23 2月 

こんにちは。2018年1月12日(金)のワークショップにて「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」を開催しました。講師として株式会社JAM様より辰巳氏・吉野氏をお招きし、デモンストレーションを交えながら製版〜プリントまでのプロセスを体験できる内容でした。今回のブログでは当日の様子をご紹介。

●講義「孔版印刷(シルクスクリーン)について」
まず初めに孔版印刷の種類やシルクスクリーンの仕組みの紹介です(詳細な情報はこちら)。シルクスクリーンはTシャツやトートバッグの印刷にも使用されている身近な印刷技術です。

従来、シルクスクリーンの紗(しゃ)※を作るには多くの時間機材・薬剤専用の作業空間、そして何よりテクニックが必要でした。しかし今回は手軽に作ることのできる「デジタル製版機」を使用します。機械とパソコンを繋ぎ、Illustlatorで作ったデータを送信すると、図柄状に孔(あな)の開いた紗が出てきます。プリンタで印刷するような感覚で紗が完成しました。

※紗:繊維がメッシュ状に織られた布で、図柄以外の部分のメッシュの孔を何らかの方法で目止めし、インクが通らない部分を作ったもの。

だるま(図柄部分)に孔が開いた状態の紗が数分で出てきました(だるまの周りの色面は孔が開いていません)。スピーディーな点もさることながら、デジタル出力のため同じ紗を何枚でも作ることができる点も魅力的です。

●準備「枠に紗を張って版を作る」
1.使った道具

シルクスクリーンには紗を張るための枠が要ります。今回使うは、パーツを連結させて7種の大きさの枠を作ることができるフレームパーツです(詳細はこちら)。

今回のワークショップでは印刷サイズが200×200mmのため、青色と黄色のパーツのみ使用します。なお、紗は参加者が事前に製作したデータから出力したオリジナルデザインのものを用意しました。

2.紗を張る
組み立てた枠の上に紗を乗せます。枠にある溝に、紗の上からゴムチューブを一周埋めていきます。付属のローラーを使いゴムチューブを埋め終わると、ピンと紗を張ることができました。シルクスクリーンでは、紗をたるみなく張る必要があり慣れないと難しいものです。しかし、初めての参加者でも簡単に上手に張ることができました。(張り方の詳細はこちら)

それでは準備もできたところで、早速プリント実習に移っていきます。


●プリント実習①「紙・布用インクを刷る」
プリントをするアイテムは各々持参してもらった好きな素材。色紙やトートバッグに靴下に手ぬぐいなどなどが集まりました。12色の中から選びます。

へのプリント後、インクの種類によっては洗濯でインクが落ちないよう定着させるためにアイロンでの熱圧着の必要があります。使用するインクにはアイロンの仕上げがいるのかどうかチェックしましょう。アイロンが必要なインクの場合、熱で布が変形しないよう、プリントする布製品は綿50%以上である必要があります。

今回用意した「金・銀・銅色」のインクは、株式会社JAM様で扱っているオリジナルインクでアイロン作業が不要のインクです。そのため、熱に弱くアイロンがけの出来ないアクリルポリエステルといった化学繊維にもプリントができます。ただし、金銀銅などのラメ入りのインクを使う場合、紗は荒目(今回使用した紗は荒めの70メッシュ)のものでないとインクに含まれているラメが詰まってしまうので注意しましょう。

1.インクはたっぷり使う
図柄部分の幅をしっかりカバーできる量のインクを置きます。もし刷っている間に紗の上でインクが無くなってしまうと、かすれの原因になってしまいます。(印刷後、版に余ったインクは乾燥していなければ再利用できます。)

2.スキージでインクを刷る
スキージというインクを伸ばすための専用のへらを使い刷っていきます。刷る時のコツは4つ。

・“ジー”という音がたつくらいの力加減で刷ること
力を入れても意外と大丈夫でした。余分なインクをこそぎ取るようなイメージで、しっかりスキージで紗を擦りましょう。
・深くスキージをつかみ、指を広げしっかりと持つこと
スキージに加わる力にむらが出来てしまうと、インクの乗りが厚い部分・そうでない部分ができてしまいます。
・スキージの角度を45°にすること
角度が低過ぎると、インクが余分に紗を通ってしまい滲みの原因になってしまいます。
・図柄の幅に合わせて的確な大きさのスキージを使うこと
図柄の幅に対して大き過ぎるスキージを使った場合、スキージにかけた握力が分散してしまいます。そうするとインクの付着が均一にならず、ムラができやすくなります。小さい図柄よりも大きい図柄をプリントする方が難易度が高いです。

力を入れてスキージを動かす際、版が動いてしまうため参加者同士で枠を押えます。トートバッグなどマチがあるものは中に板や厚紙を入れて、印刷面をフラットにしてから刷るときれいに刷れます。

版がずれると、このように図柄がブレる原因になるのできっちり固定しましょう。

版を外す時は、枠の一辺を押さえゆっくり持ち上げるとプリントした物が版にくっつかずうまく剥がせます。

プリント後はすぐに、版の裏側から濡れたウエスインクを拭い目詰まりを防ぎましょう。インクが乾燥すると紗の目が詰まり、次のプリントの際にその部分だけインクがのらなくなってしまいます。

3.仕上げにアイロンをかける
アイロンがけの必要なインクを使ったものにはアイロンをかけましょう。熱によってインクが定着します。

4.完成!
以下の画像2枚は参加者に大人気だった銅色のインクでプリントした作品です。この写真では見えないのですが、細かいラメが入っていてキラキラしています。

同じく銅色のインクでプリントした作品です。黒地の色が透けることなく、図柄部分にこってりとインクが乗っています。濃い色のものにプリントすると、下地の色が透けるインクもあるのですが、このインクは不透明色なのが特徴です。

表面に編み目の起伏がある靴下にもプリントができました。

みなさんコツをつかみ、完成度の高いプリントが続々とでき上がっていきます。出来上がりの嬉しさから、思わずその場で着用する学生も…!


●プリント実習②「箔を転写する」
とは金・銀のメタリックな質感をもつ転写フィルムです。ホットバインダーを刷った箇所に乗せ、アイロンをかけることで定着させることができます。

1.ホットバインダーを刷る
ホットバインダーとはフィルムやシートを印刷物に転写するための接着剤です。加熱すると溶け、接着力を発揮します。プリント時には2回刷りましょう、粘り気が強く粒子も大きいためしっかりと印刷物にホットバインダーをのせるためです。また紙布用インクよりもさらに乾燥が早いので、印刷後はすぐに濡れたウエスで紗を拭い目詰まりを防いでください。

画像中央の、うっすらと見える丸い図柄部分がホットバインダーを刷った色面です。触ってもホットバインダーが手につかない程度に乾燥させます。

2.熱圧着する
アイロンを150度に温めます。蒸気孔のあるものだと穴の跡がついてしまう可能性があるので、かけ面がフラットなアイロンを使用しましょう。また、アイロン台は表面が柔らかなものだと圧力が分散し圧着がうまくいかないので、下に敷くのは硬い板や厚紙がオススメです。

布製品でバッグなどの筒状のものには中に紙や板を入れましょう。アイロンの熱で溶けたホットバインダーが、裏側の生地に染み込んでしまうのを防止するためです。(紙など、ホットバインダーの染み込まない素材は必要ありません)

ホットバインダーを刷った部分に箔が上向きになるように重ねます。その上にクッキングシートを被せ、アイロンを3秒ほど当てます。きちんと圧着させるため、クッキングシートの上からアイロンを数秒かけた後、乾いたウエスで撫でてホットバインダーと箔の間に残っている空気を抜きます。箔がずれないように気をつけながら、さらに20秒加熱。体重を乗せしっかりをかけます。

3.箔フィルムを剥がす
最も重要なポイントがここです!フィルムを剥がしたくなる気持ちをぐっとこらえ、熱が完全に冷めきるのを待ちましょう。この間でホットバインダーと箔が固着します。冷めきらないまま剥がしてしまうと、このように箔がまだらになってしまいます。十分冷えてからゆっくりフィルムを剥がしましょう

4.完成です!!


●プリント実習③「起毛加工をする」
起毛シートとは台紙の表面に短かい毛がついたシートのこと。ベロアのようにふわふわした手触りをしています。箔フィルムよりも少し難易度が高くなります。

1.ホットバインダーを刷る
箔の時と同じく、ホットバインダーをプリントします。起毛シートの定着がうまくいくかどうかは、元々のホットバインダーの乗り具合大きく影響します。2度刷りでしっかりプリントします。ちなみに図柄の大きさによっては、慣れてくれば下の画像のように片手で固定し一人で作業することも可能です。刷った後は乾燥させます。

2.熱圧着する
印刷面の上に、白い台紙が上になるよう起毛シートを乗せ、さらにクッキングシートを被せアイロン(温度設定165度20秒)をかけます。あまりに圧力をかけすぎてしまうと、起毛がつぶれて寝た状態で貼り付いてしまいます。適度な圧力のかけ具合を、みなさん感覚で探っていきます。

3.起毛シートの台紙を剥がす
先程の箔フィルム同様、大事なことなのでもう一度繰り返します。台紙は冷えきってから剥がしましょう

印刷面に毛が付き、ケバケバしたテクスチャーに…!起毛シートの毛が残っている余白部分はまだ使用ができます。切り取って小さな面積のプリントに使いましょう。



1度の定着でうまく起毛がつかなかったら…?
起毛シートは難易度が少々高く、始めはうまくいかない場合もあります。そういう場合には、もう一度圧着を試みましょう。ホットバインダーが残っていれば、接着が可能です。アイロンをかける圧力を調整したり、部分的に起毛がついていない場合にはその部分へ重点的にアイロンをかけてみてくだい。


 

孔版印刷やシルクスクリーンと聞くと大変で難しいイメージを持っていた学生もいましたが、今回のワークショップを経てイメージが変わったようでした。

ちょっとした工夫ポイントを押さえれば、初めてでも上手に刷ることができます。思ったようにいかなくとも、意図しない効果がでて想像よりも良い仕上がりになったりなど、手作業ならではの発見もあります。興味を持っている方は、ぜひ挑戦してみてください!

製版〜プリント・特殊加工という内容盛り沢山のワークショップは、2018年度も開催予定です。今回参加のできなかった学生のみなさん、次回をお楽しみに。

ご協力いただいた株式会社レトロ印刷JAM様では、今回使用した枠の販売はもちろん、孔版印刷サービスも行っています。都内にワークスペースもありますので興味のある方はHPをご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・レトロ印刷 JAMにご協力いただきました。

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