[title] Institute for Art Anthropology INFORMATION

Jul 16, 2009

ダウンズタウン・プロジェクト第2回シンポジウム

報告が遅くなってしまいましたが、 「アール・イマキュレ−希望の原理−」展の初日6月13日(土)に、関連イベントとしてシンポジウム「アール・イマキュレと芸術人類学」が開催されました。

まずは、特別研究員佐藤よし子氏の基調報告「アール・イマキュレとアトリエ・エレマン・プレザンの歩み」です。 佐藤氏は、アトリエ・エレマン・プレザン東京の代表として、「アール・イマキュレ」が榊原記念病院の大きな壁を彩っている様子や、アトリエの作家たちが真剣に制作する場面などを伝えました。 印象深いエピソードとしては、三重のアトリエにある円卓のテーブルについて語られた場面が挙げられます。これは、もともとチューブを握って色を出すことが難しいダウン症の作家たちのために、アトリエの創始者佐藤肇氏によって生み出された方法で、色とりどりの絵の具を円卓のテーブルに広げておくのだそうです。普通に考えると、この方法では色の取り合いがおこるのではないかと想像してしまいますが、ダウン症の作家たちは、色を取り合うことなく、それぞれのリズムで作品の制作を進めるということです。この方法は、東京のアトリエではまた違ったかたちで行われていて、そこでもとても穏やかな雰囲気で絵の具の交換と共有がなされていると、アトリエに親しく通う多摩美の学生が話していました。

続いては、長谷川祐子所員の基調講演です。 東京都現代美術館のチーフキュレーターでもある長谷川所員は、アール・イマキュレ、アウトサイダーアート、現代アートと呼ばれるそれらすべての表現を、同じ地平に降ろすという視点から、作品の造形的比較をおこないました。 講演の資料には、ヘンリー・ダーガー、モーリス・ルイスらの歴史的作品の他、長谷川所員が自ら調査をして展覧会『ネオ・トロピカリア|ブラジルの創造力』(08年10月-09年1月/東京都現代美術館)で紹介した、ブラジル人アーティスト、カンパナ・ブラザースの作品なども取り上げられました。そういった作品とも十分に比較しうる表現として、上田幸絵氏の絵画作品「ともだち」、倉俣晴子氏の立体作品「椅子」、そして今回の展覧会の顔ともなった岡田伸次氏の絵画作品「佐久間さん」、「よしこちゃん」などが語られ、「アール・イマキュレ」の造形力が少しずつ見えるものになってゆきました。長谷川所員の芸術作品に対する言葉の豊かさには、河合先生、中沢所長も絶賛したほどです。

佐藤氏と長谷川所員の基調報告と講演で終えたシンポジウム前半は、佐藤氏の温かい視点とメッセージ、長谷川所員のドラマチックな演出に、涙したというメッセージも届くほど盛り上がりました。

シンポジウム報告、第一弾はここまでです。 次回は、中沢新一所長の基調講演と河合俊雄先生を迎えた、長谷川所員、中沢所長とのパネルディスカッションの報告を予定いたします。

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