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大学院教育改革支援プログラム
異文化相互批評が可能にする高度人材育成

「異文化相互批評が可能にする高度人材育成」について

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1.
「異文化相互批評が可能にする高度人材育成」

「大学院教育改革支援プログラム」申請にあたって、本学からは、「異文化相互批評が可能にする高度人材育成」を目指すべきテーマとした。具体的には「Art & Design 国際講評会」を開催すること、「クリティカル・ノート」を活用することの両軸を持ちながら、高度な人材育成をはかるという教育プログラムである。


2.
目指すべき高度人材育成

(ア)Art & Designという本学全体の研究領域において、目指すべき人物像ははっきりとしている。本学は建学以来「自由と意力」をもっとも重要な理念として尊んできた。高度人材育成を一言であらわすなら、これ以上のヴィジョンはあり得ない。

(イ)その上で、激動を続ける現代に対応できる人材としては、次のような人物像を描くことができる。いずれも本大学院の専攻に沿ったものであることは言うまでもない。

1. 優れたアーティスト
2. 優れたクリエーター
3. 優れた研究者

(ウ)加えて、今日、パラダイムシフトを頻繁に繰り返す社会状況の中では、状況を生み出し、育て、経営や社会還元へと結びつける複合的な能力も必要とされている。その際には、より総合的な能力が必要とされるだろう。これらは単体ではなく、融和し、統合されることで、より広がりを持つ場合が多い。

1. 優れた企画立案者、企画運営者、プロジェクトリーダー
2. 優れたディレクター、プロデューサー
3. 状況全体を生み出すことのできる優れたオーガナイザー


3.
横軸教育に期待されるもの

(ア)いわゆる「横軸教育」「超領域教育」とは、「専門教育」を縦軸と見立てた場合に対比的に構築されるものである。学部では、「教養教育」「共通教育」と呼ばれることが多いが、ゼミやワークショップなどにも、横軸教育の要素は入り込む場合が少なくない。本大学院では、教員が交代・連鎖しながら広がりのある領域について連続講義を行い、全領域の学生が履修しやすいように配慮している「Art & Design」などの講義科目に、この横軸を意識している。横軸教育に期待されているのは、縦の糸に横の糸を織り込むことで、より専門性を強固にし、そこに知識、価値、視点の広がりを与えようとする総合的な教育効果である。縦の専門教育が十分熟成し、機能しているからこそ、横軸教育が意義を持つのである。

(イ)さらに横軸教育とは、専門知識や技能修得に比較すると、どちらかというと、人間の成長、総合的な能力の開花を目的としている。人間力の向上、などの言葉に代用される場面が多い。

(ウ)しかしながら一方では、横軸教育における教育効果は、大学院以上の教育カリキュラムの中では、なかなかその成果をはかりにくいものである。


4.
産業構造における横軸

(ア)すべての産業は、基本的に縦軸として成立する。

(イ)その中で発展的に創出された「企業内プロジェクト」というものは、縦の専門に加え、つねに横の視点を持つ構造をとる。例えば、機能とデザインという両者のバランスを最高レベルで結び合わせる場合、お互いが横軸として新しい価値、判断基準を提示し続ける。異なる判断を巡って、理解、融和が頻繁に繰り返される。こうした場面で今後求められるのが、ディレクション能力を持つ人材である。

(ウ)また、プロジェクトに限らず、結果に対する「評価」は、産業界がもっとも重視している点であろう。評価を繰り返し磨かれていくのは、学生も産業界も変わるところがない。


5.
本学における特色である「講評会」

(ア)詳しくは「Art & Design 国際講評会」の項に譲るが、本学では慣例的に「講評会」という、学生の作品、研究に対する批評の場を、年に2回程度設けている。同一の研究領域内でも、さらに細かく分かれる部分もあり、この講評会が、領域内横軸教育の最たるものということができる。

(イ)これらを領域からさらに外に広げ、異領域間で「講評会」を成立させられないか、それこそが本学らしい横軸教育といえるのではないか、という発想から、本教育プログラムの外郭が組み上げられることとなった。


6.
批評教育とは何か

(ア)講評会は、学生にとって大変大きな評価のステージである、と同時に、自分の作品、研究に対する感想、印象、声などを集めることのできるまたとない機会である。教員は、さらに突っ込んで、批評を行うことが多い。

(イ)批評は、肯定と、いくばくかの否定的要素から成立する。学生はそれに対し、説明を加えることで教員との間に理解が進む場合もあり得るし、それでも教員の意見としては否定的な要素も伝えなければならない場面もある。いずれの場合も、学生にとっては主観から客観へと視点を広げる大きな助けになる。

(ウ)批評のもうひとつの役割は、「ひらめき」「気づき」「インスピレーション」を与えることである。学生の能力をいっそう高次元へと向かわせ、また問題を振り払い、才能を一気に開花させる大きな一助となる。この批評をどのように受け入れるか、活用するかというのは学生の裁量に任されることになるが、より高い領域へいかに歩みを進めるのか、という目標の前では、批評が大きな分岐点であることは間違いない。

(エ)前述したように、産業界では、製品化を前にして、社内、プロジェクト内で、頻繁に品評、批評が繰り返される。このことを念頭に置けば、制作者、作家、研究者というものは、つねにこの批評というものと向き合わなくてはならない。視点が違い、価値観が違えば、期待する結果も自ずと異なるからだ。そういう意味で、もの作りや研究を続ける以上、批評は永遠に必要不可欠な「機能」であると言ってもいい。

(オ)こうした批評の「機能」を、これまでよりさらに意識的に教育プログラムに取り込むことが、高度人材育成のためには、なくてはならないものである。


7.
「異文化相互批評」と人材育成

(ア)本教育プログラムでは、「Art & Design 国際講評会」を実施することを大きな目標に置いている。

(イ)海外協定校を訪問し、講評会を行うケースもあれば、反対に、国内で開催することで、多くの協定校から一堂に学生を集める場合も想定している。この国際的な講評会に期待したいのは、異文化間で必然的に繰り広げられるであろう、疑問、批評、ディスカッションである。

(ウ)前後するが、もの作り、表現、研究というものは、往々にして、わたしたちの日常の中に発想を得て、そこから発展して、かたちになっていく場合が多い。しかしそれは、同じ国、大きくとらえれば近似している価値観、同一言語などの文化圏の中で成立する、という前提に立っている。

(エ)現代はグローバルであることそのものはもはや当然の時代であろう。とすれば、批評も異文化間で交わすことは、必要なことであると明言できる。また、大きく異なる文化を背景に持つ場合、双方がどうしても理解しがたい点もあるだろうし、反対に、簡単に理解が進む場合もあるだろう。こうしたことはマイナスなのではなく、すべて経験値、新しい価値、発想に向かっていく良質なきっかけとなるはずである。こうした異文化相互批評を通じて育まれるもの、それこそが新しい時代を築いていく高度な人材であると言える。
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