31 1月 

こんにちは、CMTELです。今回は、2018年11月26日(月)に開催した「マテリアル説明会」のイベントレポートです。

今回は、ステンレスメッシュを製造しているアサダメッシュ株式会社様(以下敬称略)をお招きしました。極細のステンレス繊維で織られたメッシュは、オーガンジーの様に薄く柔らかくしなやかで、従来の金属のイメージを覆すような存在感です。光との相性も良く、メッシュ越しに光源を見るとプリズムが起こるのも特徴。本来の用途は、フィルターやふるいですが、インスピレーションを刺激する興味深いマテリアルです。

会場ではステンレスメッシュを使った照明「QUARTZ LAMP」や、種類豊富なメッシュを展示。メーカーのご担当者だからこそ知る、製造のプロセスや専門的知識を直接伺える貴重な機会となりました。

【開催概要】

●日 時:2018年11月26日(月)16:20~17:20
●場 所:八王子校舎 メディアセンター2F CMTEL
●ご協力:アサダメッシュ株式会社 林氏 熊田氏
●対 象:多摩美術大学 全学部学科学生

【説明会の様子】
ステンレスとは?
「ステンレス」とは、Stainless Steel(錆びない・錆びにくい鋼)という意味。鉄を主成分(50%以上)とし、クロムを10.5%以上含む錆びにくい合金。耐食性・耐熱性・加工性・強度に優れています。

アサダメッシュ株式会社では、極細の金属線を用いた様々な細かさの織物を製造しています。その中でももっとも細かいものは「977メッシュ」。世界で一番細かいメッシュとされています。(メッシュ数は細かくなればなるほど数字が大きくなります。茶こしが30メッシュなので、いかに細かいかがわかりますね)

977メッシュがどの位の細かさかというと、1cmの幅の中に髪の毛の1/6の太さのステンレスの糸が384本入っているということになります。とてもミクロなスケールで精巧に織られたメッシュですね。ちなみに、これほど細い繊維を織るにはやはり手間も時間もかかります。製品の中には、24時間かけて織っても50cmしか織れないようなメッシュ(1×1mあたりの価格約60万円程度)もあるのだそう…。

ステンレスメッシュの用途
主に3つの用途で使われています。

①スクリーン印刷
Tシャツや紙への印刷で用いられるシルクスクリーン※と同じ仕組みを用いて、電子部品(積層セラミックコンデンサー)や太陽電池、タッチパネルの印刷にステンレスメッシュが使われています(ステンレスメッシュ自体が部品になるわけではなく、部品を作る印刷の資材として)。

電子部品においては、導電性のインクをプリントし、電子回路などを作ることがあるのですが、プリントが少しでもにじんでしまうと製品にはなりません。また、ステンレスの繊維は伸びないので、印刷精度が高いのも電子部品の印刷に用いられる大きな理由の一つです。
※シルクスクリーンとは…印刷技法の一種。メッシュ状の版に孔(あな)をつくり、孔の部分にのみインクを通してプリントをする方法。

②ふるい
様々な粉のふるい分けにもメッシュは使われています。インクが粉状になっている「トナー式」と呼ばれるレーザープリンターのインクも、ふるいにかけられ、粒子の細かさを均一にするプロセスを経て製品となります。

③フィルターでの濾過(ろか)
船舶や車両の中のフィルターとしてステンレスメッシュが使われています。製造後のこまめなフィルター交換が難しい工業製品において、ステンレスメッシュの高い耐食性・強度が有用とされています。

ステンレスメッシュの特徴
・均一に穴が開いている
・水、光、空気が通る(=音が通る)
・耐食性がある
・強度がある
・不燃
・溶接が可能(荒いメッシュの場合)
・導電性がある

これに加えて、アサダメッシュ株式会社製品の特徴は以下の通りです。
・軽い
・薄い
・箔のような光沢がある
・オーガンジーのように柔らかい

ステンレスメッシュのメリット・デメリット
メリット

①縫うことができる
ステンレス繊維を薄いシート状に広げ、その上からミシンステッチをかけてシートの形状をキープしています。これ以外にも舞台衣装の素材として、ステンレスメッシュが採用されたことがあるそうです。

②折り紙のように折り目を作ることができる
手で簡単に折り目もつけられます。

③ハサミなどで簡単にカットができる
薄いコピー用紙を切る程度の握力で、簡単にカットが可能です。

④メッシュ越しに光源を見るとプリズムが起きる
ナイロンやポリエチレンなどのメッシュでは起きないのですが、ステンレスのメッシュを通して光を見ると、光が虹色に拡散します。説明会の中では、光源をメッシュ越しに覗く実験も行われました。プリズムの起きている状況が写真では捉えられないのでここには載せていません、気になる方はCMTELでぜひご覧くださいね。

デメリット
①鋭利なものが刺さると裂ける
テンションをかければ、端から手でも裂くことができます。あえて手で裂くことを前提にしたパッケージなど、紙やフィルムの代わりに使用すると面白い作品ができそうです。

②一度跡がついたら取れない(シワになりやすい)
手で伸ばしてもフラットには戻りませんが、くしゃくしゃのメッシュに入ったハイライトも魅力的です。

③何度も折り曲げたりすると金属疲労を起こす

④裁ち落としした部分の繊維が刺さりやすい
繊維自体の太さが大きくなってくると、端に出た繊維が多少チクチクします。

サンプルに触れながらのQ&Aタイム
プロジェクターを使って、メッシュに光を当てる実験を始める参加者も。

メッシュに光を当ててみると、映像は投影されつつ、メッシュの裏側にある物にも透けて二重に映し出されました。光を通すメッシュならではの面白い現象が見られました。また、ステンレスメッシュは水に強いため、屋外の投影での雨の心配がありません。

ブースに展示された様々な細かさのメッシュを手で触って見る学生たち。普段CMTELには置いていないものもご用意いただきました。

ステンレスメッシュをシェードとして用いたQUARTZ LAMP。写真では伝わりづらいのですが、中の光源が乱反射することで複雑な視覚効果を生みます。

今回の説明会でインスピレーションを受け、素材への探究心が刺激された学生もいたようです。学生たちの制作にどのような新たなアイデアが湧き出るかとても楽しみです。

アサダメッシュ株式会社のステンレスメッシュはCMTELにて展示をしており、実際に素材に触ることもできます。今回参加できなかった方もぜひCMTELに足をお運びください。

※今回のイベントは、下記企業様にご協力いただきました。
アサダメッシュ株式会社

18 1月 

こんにちは、CMTELです。

今回は2018年11月13日(火)、14日(水)の二日間で開催したワークショップ、「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」の当日の様子をご紹介します。

株式会社JAM様(以下敬称略)より辰巳氏・武田氏を特別講師として迎え、シルクスクリーンキットSURIMACCAを用いて製版~プリントまでのプロセスを体験し、初めて触れる方にもシルクスクリーンの技法がより身近となる内容になりました。

また、今年は例年より紙・布用インクでのプリントをじっくり楽しめる構成にしました。

それではワークショップの流れを順に追っていきます。

講義1「孔版印刷(シルクスクリーン)とは」
はじめに講師の方々からシルクスクリーンの起源・変遷、そして版の構造と印刷の仕組みについての講義をしていただきました。(シルクスクリーンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)


シルクスクリーンは孔版印刷という印刷方法の一種。メッシュ状の版にインクが通る部分と通らない部分を作ることで、刷りたい図面をTシャツや紙、バッグにプリントすることができる印刷技術です。

SURIMACCAとデジタル製版機
シルクスクリーンで必要なのは(しゃ)とです。従来の方法で作ろうとすると、必要な機材や工程が多く技術が必要とされます。初心者からするとシルクスクリーンを始めるにはなかなか敷居が高いものでした。

そこで株式会社JAMが生み出したのが、冒頭で紹介したシルクスクリーンキット、SURIMACCAです。パーツとパーツを組み合わせることで枠の大きさを自由に変えられ、テクニックが必要な従来の紗張りの作業を格段にやりやすいものにしました。

講師が持っているフィルム状のものが紗です。デジタル製版機(画像内:赤いマシン)を用いることで、手軽に素早く版を出力することが出来ます。この製版機に図面のデータを送信することで、数分ほどで図面の部分だけインクが通るようフィルムに微細な穴を開ける仕組みになっています。

古くからある専用の薬剤を使った製版の方法を知っている参加者からは、あまりの簡単さとスピーディーさに驚きの声が。参加者には各自制作した版データを事前に提出してもらいました。本番ではオリジナルデザインの紗を使ったプリントができます。

準備「枠に紗を張ってみよう」
紗を、枠に張っていきます。今回はSサイズの枠(プリント範囲 19×19㎝)を使用。

張る時に使用するものは、キット付属のゴムチューブローラーです。チューブを枠の4辺にある溝へ押し込んでいきます。一辺ずつ、少しずつローラーでゴムを奥まで押し込むことで、満遍なく紗にテンションが加わり、ピンと張った状態で綺麗に張り上がります。

版の完成です。次はいよいよ刷る工程に入っていきます。

実習「実際にプリントしてみる」
講師のデモンストレーションを見て、プリント時のコツを理解します。ここではそのコツを4点ご紹介。

コツ①     スキージは図面の大きさに合わせたサイズを選ぶこと
付属のスキージは全ての辺でプリントができます。大きい図面の場合は長い辺を、小さいものは短い辺を使うと良いでしょう。

コツ②    スキージはしっかりと深くにぎり45度で動かす(布にプリントする場合)
インクを押し出す時に使用するスキージーは45度の角度で持ち、「ジー」と音がするくらいの力加減で上から下に均一な力で下ろしてきます。両手の指でスキージー全体を支えながら持つと、刷る時に力を満遍なく加えることが出来ます。なお、紙などインクを吸収しない素材に刷るときは、スキージの角度は60度にしましょう。

コツ③     インクは多めに使う
図面の幅をカバーできる量を紗の上にのせましょう。スキージを動かしている途中でインクが尽きてしまうとかすれの原因になります。

コツ④     版がズレないようにしっかり固定
版がズレないようにしっかり固定して刷ることが大事です。人の手を借りられる時は版の枠を押さえてもらうと、両手を使って安定して刷ることが出来ます。

刷り方のポイントを掴めたらインクを選んで実際に刷る作業に移ります。インクは全部で15色準備しました。たくさん種類があって迷います。

インクが選べたら同じテーブルの参加者や講師にサポートしてもらいながら刷っていきます。大きい図面をプリントする時は、枠がブレやすいので誰かのサポートが必須です。

「刷れた!」
作業が始まってしばらくすると、各テーブルから喜びの声が…!
ちなみにプリントするアイテムは各自持参しました。紙製の袋や封筒・ハガキ、布製のトートバックやハンカチ・靴下など様々なアイテムが揃いました。

刷った後、版をそのままにしておくとインクが固まって目詰まりを起こしてしまうので、裏側から濡れたウエスで優しく拭いてあげましょう。刷った後版の上に残ったインクは塊がなければ再度使えるので取っておくと無駄なく使えます。

紙等インクをあまり吸わない素材にプリントする場合はスキージの角度は60度で、少し立て気味で刷るとインクが滲まずに綺麗に刷れます。
こちらはオリジナルのフォントを紙にプリントしたもの。インクが出すぎて文字がつぶれたり、インクがかすれたり、何度もトライ&エラーを経て上手くいきました!スキージの角度60度が重要なポイントです。

初めてシルクスクリーンをする方も何度も回数を重ねて刷っていくと、テンポよく刷れるようになっていました。

色々なバリエーションの素材に印刷をした方や、ひたすら同じ素材にたくさんプリントをした方と、人によって取り組み方はそれぞれ。自分が用意したデザインの図面が実際に形になると、とても嬉しいですよね。トートバックを持ってきている方が多かったです。インクの種類によっては、仕上げにアイロンをかけて定着させる必要があるものもあります。

Tシャツやトレーナーなど衣服にもプリントできます。

中にはインク2色を同時にミックスさせて刷る実験を始める参加者も。赤と黄色を版の上に置きスキージで刷ると…

マーブル模様になりました。意図しないグラデーションや色の混ざり具合がきれいです。

ピンク×ブルーの同時刷りはグレイッシュな色合いに。

 

片付け
刷り終わった、又はインクの色を変える時は、版を水洗いしましょう。この時にスポンジの硬い材質の部分で洗ったり強い力でこすってしまうと、紗がダメージを受けてしまうので、柔らかいスポンジで水をかけながら優しく洗うよう心がけましょう。

もう版を使わない時は、枠の角の部分から紗をぐいっと押すと外すことができます。

小ワザ紹介
最後にプリントする際に役立つ小ワザをご紹介します。

今回のワークショップでは紗の印刷可能範囲(19×19㎝)にまるまる一つのデザインを配置する方もいれば、数種類のデザインを配置する参加者の方もいました。たとえば下図の(右)の様なレイアウトにすると、1つの紗から3通りのプリントが楽しめます。

ここで取り上げるのは後者で、いくつかある内の一つだけのデザインをプリントする場合は他の部分にインクが通らないようにマスキング※1しておく必要があります。マスキングをしやすくするため、それぞれのデザインの間隔を3、4センチ以上離しておくことをオススメします。
※1マスキングとは…色を塗らない部分に粘着テープなどを貼って予め保護すること。

刷りたいデザインの周りをマスキングテープで十字に囲みます。スキージは刷る図面の幅に応じて、持つ辺を替えましょう。

SURIMACCAのフレームの大きさは最小80×80〜最大200×450㎜にすることができます。パーツの組み合わせ次第でより大きい形や横長のデザインも刷れるのが魅力です。また、インクと版が数種類あれば多色刷りといったより多様なデザインも刷る事が出来ますよ。

「家で作業する場所がない!」といった方には株式会社JAMが設けている、その場で製版や印刷、素材・インクの購入ができるSURUTOCOというワークスペースもあります。品川にあるので気になった方、もっと刷ってみたいといった方は是非足を運んでみてください。

ここまで読んでくださりありがとうございます。今回のワークショップは二日間で全4回開催しました。残念ながら参加できなかった方々もまたの機会にぜひご参加ください。

※このワークショップは株式会社JAMにご協力いただきました。

07 1月 

こんにちは、CMTELです。10月1日(月)〜3日(水)に、「試作用素材サンプル 配布イベント」を開催しました。イベント当日は様々な学科の学生、245名が来館しました。

今回のイベントに限らず普段から、 CMTELでは、数々のマテリアルメーカーから提供された素材サンプルを、試作用に配布しています。 今回のイベントではその内の4社をピックアップさせていただき、ご提供いただいた素材サンプルを学生の皆さんに配布しました。(一部CMTELのストックしていた端材等も配布)

このブログでは、当日の様子に加え、配布した素材についてご紹介します。

【ご協力企業様とご提供素材】(以下順不同 敬称略)

●スエード調 人工皮革  Ultrasuede® (東レ株式会社)


Ultrasuede®は化学繊維でできており、「人工皮革」という布の種類に属します。表面は繊維が起毛されているため、本革スエードのような風合いと肌触りが特徴。ファッションはもちろん、インテリア車両デザインの分野でも使われています。優れたメンテナンス性や加工の自由度の高さも特徴の一つです。 (今回のイベントでは加工済みのウルトラスエードを配布。)

本革のスエードが3層で構成されているのと同様、Ultrasuede®も3層構造をしています。特に表層は超極細繊維で覆われ精密に起毛されているため、造り・外観ともに本革スエードとよく似ています。

フェルトの様に繊維が立体的に絡み合う「3次元不織構造」 をしているため、切りっぱなしでも ほつれません。Ultrasuede®を形成する、ポリエステル極細繊維は、全長 900kmの重さが1gにも満たない極細の繊維。 「ニードルパンチ」(多数の針がついた 剣山の様な道具で刺し、繊維同士を絡める 製法)という技法で作られています。 厚さのバリエーションは16種類以上(0.43~3.0mm)。 この技法でないと、厚い人工皮革を作ることはできません。

配布したスエード生地は穴あけ加工や、別のファブリックとの貼り合わせ加工など、様々なバリエーションの加工品揃い。カラーも豊富です。


●湿式ポリウレタンレザー (ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社)


合成皮革は織物やニットなどの生地(基布)にプラスチックの一種であるポリウレタン樹脂を塗布したもので柔軟性があります。合成皮革は製法によって湿式乾式に分類されますが、ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社は湿式法によりULTRALEATHER®を生産しています。

ULTRALEATHER®には大きく4つの特徴があります。
①しなやかな風合い
特殊な技術でしっとりと柔らかい質感を実現。用途は自動車や航空機の内装品、高級家具などです。表皮層と基布の間に存在する多孔質が特有の風合いを与えます。
②高い通気性
一般の合皮の抱える通気性がないという弱点をクリアし、通気性を確保。シート材として使用した時の汗によるベタつきを解消し、優れた吸音性も実現しました。
③高い防汚性
汚れが付きにくく、付着した汚れも簡単に拭き取ることが可能。メンテナンス性の高さも特徴。
④耐UV性能
屋外(スタジアムの座席等)での使用といった過酷な環境下でも、品質を長期間維持することが可能。色褪せや紫外線による劣化の問題を解決します。

配布された合成皮革を使って学生が作ったクラッチバッグ。作ってみた感想は以下の通りです。
・布地自体がとても柔らかくて、手縫いでも非常に縫いやすかった
・持っていてもべたつかずサラサラしていて肌触りが良い
・質感が上品な一方で、汚れにも強いので気を使わずに普段使いができる

こちらは合皮に刺繍を入れた立体作品。目・鼻・ヒレの色面をCMTELの刺繍ミシンで刺繍しました。合皮と刺繍糸の同系色同士の組み合わせです、テクスチャーの対比が面白いですね。一般的な合皮は厚くて硬いため、ミシンの針が折れてしまうのですが、この合皮では折れませんでした。「しなやかさ」「柔らかさ」がこの合皮にはあるためです。

ちなみにこの合皮には塩化ビニルは使われていないため、レーザー加工機でカットすることもできます。(レーザー加工機では塩化ビニルを含む素材は、加工できません)ぜひ色々な試作に活用してみてくださいね。


●立体3次元プラスチック PlaRain® (有限会社和晃プラスチック)


PlaRain®とは、プラスチックを糸状に射出し、複雑に絡み合わせて作られた、立体三次元プラスチック。ポリプロピレン・ポリエチレンを主原料に、特殊な製造方法で作られており、独特な模様をしています。 PlaRain®の開発には、水処理・浄化で用いられるフィルターを製造する技術が応用されています。通気性に富み水洗いもできるため、弾力のある製品は寝具の中にも使用されています。着色・抗菌加工・耐候性等の機能を付加することも可能です。

光を透過する
3次元に絡んだプラスチック繊維が光を拡散するため、光源を視覚的にやさしくする効果があります。密度の高さは製造時に調整できるため、視界を遮るような密度の製品はパーテーションに用いられるなど、インテリア素材としても活用されています。 形成する繊維の太さや、材質自体の柔らかさ、厚みを変えることで様々なバリエーションの製品が生まれます。熱溶着や、曲げ加工も可能。

今回配布したのは、シート状(厚さ2mm)・クッション状(厚さ30mm)の2種類。クッション状のPlaRain®がまさしく寝具の中に使われるために製造されたものだそうです。


●3Dプリント サポート (SOLIZE Products株式会社)

3Dプリントには様々な造形方法がありますが、今回配布したサポートは「光造形」という方式で作られたプリントの副産物(端材)です。光造形とは、紫外線で硬化(こうか)※する液体樹脂を利用し、断面形状を積み重ねることで、目的とする形状を作成する方法のことをいいます。

※硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。

光造形では、造形中にパーツを支えるために「サポート」と呼ばれる足場の役割をする形状が一緒に造形されます。

サポートはプリントされた本体から取り外しやすいように、本体と接する部分が細く作られているので手で簡単にちぎることができます

多くの学生にとって、サポートは見慣れない造形物です。造形の際に必然性から生み出される、意図しないサポートの造形美に驚く学生が多数見受けられました。

その他、CMTELで在庫していた端材や雑誌のバックナンバーなども配りました。

 

たくさんの素材を手に入れられて、「何を作ろう」とインスピレーションが湧いている様子の学生もたくさんいました。今回4社よりご提供いただいた素材は、市販では手に入れるのが難しいものばかりです。試作などでも構いませんので、何か制作した方はCMTELまでぜひフィードバックをお願いします。

今回のイベントで初めてCMTELに来たという学生も多くいました。これをきっかけに、今後素材に関してのリサーチや相談などの利用でもCMTELをご活用ください。なお今回のイベントに限らず、CMTELでは当大学の学生の皆さんにサンプル(少量)をいつも配布しています。どんなサンプルがあるかぜひ見に来てくださいね。

 

※今回のイベントは、下記企業様にご協力いただきました。
東レ株式会社

ウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社
     

有限会社和晃プラスチック

SOLIZE Products株式会社

 


19 12月 

こんにちは、CMTELです。9月26日(水)に、マテリアルメーカーにお越しいただいての「マテリアル説明会」を開催しました。

今回は、スエード調人工皮革Ultrasuede®を製造している東レ株式会社(敬称略)をお招きしました。製品に関して詳細はこちらから(CMTELの過去のブログ記事

なおこの説明会は、卒業制作に取り組む生産デザイン学科の4年生・院2年生に対して、卒業制作への素材提供を前提とした取り組みの一環として開催しました。今回のブログ「前半」では、主に説明会の様子をレポート。3月以降には、実際の卒業制作作品を交えた「後半」をレポート予定です。


【開催概要】

●日 時:2018年9月26日(水)16:10開場 16:20~17:50
●場 所:八王子校舎 デザイン棟2F(7-213)プロダクトデザイン講義室A
●ご協力:東レ株式会社
●対 象:多摩美術大学 生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻・テキスタイルデザイン専攻の4年生・院2年生で卒業制作にてUltrasuede®を使う可能性がある学生、もしくは使用を検討したい学生
●ご注意:作業着での入室・飲食物の持ち込みはできません。
●申し込み方法:プロダクトデザイン研究室もしくはCMTELどちらかの記名表にご記入ください

【説明会の様子】
会社紹介とUltrasuede®製品説明
集まったのは、卒業制作にのぞむ学生12名(+お話だけでも聞きたいというプロダクトの他学年の学生も)。Ultrasuede®の特徴や歴史・製品への採用事例を、講義形式でご紹介いただきました。

靴やカバン、スツールの座面など、たくさんの加工サンプルが揃いました。

インテリア用に加工されたファブリックのハンガーサンプル、縫製された衣類も。

質疑応答
中には、実際に試作品を持参し見せながら相談をする学生や、担当者とお話しする中で自身の制作へのヒントを探る学生もいました。

【説明会後の流れ】
●1.試作用Ultrasuede®をCMTELヘリクエストする(10月初旬)
図面を描き、必要な「数量」「厚み」をリクエストします。説明会に参加した学生のうち、5名がリクエストをしました。色々なスケッチが集まりました、どんな作品が生まれるのか楽しみです。

●2.試作用Ultrasuede®が届く(10月中旬)
約10日間が試作期間。レーザー加工機でのカットや、細く切ったUltrasuede®をファブリック状に織る実験、ミシンで縫い合わせた時の厚みの検証など、多様な試みをそれぞれが行います。また、他の素材との組み合わせや、色の検証を行いました。

●3.本制作用Ultrasuede®をCMTELヘリクエストする(10月下旬)
2.の検証結果を踏まえて、「数量」「厚み」「色」を指定します。最終的に参加者は4名(テキスタイル専攻4年1名、プロダクト専攻4年3名)となりました。

●4.本制作用Ultrasuede®が届く(11月初旬)
ここから講評会までの期間で本制作を行います。衣類や、カバン、玩具、家具など、制作するアイテムは様々です。みなさん頑張ってください!

 

これ以降のレポート「後半」3月以降にUP予定です。実際に学生の作品を交えたレポートになる予定ですので、続きをどうぞお楽しみに。

 

※今回のイベントは、下記企業様にご協力いただきました。
東レ株式会社

14 12月 

こんにちは。2018年7月14日(土)、15日(日)のオープンキャンパスにて「マテリアルワークショップ~アクセサリーバッジをつくろう!~」を開催しました。2日間で合計227名の方にご参加いただきました。

このワークショップは、下の画像左の水溶性樹脂造形材料ジェスモナイト(AC100)といろいろな素材を組み合わせ、アクセサリーバッジをつくるというものでした。今回のブログでは当日の様子に加え、後半ではジェスモナイトと異素材をデコレーションする時のポイント2つをご紹介します。

ジェスモナイトとは有機溶剤など有害な物質を含まない、身体と環境にやさしい水性樹脂のこと。下のような特徴があります。

①安全性と作業性の良さ
(有機溶剤を含まないので防毒マスクは不要。匂いもアクリル絵具程度で硬化(こうか)※は15分程度と短い。水性のため道具は水洗い可能。)
②発色性、質感の高さ
(写真右に写っている蛍光着色剤の発色はかなり高く、ごく少量で着色可能。質感は石膏や陶器のようにマット。)
③軽量で頑丈
④成形のバリエーションが豊富
(注型(ちゅうけい)※、塗布、盛り・削り、やすり、スプレーガンでの噴射が可能)

使用例としては、彫刻・アート作品・考古学モデル・映画撮影セット・アクセサリー・家具・内装・建築など幅広いクリエイティブの場で使用されています。詳細はこちらからどうぞ。

※硬化とは…柔らかい物質が何らかの化学的作用によって硬くなっていくこと。
※注型とは…型に材料(樹脂等)を流し込み固化させた後、型を外して製品を作る方法。

当日は、樹脂の取り扱いに長けた学生インストラクターが各作業テーブルについてレクチャーを行いました。
では実際どのようなワークショップを行なっていたのか、ご紹介します!

.素材を選ぶ
台の上に並べられた素材の中から好きなパーツを選びます。

アルファベットや動物の形をしたパスタや、

CMTELにある3Dプリンターでプリントした造形物。「CMTEL」のロゴになっています。ちなみにこの造形物に使われた材料のプラスチックは、ポリ乳酸というトウモロコシ由来のデンプンから作られています。

こちらは「サポート材」「ラフト」と呼ばれる、3Dプリント造形物時に作られる端材。日頃CMTELで3Dプリンタを使っている学生のみなさんから、不要な端材を提供してもらいました。プリンタが自動計算で作り出す端材には、意図しない造形美があります。

ちなみに、3Dプリンタのデモンストレーションも館内で行いました。3Dプリンタの動く様子に見入る来場者の方の姿も。

こちらは、ワックスコードを短くカットしたもの。

この他にも、CMTELならではの特殊な素材もありました。その中から珍しい素材をいくつかご紹介します。

「スチレンビーズ」(協力 積水化成品工業株式会社様)
画像左側は、発泡スチロールの原材料”原料ビーズ”(ポリスチレンの粒)です。およそ0.4mmほどのビーズの中には発泡材のガスが含まれています。蒸気をあて加熱させることで50倍以上に膨らみます。向かって右側は原料ビーズを予備発泡させた“発泡ビーズ”です。

生鮮食料品用の保冷梱包材緩衝材に加工された後の姿はお馴染みですね。

今回は原料ビーズ、発泡ビーズの両方を揃えました。原料ビーズの段階ではビビットな色半透明ですが、発泡ビーズになると乳白色・不透明色になります。日常生活では見ることのできない、身の回りの物の元の姿に驚きです。

「メッシュ」(協力 株式会社NBCメッシュテック様)
網戸やふるいをはじめ、家電製品や自動車内のフィルター音響機器のスピーカー部材など日常生活のあらゆるところで幅広く使われています。普段目につきづらいところで活躍することの多いメッシュですが、よく見ると色や目の大きさに様々なバリエーションがあります。

今回は4種類のメッシュをレーザー加工機でカットしたパーツを準備しました。暗い所で光る蓄光(ちっこう)繊維を織り込んだものや、蛍光ピンクのメッシュは靴や鞄の試作品に使われているもの、撥水加工されているものなど種類が豊富です。

「ケミカルウッド」(協力 株式会社ミナロ様)
加工性や環境性に優れた、樹脂でできた言葉通り人工の木材です。木のように木目がなく繊維の方向を気にせず加工ができ、色で硬度が分かれているので用途に合わせて選ぶこともできます。また、着色性にも富んでいるので模型フィギュアの製作でも多く使われています。ものづくりの可能性を広げる使い勝手のよい素材です。多摩美生もよくお世話になっています。

.作業テーブルへ移動
学生トレーナーの元いよいよ作業スタート。小さなお子さんも沢山参加いただきました。

今回型に使ったのは、直径3cm、厚さ5mmの正円の型です。

.ジェスモナイトのリキッドとベースを混ぜる
予めピンク・ブルー・イエローに着色されたジェスモナイトのリキッドから好きな色を選択。

そこにベースといわれる粉状の材料を入れ、むらの無いようよく混ぜます。(リキッドとベースの重量比率は1:2.5なので、今回リキッドは4gベースは10gを計量)

混ぜ始めは粉っぽさが目立ちますが、混ぜ続けるとなめらかなクリーム状になっていきます。ここで3分程頑張って混ぜましょう!攪拌(かくはん)※が足りないと、完成した後に色がまだらになってしまうためです。
※攪拌とは…かき混ぜること

4.型に流す
混ぜた棒でかき出し、シリコンの型に流し入れます。

5.デコレーション
上からパーツをデコレーションしていきます。ジェスモナイトは15分程で固まります、そのうちデコレーションができる時間は2〜3分程と限られています。それ以上デコレーションを続けると表面がデコボコに…。完成をしっかりイメージしておくことが大切です。

デコレーションのポイント①
ジェスモナイトの厚みが薄くなってしまうと、この後型から外す時に割れてしまいます。パーツを沢山デコレーションする時は、ジェスモナイトの厚さが2mm以下になってしまわないよう、気をつけましょう。今回使用した型の深さは3mmと浅いため、型に注いだ後のジェスモナイトの中に沢山パーツを封入してしまうと、薄い部分が多くなり強度が落ちます

デコレーションのポイント②
重たいパーツ2分程経ってから乗せましょう。金属でできたものや、比重の大きいパーツは、早く乗せるとジェスモナイトの中に沈んでいって見えなくなってしまいます。

みなさん頭の中のイメージをどんどん形にしていきます。ピンセットや爪楊枝を使うとデコレーションがしやすいです。

6.固まるのを15分待つ
固まるまでの待ち時間は学生トレーナーへの質問タイムに。多摩美での学生生活についてや、志望する学科の話、受験のこと……様々な話で盛り上がりました。

CMTELの展示素材を見学する方もいらっしゃいました。

7.型から取り出す
つい先程まで液状だったジェスモナイトが…カチカチに固まりました!質感は石膏や陶器のようマットで、しっとりとしています。固まる時に少し熱が発生しますが、手で触っても問題なくほんのり温かい程度。

8.ピンをつける
最後に、裏側の面に瞬間接着剤でピンバッジ用の金属パーツをつけていきます。

9.完成!
ここで完成品をいくつかご紹介!
発泡ビーズ3Dプリント造形物を使用した作品。発泡ビーズはジェスモナイトに乗せるだけだと接着が十分ではないので、乗せた後に爪楊枝などで少し押すとしっかりとくっつきます。エメラルドグリーンと水色の淡い色の組み合わせがきれいですね。

こちらは3Dプリント端材、ワックスコードを使った作品。立体的で存在感のあるバッジが続々とできていきます。

グレーのパーツはケミカルウッド、ピンク色のメッシュワックスコードの組み合わせです。

アルファベット型のパスタをメインに、様々なパーツも盛り込んだ作品です。

個性あふれるバッジの数々が2日間で完成しました!

今年のワークショップでも、お子様から大人の方、学生や受験生、たくさんの方が体験をしました。樹脂に触れたことのない初心者の方はもちろん、樹脂に親しみのあるユーザーも、ジェスモナイトの使いやすさに驚いていました。完成したバッジは、みなさん早速身につけてお帰りになっていました!

 

多摩美の学生が普段製作に使用している材料や、珍しい素材に実際に触れて、ものづくりを楽しんでいただけたようです。次回のオープンキャンパスのワークショップも、ぜひお楽しみに!