18 1月 

こんにちは、CMTELです。

今回は2018年11月13日(火)、14日(水)の二日間で開催したワークショップ、「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」の当日の様子をご紹介します。

株式会社JAM様(以下敬称略)より辰巳氏・武田氏を特別講師として迎え、シルクスクリーンキットSURIMACCAを用いて製版~プリントまでのプロセスを体験し、初めて触れる方にもシルクスクリーンの技法がより身近となる内容になりました。

また、今年は例年より紙・布用インクでのプリントをじっくり楽しめる構成にしました。

それではワークショップの流れを順に追っていきます。

講義1「孔版印刷(シルクスクリーン)とは」
はじめに講師の方々からシルクスクリーンの起源・変遷、そして版の構造と印刷の仕組みについての講義をしていただきました。(シルクスクリーンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)


シルクスクリーンは孔版印刷という印刷方法の一種。メッシュ状の版にインクが通る部分と通らない部分を作ることで、刷りたい図面をTシャツや紙、バッグにプリントすることができる印刷技術です。

SURIMACCAとデジタル製版機
シルクスクリーンで必要なのは(しゃ)とです。従来の方法で作ろうとすると、必要な機材や工程が多く技術が必要とされます。初心者からするとシルクスクリーンを始めるにはなかなか敷居が高いものでした。

そこで株式会社JAMが生み出したのが、冒頭で紹介したシルクスクリーンキット、SURIMACCAです。パーツとパーツを組み合わせることで枠の大きさを自由に変えられ、テクニックが必要な従来の紗張りの作業を格段にやりやすいものにしました。

講師が持っているフィルム状のものが紗です。デジタル製版機(画像内:赤いマシン)を用いることで、手軽に素早く版を出力することが出来ます。この製版機に図面のデータを送信することで、数分ほどで図面の部分だけインクが通るようフィルムに微細な穴を開ける仕組みになっています。

古くからある専用の薬剤を使った製版の方法を知っている参加者からは、あまりの簡単さとスピーディーさに驚きの声が。参加者には各自制作した版データを事前に提出してもらいました。本番ではオリジナルデザインの紗を使ったプリントができます。

準備「枠に紗を張ってみよう」
紗を、枠に張っていきます。今回はSサイズの枠(プリント範囲 19×19㎝)を使用。

張る時に使用するものは、キット付属のゴムチューブローラーです。チューブを枠の4辺にある溝へ押し込んでいきます。一辺ずつ、少しずつローラーでゴムを奥まで押し込むことで、満遍なく紗にテンションが加わり、ピンと張った状態で綺麗に張り上がります。

版の完成です。次はいよいよ刷る工程に入っていきます。

実習「実際にプリントしてみる」
講師のデモンストレーションを見て、プリント時のコツを理解します。ここではそのコツを4点ご紹介。

コツ①     スキージは図面の大きさに合わせたサイズを選ぶこと
付属のスキージは全ての辺でプリントができます。大きい図面の場合は長い辺を、小さいものは短い辺を使うと良いでしょう。

コツ②    スキージはしっかりと深くにぎり45度で動かす(布にプリントする場合)
インクを押し出す時に使用するスキージーは45度の角度で持ち、「ジー」と音がするくらいの力加減で上から下に均一な力で下ろしてきます。両手の指でスキージー全体を支えながら持つと、刷る時に力を満遍なく加えることが出来ます。なお、紙などインクを吸収しない素材に刷るときは、スキージの角度は60度にしましょう。

コツ③     インクは多めに使う
図面の幅をカバーできる量を紗の上にのせましょう。スキージを動かしている途中でインクが尽きてしまうとかすれの原因になります。

コツ④     版がズレないようにしっかり固定
版がズレないようにしっかり固定して刷ることが大事です。人の手を借りられる時は版の枠を押さえてもらうと、両手を使って安定して刷ることが出来ます。

刷り方のポイントを掴めたらインクを選んで実際に刷る作業に移ります。インクは全部で15色準備しました。たくさん種類があって迷います。

インクが選べたら同じテーブルの参加者や講師にサポートしてもらいながら刷っていきます。大きい図面をプリントする時は、枠がブレやすいので誰かのサポートが必須です。

「刷れた!」
作業が始まってしばらくすると、各テーブルから喜びの声が…!
ちなみにプリントするアイテムは各自持参しました。紙製の袋や封筒・ハガキ、布製のトートバックやハンカチ・靴下など様々なアイテムが揃いました。

刷った後、版をそのままにしておくとインクが固まって目詰まりを起こしてしまうので、裏側から濡れたウエスで優しく拭いてあげましょう。刷った後版の上に残ったインクは塊がなければ再度使えるので取っておくと無駄なく使えます。

紙等インクをあまり吸わない素材にプリントする場合はスキージの角度は60度で、少し立て気味で刷るとインクが滲まずに綺麗に刷れます。
こちらはオリジナルのフォントを紙にプリントしたもの。インクが出すぎて文字がつぶれたり、インクがかすれたり、何度もトライ&エラーを経て上手くいきました!スキージの角度60度が重要なポイントです。

初めてシルクスクリーンをする方も何度も回数を重ねて刷っていくと、テンポよく刷れるようになっていました。

色々なバリエーションの素材に印刷をした方や、ひたすら同じ素材にたくさんプリントをした方と、人によって取り組み方はそれぞれ。自分が用意したデザインの図面が実際に形になると、とても嬉しいですよね。トートバックを持ってきている方が多かったです。インクの種類によっては、仕上げにアイロンをかけて定着させる必要があるものもあります。

Tシャツやトレーナーなど衣服にもプリントできます。

中にはインク2色を同時にミックスさせて刷る実験を始める参加者も。赤と黄色を版の上に置きスキージで刷ると…

マーブル模様になりました。意図しないグラデーションや色の混ざり具合がきれいです。

ピンク×ブルーの同時刷りはグレイッシュな色合いに。

 

片付け
刷り終わった、又はインクの色を変える時は、版を水洗いしましょう。この時にスポンジの硬い材質の部分で洗ったり強い力でこすってしまうと、紗がダメージを受けてしまうので、柔らかいスポンジで水をかけながら優しく洗うよう心がけましょう。

もう版を使わない時は、枠の角の部分から紗をぐいっと押すと外すことができます。

小ワザ紹介
最後にプリントする際に役立つ小ワザをご紹介します。

今回のワークショップでは紗の印刷可能範囲(19×19㎝)にまるまる一つのデザインを配置する方もいれば、数種類のデザインを配置する参加者の方もいました。たとえば下図の(右)の様なレイアウトにすると、1つの紗から3通りのプリントが楽しめます。

ここで取り上げるのは後者で、いくつかある内の一つだけのデザインをプリントする場合は他の部分にインクが通らないようにマスキング※1しておく必要があります。マスキングをしやすくするため、それぞれのデザインの間隔を3、4センチ以上離しておくことをオススメします。
※1マスキングとは…色を塗らない部分に粘着テープなどを貼って予め保護すること。

刷りたいデザインの周りをマスキングテープで十字に囲みます。スキージは刷る図面の幅に応じて、持つ辺を替えましょう。

SURIMACCAのフレームの大きさは最小80×80〜最大200×450㎜にすることができます。パーツの組み合わせ次第でより大きい形や横長のデザインも刷れるのが魅力です。また、インクと版が数種類あれば多色刷りといったより多様なデザインも刷る事が出来ますよ。

「家で作業する場所がない!」といった方には株式会社JAMが設けている、その場で製版や印刷、素材・インクの購入ができるSURUTOCOというワークスペースもあります。品川にあるので気になった方、もっと刷ってみたいといった方は是非足を運んでみてください。

ここまで読んでくださりありがとうございます。今回のワークショップは二日間で全4回開催しました。残念ながら参加できなかった方々もまたの機会にぜひご参加ください。

※このワークショップは株式会社JAMにご協力いただきました。

07 1月 

こんにちは、CMTELです。10月1日(月)〜3日(水)に、「試作用素材サンプル 配布イベント」を開催しました。イベント当日は様々な学科の学生、245名が来館しました。

今回のイベントに限らず普段から、 CMTELでは、数々のマテリアルメーカーから提供された素材サンプルを、試作用に配布しています。 今回のイベントではその内の4社をピックアップさせていただき、ご提供いただいた素材サンプルを学生の皆さんに配布しました。(一部CMTELのストックしていた端材等も配布)

このブログでは、当日の様子に加え、配布した素材についてご紹介します。

【ご協力企業様とご提供素材】(以下順不同 敬称略)

●スエード調 人工皮革  Ultrasuede® (東レ株式会社)


Ultrasuede®は化学繊維でできており、「人工皮革」という布の種類に属します。表面は繊維が起毛されているため、本革スエードのような風合いと肌触りが特徴。ファッションはもちろん、インテリア車両デザインの分野でも使われています。優れたメンテナンス性や加工の自由度の高さも特徴の一つです。 (今回のイベントでは加工済みのウルトラスエードを配布。)

本革のスエードが3層で構成されているのと同様、Ultrasuede®も3層構造をしています。特に表層は超極細繊維で覆われ精密に起毛されているため、造り・外観ともに本革スエードとよく似ています。

フェルトの様に繊維が立体的に絡み合う「3次元不織構造」 をしているため、切りっぱなしでも ほつれません。Ultrasuede®を形成する、ポリエステル極細繊維は、全長 900kmの重さが1gにも満たない極細の繊維。 「ニードルパンチ」(多数の針がついた 剣山の様な道具で刺し、繊維同士を絡める 製法)という技法で作られています。 厚さのバリエーションは16種類以上(0.43~3.0mm)。 この技法でないと、厚い人工皮革を作ることはできません。

配布したスエード生地は穴あけ加工や、別のファブリックとの貼り合わせ加工など、様々なバリエーションの加工品揃い。カラーも豊富です。


●湿式ポリウレタンレザー (ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社)


合成皮革は織物やニットなどの生地(基布)にプラスチックの一種であるポリウレタン樹脂を塗布したもので柔軟性があります。合成皮革は製法によって湿式乾式に分類されますが、ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社は湿式法によりULTRALEATHER®を生産しています。

ULTRALEATHER®には大きく4つの特徴があります。
①しなやかな風合い
特殊な技術でしっとりと柔らかい質感を実現。用途は自動車や航空機の内装品、高級家具などです。表皮層と基布の間に存在する多孔質が特有の風合いを与えます。
②高い通気性
一般の合皮の抱える通気性がないという弱点をクリアし、通気性を確保。シート材として使用した時の汗によるベタつきを解消し、優れた吸音性も実現しました。
③高い防汚性
汚れが付きにくく、付着した汚れも簡単に拭き取ることが可能。メンテナンス性の高さも特徴。
④耐UV性能
屋外(スタジアムの座席等)での使用といった過酷な環境下でも、品質を長期間維持することが可能。色褪せや紫外線による劣化の問題を解決します。

配布された合成皮革を使って学生が作ったクラッチバッグ。作ってみた感想は以下の通りです。
・布地自体がとても柔らかくて、手縫いでも非常に縫いやすかった
・持っていてもべたつかずサラサラしていて肌触りが良い
・質感が上品な一方で、汚れにも強いので気を使わずに普段使いができる

こちらは合皮に刺繍を入れた立体作品。目・鼻・ヒレの色面をCMTELの刺繍ミシンで刺繍しました。合皮と刺繍糸の同系色同士の組み合わせです、テクスチャーの対比が面白いですね。一般的な合皮は厚くて硬いため、ミシンの針が折れてしまうのですが、この合皮では折れませんでした。「しなやかさ」「柔らかさ」がこの合皮にはあるためです。

ちなみにこの合皮には塩化ビニルは使われていないため、レーザー加工機でカットすることもできます。(レーザー加工機では塩化ビニルを含む素材は、加工できません)ぜひ色々な試作に活用してみてくださいね。


●立体3次元プラスチック PlaRain® (有限会社和晃プラスチック)


PlaRain®とは、プラスチックを糸状に射出し、複雑に絡み合わせて作られた、立体三次元プラスチック。ポリプロピレン・ポリエチレンを主原料に、特殊な製造方法で作られており、独特な模様をしています。 PlaRain®の開発には、水処理・浄化で用いられるフィルターを製造する技術が応用されています。通気性に富み水洗いもできるため、弾力のある製品は寝具の中にも使用されています。着色・抗菌加工・耐候性等の機能を付加することも可能です。

光を透過する
3次元に絡んだプラスチック繊維が光を拡散するため、光源を視覚的にやさしくする効果があります。密度の高さは製造時に調整できるため、視界を遮るような密度の製品はパーテーションに用いられるなど、インテリア素材としても活用されています。 形成する繊維の太さや、材質自体の柔らかさ、厚みを変えることで様々なバリエーションの製品が生まれます。熱溶着や、曲げ加工も可能。

今回配布したのは、シート状(厚さ2mm)・クッション状(厚さ30mm)の2種類。クッション状のPlaRain®がまさしく寝具の中に使われるために製造されたものだそうです。


●3Dプリント サポート (SOLIZE Products株式会社)

3Dプリントには様々な造形方法がありますが、今回配布したサポートは「光造形」という方式で作られたプリントの副産物(端材)です。光造形とは、紫外線で硬化(こうか)※する液体樹脂を利用し、断面形状を積み重ねることで、目的とする形状を作成する方法のことをいいます。

※硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。

光造形では、造形中にパーツを支えるために「サポート」と呼ばれる足場の役割をする形状が一緒に造形されます。

サポートはプリントされた本体から取り外しやすいように、本体と接する部分が細く作られているので手で簡単にちぎることができます

多くの学生にとって、サポートは見慣れない造形物です。造形の際に必然性から生み出される、意図しないサポートの造形美に驚く学生が多数見受けられました。

その他、CMTELで在庫していた端材や雑誌のバックナンバーなども配りました。

 

たくさんの素材を手に入れられて、「何を作ろう」とインスピレーションが湧いている様子の学生もたくさんいました。今回4社よりご提供いただいた素材は、市販では手に入れるのが難しいものばかりです。試作などでも構いませんので、何か制作した方はCMTELまでぜひフィードバックをお願いします。

今回のイベントで初めてCMTELに来たという学生も多くいました。これをきっかけに、今後素材に関してのリサーチや相談などの利用でもCMTELをご活用ください。なお今回のイベントに限らず、CMTELでは当大学の学生の皆さんにサンプル(少量)をいつも配布しています。どんなサンプルがあるかぜひ見に来てくださいね。

 

※今回のイベントは、下記企業様にご協力いただきました。
東レ株式会社

ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社
     

有限会社和晃プラスチック

SOLIZE Products株式会社

 


19 12月 

こんにちは、CMTELです。9月26日(水)に、マテリアルメーカーにお越しいただいての「マテリアル説明会」を開催しました。

今回は、スエード調人工皮革Ultrasuede®を製造している東レ株式会社(敬称略)をお招きしました。製品に関して詳細はこちらから(CMTELの過去のブログ記事

なおこの説明会は、卒業制作に取り組む生産デザイン学科の4年生・院2年生に対して、卒業制作への素材提供を前提とした取り組みの一環として開催しました。今回のブログ「前半」では、主に説明会の様子をレポート。3月以降には、実際の卒業制作作品を交えた「後半」をレポート予定です。


【開催概要】

●日 時:2018年9月26日(水)16:10開場 16:20~17:50
●場 所:八王子校舎 デザイン棟2F(7-213)プロダクトデザイン講義室A
●ご協力:東レ株式会社
●対 象:多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻・テキスタイルデザイン専攻の4年生・院2年生で卒業制作にてUltrasuede®を使う可能性がある学生、もしくは使用を検討したい学生
●ご注意:作業着での入室・飲食物の持ち込みはできません。
●申し込み方法:プロダクトデザイン研究室もしくはCMTELどちらかの記名表にご記入ください

【説明会の様子】
会社紹介とUltrasuede®製品説明
集まったのは、卒業制作にのぞむ学生12名(+お話だけでも聞きたいというプロダクトの他学年の学生も)。Ultrasuede®の特徴や歴史・製品への採用事例を、講義形式でご紹介いただきました。

靴やカバン、スツールの座面など、たくさんの加工サンプルが揃いました。

インテリア用に加工されたファブリックのハンガーサンプル、縫製された衣類も。

質疑応答
中には、実際に試作品を持参し見せながら相談をする学生や、担当者とお話しする中で自身の制作へのヒントを探る学生もいました。

【説明会後の流れ】
●1.試作用Ultrasuede®をCMTELヘリクエストする(10月初旬)
図面を描き、必要な「数量」「厚み」をリクエストします。説明会に参加した学生のうち、5名がリクエストをしました。色々なスケッチが集まりました、どんな作品が生まれるのか楽しみです。

●2.試作用Ultrasuede®が届く(10月中旬)
約10日間が試作期間。レーザー加工機でのカットや、細く切ったUltrasuede®をファブリック状に織る実験、ミシンで縫い合わせた時の厚みの検証など、多様な試みをそれぞれが行います。また、他の素材との組み合わせや、色の検証を行いました。

●3.本制作用Ultrasuede®をCMTELヘリクエストする(10月下旬)
2.の検証結果を踏まえて、「数量」「厚み」「色」を指定します。最終的に参加者は4名(テキスタイル専攻4年1名、プロダクト専攻4年3名)となりました。

●4.本制作用Ultrasuede®が届く(11月初旬)
ここから講評会までの期間で本制作を行います。衣類や、カバン、玩具、家具など、制作するアイテムは様々です。みなさん頑張ってください!

 

これ以降のレポート「後半」3月以降にUP予定です。実際に学生の作品を交えたレポートになる予定ですので、続きをどうぞお楽しみに。

 

※今回のイベントは、下記企業様にご協力いただきました。
東レ株式会社

14 12月 

こんにちは。2018年7月14日(土)、15日(日)のオープンキャンパスにて「マテリアルワークショップ~アクセサリーバッジをつくろう!~」を開催しました。2日間で合計227名の方にご参加いただきました。

このワークショップは、下の画像左の水溶性樹脂造形材料ジェスモナイト(AC100)といろいろな素材を組み合わせ、アクセサリーバッジをつくるというものでした。今回のブログでは当日の様子に加え、後半ではジェスモナイトと異素材をデコレーションする時のポイント2つをご紹介します。

ジェスモナイトとは有機溶剤など有害な物質を含まない、身体と環境にやさしい水性樹脂のこと。下のような特徴があります。

①安全性と作業性の良さ
(有機溶剤を含まないので防毒マスクは不要。匂いもアクリル絵具程度で硬化(こうか)※は15分程度と短い。水性のため道具は水洗い可能。)
②発色性、質感の高さ
(写真右に写っている蛍光着色剤の発色はかなり高く、ごく少量で着色可能。質感は石膏や陶器のようにマット。)
③軽量で頑丈
④成形のバリエーションが豊富
(注型(ちゅうけい)※、塗布、盛り・削り、やすり、スプレーガンでの噴射が可能)

使用例としては、彫刻・アート作品・考古学モデル・映画撮影セット・アクセサリー・家具・内装・建築など幅広いクリエイティブの場で使用されています。詳細はこちらからどうぞ。

※硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。
※注型とは…型に材料(樹脂等)を流し込み固化させた後、型を外して製品を作る方法。

当日は、樹脂の取り扱いに長けた学生インストラクターが各作業テーブルについてレクチャーを行いました。
では実際どのようなワークショップを行なっていたのか、ご紹介します!

.素材を選ぶ
台の上に並べられた素材の中から好きなパーツを選びます。

アルファベットや動物の形をしたパスタや、

CMTELにある3Dプリンターでプリントした造形物。「CMTEL」のロゴになっています。ちなみにこの造形物に使われた材料のプラスチックは、ポリ乳酸というトウモロコシ由来のデンプンから作られています。

こちらは「サポート材」「ラフト」と呼ばれる、3Dプリント造形物時に作られる端材。日頃CMTELで3Dプリンタを使っている学生のみなさんから、不要な端材を提供してもらいました。プリンタが自動計算で作り出す端材には、意図しない造形美があります。

ちなみに、3Dプリンタのデモンストレーションも館内で行いました。3Dプリンタの動く様子に見入る来場者の方の姿も。

こちらは、ワックスコードを短くカットしたもの。

この他にも、CMTELならではの特殊な素材もありました。その中から珍しい素材をいくつかご紹介します。

「スチレンビーズ」(協力 積水化成品工業株式会社様)
画像左側は、発泡スチロールの原材料”原料ビーズ”(ポリスチレンの粒)です。およそ0.4mmほどのビーズの中には発泡材のガスが含まれています。蒸気をあて加熱させることで50倍以上に膨らみます。向かって右側は原料ビーズを予備発泡させた“発泡ビーズ”です。

生鮮食料品用の保冷梱包材緩衝材に加工された後の姿はお馴染みですね。

今回は原料ビーズ、発泡ビーズの両方を揃えました。原料ビーズの段階ではビビットな色半透明ですが、発泡ビーズになると乳白色・不透明色になります。日常生活では見ることのできない、身の回りの物の元の姿に驚きです。

「メッシュ」(協力 株式会社NBCメッシュテック様)
網戸やふるいをはじめ、家電製品や自動車内のフィルター音響機器のスピーカー部材など日常生活のあらゆるところで幅広く使われています。普段目につきづらいところで活躍することの多いメッシュですが、よく見ると色や目の大きさに様々なバリエーションがあります。

今回は4種類のメッシュをレーザー加工機でカットしたパーツを準備しました。暗い所で光る蓄光(ちっこう)繊維を織り込んだものや、蛍光ピンクのメッシュは靴や鞄の試作品に使われているもの、撥水加工されているものなど種類が豊富です。

「ケミカルウッド」(協力 株式会社ミナロ様)
加工性や環境性に優れた、樹脂でできた言葉通り人工の木材です。木のように木目がなく繊維の方向を気にせず加工ができ、色で硬度が分かれているので用途に合わせて選ぶこともできます。また、着色性にも富んでいるので模型フィギュアの製作でも多く使われています。ものづくりの可能性を広げる使い勝手のよい素材です。多摩美生もよくお世話になっています。

.作業テーブルへ移動
学生トレーナーの元いよいよ作業スタート。小さなお子さんも沢山参加いただきました。

今回型に使ったのは、直径3cm、厚さ5mmの正円の型です。

.ジェスモナイトのリキッドとベースを混ぜる
予めピンク・ブルー・イエローに着色されたジェスモナイトのリキッドから好きな色を選択。

そこにベースといわれる粉状の材料を入れ、むらの無いようよく混ぜます。(リキッドとベースの重量比率は1:2.5なので、今回リキッドは4gベースは10gを計量)

混ぜ始めは粉っぽさが目立ちますが、混ぜ続けるとなめらかなクリーム状になっていきます。ここで3分程頑張って混ぜましょう!攪拌(かくはん)※が足りないと、完成した後に色がまだらになってしまうためです。
※攪拌とは…かき混ぜること

4.型に流す
混ぜた棒でかき出し、シリコンの型に流し入れます。

5.デコレーション
上からパーツをデコレーションしていきます。ジェスモナイトは15分程で固まります、そのうちデコレーションができる時間は2〜3分程と限られています。それ以上デコレーションを続けると表面がデコボコに…。完成をしっかりイメージしておくことが大切です。

デコレーションのポイント①
ジェスモナイトの厚みが薄くなってしまうと、この後型から外す時に割れてしまいます。パーツを沢山デコレーションする時は、ジェスモナイトの厚さが2mm以下になってしまわないよう、気をつけましょう。今回使用した型の深さは3mmと浅いため、型に注いだ後のジェスモナイトの中に沢山パーツを封入してしまうと、薄い部分が多くなり強度が落ちます

デコレーションのポイント②
重たいパーツ2分程経ってから乗せましょう。金属でできたものや、比重の大きいパーツは、早く乗せるとジェスモナイトの中に沈んでいって見えなくなってしまいます。

みなさん頭の中のイメージをどんどん形にしていきます。ピンセットや爪楊枝を使うとデコレーションがしやすいです。

6.固まるのを15分待つ
固まるまでの待ち時間は学生トレーナーへの質問タイムに。多摩美での学生生活についてや、志望する学科の話、受験のこと……様々な話で盛り上がりました。

CMTELの展示素材を見学する方もいらっしゃいました。

7.型から取り出す
つい先程まで液状だったジェスモナイトが…カチカチに固まりました!質感は石膏や陶器のようマットで、しっとりとしています。固まる時に少し熱が発生しますが、手で触っても問題なくほんのり温かい程度。

8.ピンをつける
最後に、裏側の面に瞬間接着剤でピンバッジ用の金属パーツをつけていきます。

9.完成!
ここで完成品をいくつかご紹介!
発泡ビーズ3Dプリント造形物を使用した作品。発泡ビーズはジェスモナイトに乗せるだけだと接着が十分ではないので、乗せた後に爪楊枝などで少し押すとしっかりとくっつきます。エメラルドグリーンと水色の淡い色の組み合わせがきれいですね。

こちらは3Dプリント端材、ワックスコードを使った作品。立体的で存在感のあるバッジが続々とできていきます。

グレーのパーツはケミカルウッド、ピンク色のメッシュワックスコードの組み合わせです。

アルファベット型のパスタをメインに、様々なパーツも盛り込んだ作品です。

個性あふれるバッジの数々が2日間で完成しました!

今年のワークショップでも、お子様から大人の方、学生や受験生、たくさんの方が体験をしました。樹脂に触れたことのない初心者の方はもちろん、樹脂に親しみのあるユーザーも、ジェスモナイトの使いやすさに驚いていました。完成したバッジは、みなさん早速身につけてお帰りになっていました!

 

多摩美の学生が普段製作に使用している材料や、珍しい素材に実際に触れて、ものづくりを楽しんでいただけたようです。次回のオープンキャンパスのワークショップも、ぜひお楽しみに!

04 10月 

こんにちはCMTELです。2018年6月14日(木)に開催した透明樹脂を用いた樹脂成形ワークショップ、「透明樹脂(クリスタルレジン)を始めよう!」のレポート記事です。記事の後半では粘度のあるレジンを使う際に、一手間でクオリティがグッと上がる小ワザをご紹介します。

今回のワークショップは日新レジン株式会社様にご協力をいただきました。

使用した樹脂のご紹介
今回のワークショップでは高い透明度が魅力の透明樹脂、クリスタルレジンを扱う内容に挑戦しました。

クリスタルレジンとは主剤硬化剤の2液性の注型用(ちゅうけい)※1エポキシ樹脂で、数ある樹脂の中で透明度が高く低粘度で泡抜けに優れた樹脂です。そのため、素材封入(ふうにゅう)にもってこいの材料です。
こちらの商品は大学内の画材店でも取り扱われています。

※1 注型とは…型に材料(樹脂等)を流し込み固化させた後、型を外して製品を作る方法。

ワークショップは2部構成。まず、「素材封入(ふうにゅう)」に関しての講義・実習、次に「樹脂の着色」についての講義・実習を行いました。

 


●講義1「エポキシ樹脂の性質と扱い方」
はじめに日新レジン株式会社の講師の方々から樹脂の性質、取り扱いの講義を受けます。

デモンストレーションを交えながら講師の方々はとても分かりやすく樹脂についてのお話をしてくださいました。

●実習1「素材の封入」
樹脂の扱い方を理解したら各自テーブルに移動し、実習に移ります。

一つ目の実習として、学生の皆さんがそれぞれ用意してきた素材を樹脂に封入していきます。あらかじめ1層の硬化(こうか)※2 済みの樹脂の上から、素材と2層目の樹脂を流し込み硬化させ、最後に3層目を流すというプロセスです。
※2 硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。

トレーナーからの説明をよく聞き、2種類の樹脂を計量し攪拌(かくはん)※3していきます。攪拌が完了したら、樹脂を型に流し入れ、素材を配置します。
※3 攪拌(かくはん)とは…かき混ぜること


思うところに配置ができたら2層目の樹脂を流し、さらにその後3層目を流していきます。

●完成
24時間経ち完全に硬化したら、樹脂を型から取り外します。3層構造で作ったことにより、奥行きが生まれ素材と素材の重なりが豊かなものになりました。また、型に丸みがついているので、角度によって素材の見え方が変化します。レンズのような効果が生まれ、素材の形が湾曲して見える点も面白いです。


●講義2「透明樹脂の着色」
クリスタルレジンは透明着色剤のNRクリアカラーを使用することで、透明に鮮やかな色をつけることが可能です。4色の着色剤の混合比率を変えると作れる色の幅も広がります。



●実習2「透明着色剤の混合」
色見本を見ながら自分が作りたい色に調色していきます。


着色ができたら硬化剤と合わせ攪拌し、配布されたシリコン型にゆっくりと流して硬化させます。

●完成
みなさんそれぞれとてもカラフルな色になりました。


調色は、鮮やかさを保ちたい場合には2色程度がお勧めです。色数を増やすと、落ち着いた渋い色味も出すことができます。


ワークショップの概要は以上となりますが、ここで学生のみなさんの作品ををもう少し見ていきましょう。

●作品のご紹介
出来上がった成果物をみると、みなさん様々な試みをしています。中では、お菓子などグミをいれた実験的なもの、おもちゃなど小さなミニチュアを封入したものなど、素材ごとに違う面白い表情が出ていました。





●小ワザ紹介「粘度のあるレジンの泡抜けをよくするには?」

最後に、クリスタルレジンを扱う上でクオリティを上げるためのちょっとした小ワザのご紹介。気温の低い時期にクリスタルレジンを使う方は必見です。

記事の文頭でお話しした通り、クリスタルレジンは主剤硬化剤を混ぜ、攪拌することで硬化する2液性の樹脂です。低粘度ではありますが主剤は常温だと粘り気が高く、はちみつ程度にとろとろしています。攪拌や着色時に慎重に扱っても気泡が入りやすくなっています。

泡が残ると、仕上がりの見栄えにも影響が出てくるため、注型する前は出来るだけ気泡が無い状態にしておきたいところです。

そこで、前準備として大事なことは、あらかじめ主剤と硬化剤を50~60℃程度に温めておくこと。温めることで常温のものより段違いに粘度が下がりサラサラになります。計量時や攪拌時、硬化時に巻き込んでしまう気泡の量を極力抑えることができます。

温めるのに用意するものは、密閉できるチャック袋2枚耐熱ボウル。袋を2重にして、その中に主剤・硬化剤の缶を入れます。(袋に入れることで缶内に水が混ざってしまったり、容器の缶が錆びてしまうことを防ぎます。)
次にチャックを閉めお湯を張った耐熱性のボールでゆっくり湯煎にかけます。※お湯の取り扱い時にはヤケドに気をつけましょう。

温まったらやけどに注意しながら、タオルなどを介して袋から缶を出し使用します。

少し手間がかかる作業ではありますがこの行程を踏むことで仕上がりが目に見えて変わるので、これから透明樹脂を扱う方、気泡に悩んでいる方は試してみてください。

 

ここまで読んでくださりありがとうございました、今回のワークショップは全2回でどちらも満席となりました、残念ながら参加できなかった方々もまたの機会にぜひご参加ください。

 

※このワークショップは日新レジン株式会社様にご協力いただきました。