンプルな作品です。身近にあるものも、封入してみると不思議と見え方が変わり、映えて見えます。豆の周りにある気泡は、封入する際に入ったものです。この程度の泡であればUVライトに当てる前に、爪楊枝で取り除くこともできます。


ここで余談ですが、下の画像のように細かい泡ができてしまう現象についてご紹介します。原因は封入する素材に残っていた、わずかな水分によることが主です。下の写真のように、残っていた水分は、UVレジンの硬化時の発熱で膨張し水蒸気となります。その結果「細かい泡として残る」「表面が盛上がる」といった現象を引き起こします。「密閉容器に乾燥剤と入れる」「ドライヤーで乾かす」など、素材は事前にしっかりと乾燥させておくことが大切です。

以上「泡ができてしまう場合の対処法」でした。少し話が反れましたが、学生作品の紹介に戻ります!


電子工作パーツ

この素材ならではの鮮やかな色の組み合わせがきれいです。水引のような結び目を作ってから封入をしています。周囲に散りばめてあるピンク色の素材は、鉱物の雲母(うんも)です。


4mm角程度にカットした本革です。

封入前、革の色は明るいトーンでしたが、封入後はUVレジンが染み込むことで渋くて深い色あいに変化しました。封入前と後で素材の印象が変わる点が面白いですね。革と組み合わせたのは、シリコン鉄という金属素材。マットな革の質感と、メタリックな質感のコントラストがきれいです。

コイン
大胆に500円玉を封入。斬新なアイデアに周りの参加者・スタッフも驚きました。

以上、学生作品のご紹介でした。

UVレジンは1つ作ると、さらにまた別のアイデアが浮かび2つ3つと作りたくなる魅力的な素材です。また固まる時間も短いため、どんどん形になる点も大きな魅力の一つです。手軽なUVレジン、ぜひ皆さんも試してみてくださいね。

14 9月 

こんにちは。2017年7月15日(土)、16日(日)のオープンキャンパスにて「マテリアルワークショップ~アクセサリーバッジをつくろう!~」を開催しました。2日間で合計282名の方にご参加いただき、すべての回が満員となりました。

このワークショップは、透明樹脂(UVレジン)といろいろな素材を組み合わせ、アクセサリーバッジをつくる体験ができるというものでした。

UVレジンとは紫外線を当てることにより固まる樹脂のことで、身近で使われている例としてはジェルネイルがあげられます。樹脂特有の臭いもほとんどなく、紫外線を照射するUVライトを使えば5分ほどで制作ができます。扱いやすい上に失敗も少ないので、初めて樹脂を扱う方でも気軽に楽しめます。

当日は、樹脂の取り扱いに長けた学生インストラクターが各作業テーブルについてレクチャーを行いました。
では実際どのようなワークショップを行なっていたのか、ご紹介します!

.素材を選ぶ
台の上に並べられた素材の中から好きなパーツを選びます。

アルファベットや動物の形をしたパスタや、

透明なカラーセロファンをカッティングマシンでカットしたもの。

3Dプリンターでプリントした造形物とその端材。トウモロコシのデンプンから作られたポリ乳酸というプラスチックを使ってできています。

こちらは、ワックスコードを短くカットしたもの。

この他にも、CMTELならではの特殊な素材もありました。その中から珍しい素材をいくつかご紹介します。

「スチレンビーズ」(協力 積水化成品工業株式会社様)
画像左側は、発泡スチロールの原材料”原料ビーズ”(ポリスチレンの粒)です。およそ0.4mmほどのビーズの中には発泡材のガスが含まれています。蒸気をあて加熱させることで50倍以上に膨らみます。向かって右側は原料ビーズを予備発泡させた“発泡ビーズ”です。

さらに発泡ビーズを金属の型に入れ、もう一度蒸気をあて成形することで膨らんだビーズ同士が熱でくっつきます。そうして普段見慣れている生鮮食料品用の保冷梱包材緩衝材が作られるのです。

今回は原料ビーズ、発泡ビーズの両方を揃えました。原料ビーズの段階ではビビットな色半透明ですが、発泡ビーズになると乳白色・不透明色になります。触り心地も発泡前は硬いですが、発泡後はビーズ内のガスが膨らみスポンジ状になるため柔らかく弾力をもちます。日常生活では見ることのできない、身の回りの物の元の姿に驚きです。


「メッシュ」
(協力 株式会社NBCメッシュテック様)
網戸やふるいなどでなじみ深いメッシュですが、実は家電製品や自動車内のフィルター音響機器のスピーカー部材など日常生活のあらゆるところで幅広く使われています。

今回は4種類のメッシュをレーザー加工機でカットしたパーツを準備しました。

画像一番左の編み目が三角形になっているメッシュはコンクリートの補強材として利用されています。繊細なイメージのあるメッシュが建材の一部として活用されていることに驚きました。一般的には目にすることのできない貴重なメッシュです。

縦横だけでなく三軸方向に織っているのは、三方向に対して強度を保たせる機能のための造形です。元々メッシュの織り目がもつ構造の美しさは、柄という観点においても魅力的です。

他にも、暗い所で光る蓄光(ちっこう)繊維を織り込んだものや、蛍光ピンクのメッシュは靴や鞄の試作品に使われているもの、撥水加工されているものなど種類が豊富です。


「ケミカルウッド」
(協力 株式会社ミナロ様)
加工性や環境性に優れた、言葉通り人工の木材です。木のように木目がなく繊維の方向を気にせず加工ができ、色で硬度が分かれているので用途に合わせて選ぶこともできます。また、着色性にも富んでいるので模型フィギュアの製作でも多く使われています。ものづくりの可能性をひろげる使い勝手のよい素材です。多摩美生もよくお世話になっています。


番外編「UVレジンと相性の良くなかった素材」
ワークショップに使用する素材の準備・検証をしていく中で、上手くいかない素材がありました。せっかくなので、ここで余談としてその例もご紹介します。
一つ目は、水分を含むもの。植物や食べ物など、水分をもつ素材は硬化する際、気泡ができたり表面に凹凸ができてしまうことも。下の画像は押し花を封入した試作品です。わずかに残っていた水分が原因だと思われます。

二つ目は、UVレジン液を吸い込んでしまうもの。例をあげると、スポンジフェルト状の布です。浸み込んでしまうと素材の内部に紫外線が届かないため固まりません。UVライトを20分照射してもベタつきが残りました。

今後UVレジンを使う際は、良ければ参考にして素材を選んでみてくださいね。

.シリコンの型にパーツを並べる
ここからは作業用テーブルへ移動し、学生トレーナーの元いよいよ作業スタート。

今回型に使ったのは、直径3cm、厚さ5mmの正円の型です。完成時の表面底側・上側どちらになるのか考えながら、選んだパーツを自由にレイアウトします。皆さん真剣になって爪楊枝やピンセットを使って慎重に並べていました。


.UVレジンを流す
並べ終わったら、UVレジンを流していきます。UVレジンは厚くなりすぎると紫外線が中までよく通らず、表面にベタつきが残ったり固まらない原因になるので8分目を目安に。注ぎ終わったら、パーツ同士の隙間に入ってしまった空気を爪楊枝で除いたり位置の微調整を行います。綺麗な完成を目指して思わず熱の入ってしまうところです。


.UVライトをあてて固める
今回使用したUVレジンは太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線の量ではすぐに固まりません。専用の機材であるUVライトで固めていきます。UVライトが青く光っている時が紫外線の出ている時です。

まず庫内に型を並べます。それから、表側から2分、シリコン型ごとひっくり返し裏側から2分計4分紫外線をあてていきます。天地を変えるのは紫外線をまんべんなく照射するためです。

固まるまでの待ち時間は、多摩美の話、素材の話、UVレジンの話……様々な話で盛り上がりました。


.型から取り出す
つい先程まで液状だったUVレジンが…カチカチに固まりました!UVレジンは固まる時に高温の熱を発生します。十分冷まして型から取り出しましょう。

 

.ピンをつける
最後に、UVレジンを接着剤代わりにピンバッジ用の金属パーツをつけていきます。そして、再度UVライトを2分あてて固まるのを待ちます。

 

.完成です!!!

ここで完成品をいくつかご紹介!
原料ビーズ発泡ビーズを使用した作品です。左側の作品は原料ビーズの透明感が生きています。右側は発泡ビーズを用いた作品で、乳白色の柔らかい色合いがかわいいです。

UVレジンの硬化時に発する熱で、よく見ると部分的にビーズが膨らみ色も白っぽくなっています。硬化前と後で起こるビーズの表情の変化を観察する参加者もいました。

こちらはメッシュを使った作品。言うまでもなくメッシュは空気を通すので、UVレジンを注いだ時に入ってしまう気泡の泡抜けが良かったです。また、UVライトを当てて硬化させる時にも、紫外線がメッシュの穴を通過するため硬化の防げになりません。UVレジンとの相性は抜群です。

ケミカルウッドを用いた作品です。硬さの違う3種類のケミカルウッドだけで作られたシンプルなバッジです。

オレンジ色のケミカルウッドは、彫刻刀やカッター簡単に削ることができます

それから、3Dプリンタ造形端材を大胆に使ったものです。立体的であえて思い切り飛び出させるのもおもしろいですね。

左はワックスコードに一手間を加えてリボン結びにしたものを封入しています。中央はケミカルウッドワックスコードを使い花のように見立てています。素材の組み合わせが面白いです。右は3Dプリンタの端材を短く切り使用しています。多数ある端材の中から選んだ色の組み合わせにセンスを感じます。

 

今年のワークショップでも、お子様から大人の方、学生や受験生、たくさんの方が体験に来てくださいました。聞いたことはあるけれど使ったことはなかった材料や初めて見た素材に、実際に触れて、つくってみて、ものづくりの楽しさを感じていただけたようです。今回参加できなかった皆さんも、ぜひ来年参加してみてください!