23 2月 

こんにちは。2018年1月12日(金)のワークショップにて「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」を開催しました。講師として株式会社JAM様より辰巳氏・吉野氏をお招きし、デモンストレーションを交えながら製版〜プリントまでのプロセスを体験できる内容でした。今回のブログでは当日の様子をご紹介。

●講義「孔版印刷(シルクスクリーン)について」
まず初めに孔版印刷の種類やシルクスクリーンの仕組みの紹介です(詳細な情報はこちら)。シルクスクリーンはTシャツやトートバッグの印刷にも使用されている身近な印刷技術です。

従来、シルクスクリーンの紗(しゃ)※を作るには多くの時間機材・薬剤専用の作業空間、そして何よりテクニックが必要でした。しかし今回は手軽に作ることのできる「デジタル製版機」を使用します。機械とパソコンを繋ぎ、Illustlatorで作ったデータを送信すると、図柄状に孔(あな)の開いた紗が出てきます。プリンタで印刷するような感覚で紗が完成しました。

※紗:繊維がメッシュ状に織られた布で、図柄以外の部分のメッシュの孔を何らかの方法で目止めし、インクが通らない部分を作ったもの。

だるま(図柄部分)に孔が開いた状態の紗が数分で出てきました(だるまの周りの色面は孔が開いていません)。スピーディーな点もさることながら、デジタル出力のため同じ紗を何枚でも作ることができる点も魅力的です。

●準備「枠に紗を張って版を作る」
1.使った道具

シルクスクリーンには紗を張るための枠が要ります。今回使うは、パーツを連結させて7種の大きさの枠を作ることができるフレームパーツです(詳細はこちら)。

今回のワークショップでは印刷サイズが200×200mmのため、青色と黄色のパーツのみ使用します。なお、紗は参加者が事前に製作したデータから出力したオリジナルデザインのものを用意しました。

2.紗を張る
組み立てた枠の上に紗を乗せます。枠にある溝に、紗の上からゴムチューブを一周埋めていきます。付属のローラーを使いゴムチューブを埋め終わると、ピンと紗を張ることができました。シルクスクリーンでは、紗をたるみなく張る必要があり慣れないと難しいものです。しかし、初めての参加者でも簡単に上手に張ることができました。(張り方の詳細はこちら)

それでは準備もできたところで、早速プリント実習に移っていきます。


●プリント実習①「紙・布用インクを刷る」
プリントをするアイテムは各々持参してもらった好きな素材。色紙やトートバッグに靴下に手ぬぐいなどなどが集まりました。12色の中から選びます。

へのプリント後、インクの種類によっては洗濯でインクが落ちないよう定着させるためにアイロンでの熱圧着の必要があります。使用するインクにはアイロンの仕上げがいるのかどうかチェックしましょう。アイロンが必要なインクの場合、熱で布が変形しないよう、プリントする布製品は綿50%以上である必要があります。

今回用意した「金・銀・銅色」のインクは、株式会社JAM様で扱っているオリジナルインクでアイロン作業が不要のインクです。そのため、熱に弱くアイロンがけの出来ないアクリルポリエステルといった化学繊維にもプリントができます。ただし、金銀銅などのラメ入りのインクを使う場合、紗は荒目(今回使用した紗は荒めの70メッシュ)のものでないとインクに含まれているラメが詰まってしまうので注意しましょう。

1.インクはたっぷり使う
図柄部分の幅をしっかりカバーできる量のインクを置きます。もし刷っている間に紗の上でインクが無くなってしまうと、かすれの原因になってしまいます。(印刷後、版に余ったインクは乾燥していなければ再利用できます。)

2.スキージでインクを刷る
スキージというインクを伸ばすための専用のへらを使い刷っていきます。刷る時のコツは4つ。

・“ジー”という音がたつくらいの力加減で刷ること
力を入れても意外と大丈夫でした。余分なインクをこそぎ取るようなイメージで、しっかりスキージで紗を擦りましょう。
・深くスキージをつかみ、指を広げしっかりと持つこと
スキージに加わる力にむらが出来てしまうと、インクの乗りが厚い部分・そうでない部分ができてしまいます。
・スキージの角度を45°にすること
角度が低過ぎると、インクが余分に紗を通ってしまい滲みの原因になってしまいます。
・図柄の幅に合わせて的確な大きさのスキージを使うこと
図柄の幅に対して大き過ぎるスキージを使った場合、スキージにかけた握力が分散してしまいます。そうするとインクの付着が均一にならず、ムラができやすくなります。小さい図柄よりも大きい図柄をプリントする方が難易度が高いです。

力を入れてスキージを動かす際、版が動いてしまうため参加者同士で枠を押えます。トートバッグなどマチがあるものは中に板や厚紙を入れて、印刷面をフラットにしてから刷るときれいに刷れます。

版がずれると、このように図柄がブレる原因になるのできっちり固定しましょう。

版を外す時は、枠の一辺を押さえゆっくり持ち上げるとプリントした物が版にくっつかずうまく剥がせます。

プリント後はすぐに、版の裏側から濡れたウエスインクを拭い目詰まりを防ぎましょう。インクが乾燥すると紗の目が詰まり、次のプリントの際にその部分だけインクがのらなくなってしまいます。

3.仕上げにアイロンをかける
アイロンがけの必要なインクを使ったものにはアイロンをかけましょう。熱によってインクが定着します。

4.完成!
以下の画像2枚は参加者に大人気だった銅色のインクでプリントした作品です。この写真では見えないのですが、細かいラメが入っていてキラキラしています。

同じく銅色のインクでプリントした作品です。黒地の色が透けることなく、図柄部分にこってりとインクが乗っています。濃い色のものにプリントすると、下地の色が透けるインクもあるのですが、このインクは不透明色なのが特徴です。

表面に編み目の起伏がある靴下にもプリントができました。

みなさんコツをつかみ、完成度の高いプリントが続々とでき上がっていきます。出来上がりの嬉しさから、思わずその場で着用する学生も…!


●プリント実習②「箔を転写する」
とは金・銀のメタリックな質感をもつ転写フィルムです。ホットバインダーを刷った箇所に乗せ、アイロンをかけることで定着させることができます。

1.ホットバインダーを刷る
ホットバインダーとはフィルムやシートを印刷物に転写するための接着剤です。加熱すると溶け、接着力を発揮します。プリント時には2回刷りましょう、粘り気が強く粒子も大きいためしっかりと印刷物にホットバインダーをのせるためです。また紙布用インクよりもさらに乾燥が早いので、印刷後はすぐに濡れたウエスで紗を拭い目詰まりを防いでください。

画像中央の、うっすらと見える丸い図柄部分がホットバインダーを刷った色面です。触ってもホットバインダーが手につかない程度に乾燥させます。

2.熱圧着する
アイロンを150度に温めます。蒸気孔のあるものだと穴の跡がついてしまう可能性があるので、かけ面がフラットなアイロンを使用しましょう。また、アイロン台は表面が柔らかなものだと圧力が分散し圧着がうまくいかないので、下に敷くのは硬い板や厚紙がオススメです。

布製品でバッグなどの筒状のものには中に紙や板を入れましょう。アイロンの熱で溶けたホットバインダーが、裏側の生地に染み込んでしまうのを防止するためです。(紙など、ホットバインダーの染み込まない素材は必要ありません)

ホットバインダーを刷った部分に箔が上向きになるように重ねます。その上にクッキングシートを被せ、アイロンを3秒ほど当てます。きちんと圧着させるため、クッキングシートの上からアイロンを数秒かけた後、乾いたウエスで撫でてホットバインダーと箔の間に残っている空気を抜きます。箔がずれないように気をつけながら、さらに20秒加熱。体重を乗せしっかりをかけます。

3.箔フィルムを剥がす
最も重要なポイントがここです!フィルムを剥がしたくなる気持ちをぐっとこらえ、熱が完全に冷めきるのを待ちましょう。この間でホットバインダーと箔が固着します。冷めきらないまま剥がしてしまうと、このように箔がまだらになってしまいます。十分冷えてからゆっくりフィルムを剥がしましょう

4.完成です!!


●プリント実習③「起毛加工をする」
起毛シートとは台紙の表面に短かい毛がついたシートのこと。ベロアのようにふわふわした手触りをしています。箔フィルムよりも少し難易度が高くなります。

1.ホットバインダーを刷る
箔の時と同じく、ホットバインダーをプリントします。起毛シートの定着がうまくいくかどうかは、元々のホットバインダーの乗り具合大きく影響します。2度刷りでしっかりプリントします。ちなみに図柄の大きさによっては、慣れてくれば下の画像のように片手で固定し一人で作業することも可能です。刷った後は乾燥させます。

2.熱圧着する
印刷面の上に、白い台紙が上になるよう起毛シートを乗せ、さらにクッキングシートを被せアイロン(温度設定165度20秒)をかけます。あまりに圧力をかけすぎてしまうと、起毛がつぶれて寝た状態で貼り付いてしまいます。適度な圧力のかけ具合を、みなさん感覚で探っていきます。

3.起毛シートの台紙を剥がす
先程の箔フィルム同様、大事なことなのでもう一度繰り返します。台紙は冷えきってから剥がしましょう

印刷面に毛が付き、ケバケバしたテクスチャーに…!起毛シートの毛が残っている余白部分はまだ使用ができます。切り取って小さな面積のプリントに使いましょう。



1度の定着でうまく起毛がつかなかったら…?
起毛シートは難易度が少々高く、始めはうまくいかない場合もあります。そういう場合には、もう一度圧着を試みましょう。ホットバインダーが残っていれば、接着が可能です。アイロンをかける圧力を調整したり、部分的に起毛がついていない場合にはその部分へ重点的にアイロンをかけてみてくだい。


 

孔版印刷やシルクスクリーンと聞くと大変で難しいイメージを持っていた学生もいましたが、今回のワークショップを経てイメージが変わったようでした。

ちょっとした工夫ポイントを押さえれば、初めてでも上手に刷ることができます。思ったようにいかなくとも、意図しない効果がでて想像よりも良い仕上がりになったりなど、手作業ならではの発見もあります。興味を持っている方は、ぜひ挑戦してみてください!

製版〜プリント・特殊加工という内容盛り沢山のワークショップは、2018年度も開催予定です。今回参加のできなかった学生のみなさん、次回をお楽しみに。

ご協力いただいた株式会社レトロ印刷JAM様では、今回使用した枠の販売はもちろん、孔版印刷サービスも行っています。都内にワークスペースもありますので興味のある方はHPをご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・レトロ印刷 JAMにご協力いただきました。

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22 2月 

こんにちは。2017年10月5日(木)、6日(金)のミニワークショップにて「UVレジンと素材で『アクセサリーバッジ』を作ろう!」を開催しました。(2日間で計6回開催)

今回は、透明なUVレジンに色々な素材を組み合わせて、オリジナルのアクセサリーバッジを制作しました。UVレジンの使い方・注意点についての詳しい情報はこちらをご覧ください。

封入(ふうにゅう)には、CMTELで用意した素材に加え、学生が各自で持参した素材も使いました。オリジナリティーのある面白い作品がたくさんできました!ブログでは当日の様子に加えて、学生作品を紹介していきます。

●UVレジンとは
使用した道具・UVレジン
UVレジンとは、紫外線に反応し化学変化を起こして固まる性質をもった樹脂です。身近で使われている例としてはジェルネイルがあげられます。樹脂特有のにおいもほとんどなく、紫外線を照射するUVライトを使えば5分ほどで制作ができます。また綿密な計量や攪拌(かくはん)のプロセスがないため失敗も少なく、初心者でも気軽に楽しめます。

●ワークショップの模様
1.素材を選ぶ
各自使いたい素材を選びます。持参した素材とCMTELの素材との組み合わせでイメージが広がり、アイデアがどんどん浮かびます。1つの案に絞るのに悩む学生が続出でした…!

テーブルに移って作業スタートです。

2.シリコーン型に素材を並べる
今回準備したのは正円のシリコーン型(直径3cm、深さ5mm)。ピンセット・爪楊枝を使って、素材をレイアウトしていきます。

3.UVレジンを流す
空気が入らないように、ゆっくり流していきます。もし空気が入ってしまった時は、爪楊枝を使って泡を取り除いていきましょう。

4.UVライトをあてて固める
今回使用したUVレジンは、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線の量ではすぐに固まりません。紫外線を照射する専用の機材がこのUVライトです。青く光っている時に、紫外線が出ます。紫外線を当てる時間は、シリコーン型の上面から2分、型ごとひっくり返し底面から2分、合計約4分程。硬化したばかりのUVレジンは高温になるので要注意です。熱が冷めたら型から取り出します。

5.ピンバッジ用金具を裏側に接着し完成

 

●完成作品のご紹介!
今回のミニワークショップでは、封入する素材を学生本人に持ってきてもらいました。学生ならではの視点で選ばれた、面白い素材が多く集まりました。その一部を完成品と一緒にご紹介します。

ドライフラワー

UVレジンに浸ることで、薄っすら透けた花びらの表情が綺麗ですね。透明感のある素材とUVレジンの相性は良いようです、繊細な美しさが引き立ちます。

虫の標本

蜂の奥には写真を切り抜いた黄色い紙も封入しました。UVレジンに着色はしていませんが、全体が黄色くなり琥珀のようです。UVレジンの表面から蜂がレリーフ状に浮き出ています。あえて封入させきらずに立体感を残すのも面白いですね。

コーヒー豆

コーヒー豆だけを封入したシンプルな作品です。身近にあるものも、封入してみると不思議と見え方が変わり、映えて見えます。豆の周りにある気泡は、封入する際に入ったものです。この程度の泡であればUVライトに当てる前に、爪楊枝で取り除くこともできます。


ここで余談ですが、下の画像のように細かい泡ができてしまう現象についてご紹介します。原因は封入する素材に残っていた、わずかな水分によることが主です。下の写真のように、残っていた水分は、UVレジンの硬化時の発熱で膨張し水蒸気となります。その結果「細かい泡として残る」「表面が盛上がる」といった現象を引き起こします。「密閉容器に乾燥剤と入れる」「ドライヤーで乾かす」など、素材は事前にしっかりと乾燥させておくことが大切です。

以上「泡ができてしまう場合の対処法」でした。少し話が反れましたが、学生作品の紹介に戻ります!


電子工作パーツ

この素材ならではの鮮やかな色の組み合わせがきれいです。水引のような結び目を作ってから封入をしています。周囲に散りばめてあるピンク色の素材は、鉱物の雲母(うんも)です。


4mm角程度にカットした本革です。

封入前、革の色は明るいトーンでしたが、封入後はUVレジンが染み込むことで渋くて深い色あいに変化しました。封入前と後で素材の印象が変わる点が面白いですね。革と組み合わせたのは、シリコン鉄という金属素材。マットな革の質感と、メタリックな質感のコントラストがきれいです。

コイン
大胆に500円玉を封入。斬新なアイデアに周りの参加者・スタッフも驚きました。

以上、学生作品のご紹介でした。

UVレジンは1つ作ると、さらにまた別のアイデアが浮かび2つ3つと作りたくなる魅力的な素材です。また固まる時間も短いため、どんどん形になる点も大きな魅力の一つです。手軽なUVレジン、ぜひ皆さんも試してみてくださいね。

14 9月 

こんにちは。2017年7月15日(土)、16日(日)のオープンキャンパスにて「マテリアルワークショップ~アクセサリーバッジをつくろう!~」を開催しました。2日間で合計282名の方にご参加いただき、すべての回が満員となりました。

このワークショップは、透明樹脂(UVレジン)といろいろな素材を組み合わせ、アクセサリーバッジをつくる体験ができるというものでした。

UVレジンとは紫外線を当てることにより固まる樹脂のことで、身近で使われている例としてはジェルネイルがあげられます。樹脂特有の臭いもほとんどなく、紫外線を照射するUVライトを使えば5分ほどで制作ができます。扱いやすい上に失敗も少ないので、初めて樹脂を扱う方でも気軽に楽しめます。

当日は、樹脂の取り扱いに長けた学生インストラクターが各作業テーブルについてレクチャーを行いました。
では実際どのようなワークショップを行なっていたのか、ご紹介します!

.素材を選ぶ
台の上に並べられた素材の中から好きなパーツを選びます。

アルファベットや動物の形をしたパスタや、

透明なカラーセロファンをカッティングマシンでカットしたもの。

3Dプリンターでプリントした造形物とその端材。トウモロコシのデンプンから作られたポリ乳酸というプラスチックを使ってできています。

こちらは、ワックスコードを短くカットしたもの。

この他にも、CMTELならではの特殊な素材もありました。その中から珍しい素材をいくつかご紹介します。

「スチレンビーズ」(協力 積水化成品工業株式会社様)
画像左側は、発泡スチロールの原材料”原料ビーズ”(ポリスチレンの粒)です。およそ0.4mmほどのビーズの中には発泡材のガスが含まれています。蒸気をあて加熱させることで50倍以上に膨らみます。向かって右側は原料ビーズを予備発泡させた“発泡ビーズ”です。

さらに発泡ビーズを金属の型に入れ、もう一度蒸気をあて成形することで膨らんだビーズ同士が熱でくっつきます。そうして普段見慣れている生鮮食料品用の保冷梱包材緩衝材が作られるのです。

今回は原料ビーズ、発泡ビーズの両方を揃えました。原料ビーズの段階ではビビットな色半透明ですが、発泡ビーズになると乳白色・不透明色になります。触り心地も発泡前は硬いですが、発泡後はビーズ内のガスが膨らみスポンジ状になるため柔らかく弾力をもちます。日常生活では見ることのできない、身の回りの物の元の姿に驚きです。


「メッシュ」
(協力 株式会社NBCメッシュテック様)
網戸やふるいなどでなじみ深いメッシュですが、実は家電製品や自動車内のフィルター音響機器のスピーカー部材など日常生活のあらゆるところで幅広く使われています。

今回は4種類のメッシュをレーザー加工機でカットしたパーツを準備しました。

画像一番左の編み目が三角形になっているメッシュはコンクリートの補強材として利用されています。繊細なイメージのあるメッシュが建材の一部として活用されていることに驚きました。一般的には目にすることのできない貴重なメッシュです。

縦横だけでなく三軸方向に織っているのは、三方向に対して強度を保たせる機能のための造形です。元々メッシュの織り目がもつ構造の美しさは、柄という観点においても魅力的です。

他にも、暗い所で光る蓄光(ちっこう)繊維を織り込んだものや、蛍光ピンクのメッシュは靴や鞄の試作品に使われているもの、撥水加工されているものなど種類が豊富です。


「ケミカルウッド」
(協力 株式会社ミナロ様)
加工性や環境性に優れた、言葉通り人工の木材です。木のように木目がなく繊維の方向を気にせず加工ができ、色で硬度が分かれているので用途に合わせて選ぶこともできます。また、着色性にも富んでいるので模型フィギュアの製作でも多く使われています。ものづくりの可能性をひろげる使い勝手のよい素材です。多摩美生もよくお世話になっています。


番外編「UVレジンと相性の良くなかった素材」
ワークショップに使用する素材の準備・検証をしていく中で、上手くいかない素材がありました。せっかくなので、ここで余談としてその例もご紹介します。
一つ目は、水分を含むもの。植物や食べ物など、水分をもつ素材は硬化する際、気泡ができたり表面に凹凸ができてしまうことも。下の画像は押し花を封入した試作品です。わずかに残っていた水分が原因だと思われます。

二つ目は、UVレジン液を吸い込んでしまうもの。例をあげると、スポンジフェルト状の布です。浸み込んでしまうと素材の内部に紫外線が届かないため固まりません。UVライトを20分照射してもベタつきが残りました。

今後UVレジンを使う際は、良ければ参考にして素材を選んでみてくださいね。

.シリコンの型にパーツを並べる
ここからは作業用テーブルへ移動し、学生トレーナーの元いよいよ作業スタート。

今回型に使ったのは、直径3cm、厚さ5mmの正円の型です。完成時の表面底側・上側どちらになるのか考えながら、選んだパーツを自由にレイアウトします。皆さん真剣になって爪楊枝やピンセットを使って慎重に並べていました。


.UVレジンを流す
並べ終わったら、UVレジンを流していきます。UVレジンは厚くなりすぎると紫外線が中までよく通らず、表面にベタつきが残ったり固まらない原因になるので8分目を目安に。注ぎ終わったら、パーツ同士の隙間に入ってしまった空気を爪楊枝で除いたり位置の微調整を行います。綺麗な完成を目指して思わず熱の入ってしまうところです。


.UVライトをあてて固める
今回使用したUVレジンは太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線の量ではすぐに固まりません。専用の機材であるUVライトで固めていきます。UVライトが青く光っている時が紫外線の出ている時です。

まず庫内に型を並べます。それから、表側から2分、シリコン型ごとひっくり返し裏側から2分計4分紫外線をあてていきます。天地を変えるのは紫外線をまんべんなく照射するためです。

固まるまでの待ち時間は、多摩美の話、素材の話、UVレジンの話……様々な話で盛り上がりました。


.型から取り出す
つい先程まで液状だったUVレジンが…カチカチに固まりました!UVレジンは固まる時に高温の熱を発生します。十分冷まして型から取り出しましょう。

 

.ピンをつける
最後に、UVレジンを接着剤代わりにピンバッジ用の金属パーツをつけていきます。そして、再度UVライトを2分あてて固まるのを待ちます。

 

.完成です!!!

ここで完成品をいくつかご紹介!
原料ビーズ発泡ビーズを使用した作品です。左側の作品は原料ビーズの透明感が生きています。右側は発泡ビーズを用いた作品で、乳白色の柔らかい色合いがかわいいです。

UVレジンの硬化時に発する熱で、よく見ると部分的にビーズが膨らみ色も白っぽくなっています。硬化前と後で起こるビーズの表情の変化を観察する参加者もいました。

こちらはメッシュを使った作品。言うまでもなくメッシュは空気を通すので、UVレジンを注いだ時に入ってしまう気泡の泡抜けが良かったです。また、UVライトを当てて硬化させる時にも、紫外線がメッシュの穴を通過するため硬化の防げになりません。UVレジンとの相性は抜群です。

ケミカルウッドを用いた作品です。硬さの違う3種類のケミカルウッドだけで作られたシンプルなバッジです。

オレンジ色のケミカルウッドは、彫刻刀やカッター簡単に削ることができます

それから、3Dプリンタ造形端材を大胆に使ったものです。立体的であえて思い切り飛び出させるのもおもしろいですね。

左はワックスコードに一手間を加えてリボン結びにしたものを封入しています。中央はケミカルウッドワックスコードを使い花のように見立てています。素材の組み合わせが面白いです。右は3Dプリンタの端材を短く切り使用しています。多数ある端材の中から選んだ色の組み合わせにセンスを感じます。

 

今年のワークショップでも、お子様から大人の方、学生や受験生、たくさんの方が体験に来てくださいました。聞いたことはあるけれど使ったことはなかった材料や初めて見た素材に、実際に触れて、つくってみて、ものづくりの楽しさを感じていただけたようです。今回参加できなかった皆さんも、ぜひ来年参加してみてください!

05 9月 

こんにちは。2017年6月7日(水)、8日(木)に樹脂成型による多摩美リングのワークショップを行いました。今回のブログでは当日の様子に加え、後半ではシリコン型の作り方をご紹介します。(樹脂成型で失敗しないためのコツはこちら)今回のワークショップは日新レジン株式会社様にご協力をいただきました。


1回定員30名の予約制で参加者を募集し、2日間で計4回開催。毎年恒例のこのワークショップは、学生に「樹脂の基本的な特徴や扱い方を学ぶこと」「樹脂を身近な素材として知り、制作に活かすこと」を目的としています。

 

●講義「樹脂の性質と扱い方」
まず初めに講義を受け、樹脂についての予備知識を頭に入れます。


●実験「ウレタン樹脂に水を混ぜてみる」
ウレタン樹脂の特徴の1つに、湿気や水分の影響を受けやすいという点があります。では、水分が加わるとどのような現象が起こるのでしょうか。ウレタン樹脂にあえて水を入れ、攪拌(かくはん)※します。数十秒後、ぶくぶくと気体を出しながら発泡し固まりました。下の画像の左側は正常に固まったもの、右は水を加えたものです。
※攪拌…かき混ぜること

水の影響を受けると気泡の多い穴だらけの硬化物になります。


●実習「樹脂を使ってみよう」
実験のあとは、スタッフのいる各テーブルに移りいよいよ実習です。

1.型の準備
今回CMTELが用意したシリコーン型は2つに分割できる 割型(わりがた) という形状をしています。

シリコーン型の内側のゴミやカスを取り除いてから、離型剤(りけいざい)スプレーを散布します。

スプレーの散布後、型をしっかり固定するためにガムテープを型の周りに巻きます。樹脂を流し込んだ際に割型のすき間から漏れ出てしまうことを防ぎます。これでシリコーン型の準備は完了です。

素材メーカーの技術の方からも専門的なアドバイスをもらいながら進んでいきます。


2.計量

次は樹脂を扱う上で重要な計量です。今回使用するウレタン樹脂は発熱しながら硬化する2液性の樹脂です。主剤・硬化剤を1:1で混合します。


3.撹拌(かくはん)

主剤の中に硬化剤を入れ撹拌棒で約20秒しっかりとかき混ぜます。攪拌のコツを知りたい方はこちら


4.注入

撹拌が終わったらシリコーン型に素早く注ぎ入れていきます。

注型が完了しました。後は10〜15分程硬化を待ちます。完全に硬化するのは24時間後。


5.脱型(だっけい)

硬化が完了したら、型をグネグネとひねらせリングを抜き取ります。シリコーン製の型は伸びる性質を持っているため、手で形をゆがませることが可能です。


6.完成

リング以外の余分な部分をニッパーで切りおとし、切断面をやすりで整えて完成です。

ワークショップは以上で終了です。今回のワークショップは、学生にとって樹脂の特性や扱い方を体感しながら学ぶことのできた機会となったようです。

今回ご協力いただいた日新レジン株式会社様では、今回使用したウレタン樹脂とブログで登場したシームレスシリコーンの他にも透明な封入用樹脂(クリスタルレジンNeo)や、グミのように柔らかい樹脂(グミーキャスト)、また樹脂専用の着色剤なども取り扱っています。様々なサンプルをCMTELにも展示していますので、是非一度お越しになりご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・日新レジン株式会社様にご協力いただきました。

 

 

ここからはシリコーン型の作り方です。写真を交えながら、ちょっとしたコツなどもご紹介していきます。

制作手順を紹介「シリコーン型の作り方」
今回作る型はワークショップで使用したものと同じ、割型(わりがた)です。2分割の割型を作るので、今回はシリコーンを2回に分けて流すことになります。

日新レジンのシリコーンゴムにはクイックシリコーン※とシームレスシリコーン※の2種類があります。
シームレスシリコーン…引き裂き強度に優れており、複雑な形状のものの型取り適しています。
クイックシリコーン…硬化速度が速く、型作りの時間を短縮できます。硬度が高いため、分割型に適しています。

本来、割り型にはクイックシリコーンの方が向いているのですが、今回はシームレスシリコーンを使用しています。理由は、原型が有機的でやや複雑な形をしているためです。またシームレスシリコーン型は柔らかいため注型物が取り出しやすい点も加味しました。複製したい物の形状型からの取り出し方を念頭において適切なシリコーン選びをすることが必要です。


1.用意する道具

シームレスシリコーンセット(硬化剤、計量スプーン、撹拌棒含む)、離型剤、刷毛、計量器、スチレンボード、油粘土、グルーガン
※点線内で囲まれた道具がシームレスシリコーンのパッケージに含まれています。


2.型を作る
今回はスチレンボードの板で型枠を作ります。スチレンボードをグルーガンを使って接着。シリコーンは液状です。漏れださないようにしっかり囲いを作りましょう。角にどうしても隙間ができてしまう場合は内側からもグルーガンを使って埋めていきます。

型枠の完成です。型枠は原型の大きさによってサイズが異なります。今回は内寸、縦95×横125×深さ110mmの型枠を作りました。ちなみに原型の大きさは縦65×横95×深さ80mm。原型よりも縦横深さが30mm大きい型枠を作りました。


3.原型の準備をする
今回原型として準備したのはこちら。3Dプリンターで出力したもので、よく見ると積層のピッチが粗く凸凹した部分があります。スポンジやすりを使いガタガタしている所をやすります

表面のへこんでいる部分が気になったのでパテ※で埋めました。またサーフェイサー※を吹き付け、表面をなめらかにしていきます。シリコーンは微細な凸凹もひろってしまうため、原型の表面処理は最終成果物にそのまま影響します。根気強くやすりましょう
※パテ…くぼみ、割れ、穴等の欠陥を埋めて、表面の平らさを向上させるために用いられる肉盛り用の塗料。
※サーフェイサー…段差、小キズ等を消して均一な質感にするため下地材。


4.原型を粘土で埋める
原型を型枠の中央に置き、写真のように原型の下半分までを粘土で埋めます。

原型と型枠の間は約1.5cmのスペースを空けています。このスペースはシリコーン型の壁ができる空間になります。また、原型の周りの粘土には鉛筆などで凹みをつくります。この凹みが後々樹脂を流し入れる際の型ずれを防ぐ重要な役割をはたします。


5.計量と攪拌
シリコーンも前半のワークショップで使用したウレタン樹脂同様、指定の混合比があり、シリコーンと硬化剤が混ざることで固形化します。シームレスシリコーンの混合比はシリコーン:硬化剤=100:5です。今回はシリコーン500gを使用するため、硬化剤は25g使用します。

シリコーンと硬化剤が均一に混ざるように攪拌棒で攪拌します。この時、混ざりづらい底の方もしっかり混ざるよう意識しましょう。攪拌が足りないと硬化不良の原因になります。


6.シリコーンを型に流す(1回目)
型に流し入れます。シリコーンは一気に流し込むと空気を巻き込んで気泡を含み、硬化後に穴として残ってしまいますゆっくり流していきましょう。

流し終わったら、型に振動を与えて気泡を出します。その後15時間硬化させます。シリコーンは高温高湿だと硬化が早くなります。そういった環境下で硬化させれば、時間を短縮することもできるようです。


7.シリコーン型1/2完成
シリコーンが完全に硬化したら型枠を外します。型の1/2が出来上がりました。

慎重に粘土を剥がしましょう。この時注意しなければならないのが原型が型から外れないように気をつけること。原型がシリコーン型から外れてしまうと、原型を元に戻しても間にわずかな隙間ができてしまいます。この後もう1度シリコーンを流す工程の際に、その隙間に流れ込んでしまう原因になってしまいます。型の精度が落ちることになります。


8.離型剤を塗る
今回使用する離型剤は、塗ると膜ができるタイプのものです。シリコーンはシリコーン同士で付着する性質があります。この後2度目のシリコーンを流す工程の時、既に硬化した1層目のシリコーンと2層目が付着しないように離型剤を塗りましょう。塗っておかないと、分割のできないシリコーンの塊になってしまいます…。

原型を避けて、シリコーンの表面のみに離型剤を塗ります。


9.シリコーンを型に流す(2回目)

シリコーンの周りをスチレンボードで再度囲みます。

残り半分にシリコーンを流し込みます。再び15時間硬化。


10.型枠をとる

囲っていたスチレンボードをはぎとります。密着している2層の型を開くと、中にパプリカの形の空洞ができています。また2つのシリコーン型の接合面には凸と凹ができており、組み合わさった時に型がズレないようにするはたらきをします。これを作るために粘土に鉛筆で穴を空ける工程が必要だったのです。


11.湯口(樹脂を流し入れるための注ぎ口)をカッターで彫る

最後に湯口をカッターで作ります。今回はパプリカの底面に湯口を作ることにしました。

なぜ原型の天地を逆にして湯口を作っているのか2つの理由があります。1つ目は今回の原型の形の場合、下の図のように、樹脂を流した時の空気の逃げ道を考えると原型の上からより下から流した方が空気が抜けやすいからです。2つ目は樹脂が完全に硬化した後、余分な箇所である湯口部分をニッパーで切った時にできるカット跡が底面側になり目立たないからです。このように原型の造形によって湯口の向きや空気の抜け方を予め考えておく必要があります

上面から見たところ。湯口となる穴が空きました。

以上で、シリコン型の完成です。

 

試しにウレタン樹脂を流し入れてみます。

複製品ができました。

 

シリコーン型の制作は手順が多くハードルを感じる方も多いかと思います。確かに手順は多いのですが、複製までできた時の達成感と喜びはかなりの大きさです…!今回のブログを参考に、ぜひ制作をしてみてくださいね。なおCMTELではシリコン型作成や樹脂成形に関する相談にものっています。原型に使う素材選びや仕上げ方、割り型を作る際の分割の仕方など、どういう複製品を作りたいかによって制作の方法が異なります。興味のある方はお気軽にCMTELにお越しください。

31 8月 

こんにちは。2017年月5月10日(水)〜6月1日(木)の期間限定で、作品展示・技術紹介「UVインクジェットプリント表現の幅」を開催しました。(※以下UV IJプリントと表記)UV IJプリントを用いて印刷されたポスター7作品を展示。UV IJプリント表現の可能性を、目で見て手で触れて感じられる内容でした。なお今回の作品は株式会社ショウエイ様よりお貸りしました。

今回のブログではUV IJプリントの特徴と可能な表現をご紹介します!

ポスター展示と併せて、作品が完成するまでのプロセスが分かるテスト印刷紙も展示しました。


●UVインクジェットプリントとは

インクが通常のインクジェットプリンターとは異なり、紫外線で固まる成分を含んだUVインクを用いています。プリントと同時に紫外線を照射し、素材にインクを瞬時に定着させます。インクをはじいてしまうような、表面がツルツルした素材にもプリントをすることが可能です。

「インクの厚盛り」「白インクでの表現」「紙以外にも印刷」…などなど通常のインクジェットではできない表現に富んでいます。小ロット印刷にも向いており、卒業制作個人制作でも活用できる印刷技術です。


ここからは実際に展示した作品に沿って、UV IJプリントでどういった表現が可能なのかを紹介していきます。


特徴その①「クリアインクで質感に変化が出せる」
クリアインクとはその名の通り、透明なインクで印刷面の最も外側の表層にプリントされます。表面の質感をツルツルにする事はもちろん、光沢感を抑えた絹目写真のような控えめな光沢感にすることも可能。質感のバリエーションは全4種類。光沢感の少ないものから順に、マットセミグロスグロスドロップグロスとなっています。こちらの作品ではマット、セミグロス、ドロップグロスを用いています。(制作 河野愛氏×佐藤裕氏

下の写真は左側がドロップグロスをプリントした色面。画面に透明感とみずみずしい印象を与えます。向かって右側のマットな質感とのコントラストがきれいです。

こちらの作品でもクリアインク(ドロップグロス)が使われています。(制作 杉田翔平氏

使用した紙は「エドワーズ ギフトライン・ブラック」。ツヤのある斜めのストライプ柄が元から入っている紙です。UV IJプリントのクリアインクを上から重ねると…

クリアインクの色面とストライプ柄とがレイヤー状に重なり、複雑なグラフィックが生まれます。一見黒い色面が多くをしめる作品ですが、光のあたり具合が変わると黒い画面からツヤのあるパターンが現れ出ます。思わず手が伸び、ポスター上の色々な柄を触れて確かめたくなります。


特徴その②「ホワイトインク」

ホワイトインクは他のインクに比べて隠蔽(いんぺい)性が高いため、紙地を隠すことが可能。こちらの作品を例にご紹介します。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

一見白い紙に銀の箔押しをしたかのようですが…そうではありません。元々の紙はこちらの「ミラルック シルバー 210g/m2」。

縁の白い色面は用紙の上にのせられたホワイトインクで表現されています。実際にポスターを触ってみるとわかるのですが、白い縁の方がシルバーの色面よりも1段盛り上がっています。ホワイトインクを使って地と図の関係を入れ替え、まるで銀箔を押したかのような擬似的な表現ができることに多くの方々が驚いていました。

こちらは特徴その①で紹介した作品のテストプリント用紙です。元々の紙地はメタリックなシルバーですが、向かって左側はホワイトインクをのせた上に青いカラーインクを重ねているため紙地の表情は透けて見えません。一方右側は紙地の上にホワイトインクをのせていないので、メタリックな質感が見えています。ホワイトを敷いておくかおかないかで、紙の質感を透かせて見せたりあえて見せなかったりする表現も画面に深みを与えます。


特徴その③「発色がよい」

実物はまるで蛍光ピンクのようなビビットな発色をしていたこちらの作品。一般的なオフセット印刷はCMYKのインク4色をかけ合わせることで表現するのに対して、UV IJプリントはCMYK、ライトシアン、ライトマゼンタの計6色を使います。インクが細分化され幅広い色をカバーできるため、混色が少なくて済み色の濁りを抑えることが可能。そのため高い彩度を表現することができるのです。(制作 杉田翔平氏

入稿データのカラーモードは一般的にはCMYKですが、UV IJプリントの場合はRGBの方が発色良く出力できます。またRGBデータをそのままプリントすることができるので、デジタルカメラで撮影した写真作品など色味を極力壊さずにプリントすることができるのも特徴です。作品中のグリーンの発色の良さも際立っていました。


特徴その④「インクの厚盛りができる」

UV IJプリントは、インクの上からさらに2重3重とインクを重ねることができます。つまりインクを立体的に盛り上げることが可能なのです。プリントする素材にもよりますが、1層あたりの厚さは約0.3mm。こちらの作品の1つ1つのドットはクリアインクを12層重ねて作られたものです(色の違いはカラーインクによるもの)。

この立体感は「プリント=平面的」という既成概念を覆す程。まるで紙の上に別の素材を貼っているかのようです。プリントだけで作られた作品だということに衝撃を受ける方も多くいました。(制作 石井勇一氏

こちらの作品ではホワイトインクを厚盛りにしています。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

手書きで書いたアルファベットの筆圧の強弱をホワイトインクの厚さで表現しています。例えば下の画像の「P」、ぎゅっと力を入れる部分は厚く3〜5層、軽い筆圧でさらっと書いた部分は1層でプリント。1つの色面の中に、レイヤー数を多く重ねる部分とそうでない部分を作ることで、なめらかな起伏を作ることができます。

こちらの作品では中央の白い色面をホワイトインクの厚盛りでプリントしています。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

この角度から見るとホワイトインクが上からのっているのがよく分かります。


特徴その⑤「紙以外の素材にも印刷可能」
表面がツルツルしたメタリックな紙やホログラム紙はもちろん、5cmまでの厚さなら紙以外の素材にもプリントが可能です。例えば、アクリル板・木の板材・金属板など。ただし表面フラットでなければなりません。最大プリント可能サイズ1.3×2.5m

左は金属の板に白インク、右は黄緑色のアクリル板に黒いカラーインクをプリントしたもの。


●今回の展示を通して寄せられた質問
Q1「厚盛りをしたい場合の入稿データの作り方は?」
オペレーターと打合せでインクの厚盛りイメージを共有した後、オペレーターがデータの作成をします。綿密な打合せが必要となるため、対面での打合せをする方が多いそうです。さらにテスト印刷(A4サイズ1枚あたり約5,000円〜10,000円)をして、それをベースにインクの盛り上げの指示を詳細に決めていきます。

Q2「クリアインクやホワイトインクを使う際の入稿データの作り方は?」
カラーデータ(RGB)とは別のファイルに分けるか、同じデータ内でレイヤーを分けておく必要があります。

Q3「印刷をする紙や素材の手配は?」
持ち込みもしくは、ショウエイ様に手配を依頼することも可能です。

Q4「印刷物はもう見られないの?」「価格が知りたい」
ポスター作品は返却してしまったためありませんが、CMTELではサンプルと印刷価格表を常時展示しています。気になる方はぜひご覧ください。

 

今回のUV IJプリント技術を通して、平面作品は2次元ではなく薄い3次元だということに気付きました。大判インクジェットプリンタが普及した2000年代から10年以上経ちますが、それから格段に表現の幅を広げるこの技術を学生が知り制作に繋がればと思います。インクジェットプリントでは表現できない質感・色・立体感が、個人制作レベルでも使えるUV IJプリント技術、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

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作品展示・技術紹介「UVインクジェットプリント表現の幅」は以下の企業様・デザイナー様にご協力いただき開催しました。(順不同)

株式会社ショウエイ
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平和紙業株式会社
heiwa
宮前陽氏

渡辺美里氏

杉田翔平氏

石井勇一氏

河野愛氏

佐藤裕氏