14 9月 

こんにちは。2017年7月15日(土)、16日(日)のオープンキャンパスにて「マテリアルワークショップ~アクセサリーバッジをつくろう!~」を開催しました。2日間で合計282名の方にご参加いただき、すべての回が満員となりました。

このワークショップは、透明樹脂(UVレジン)といろいろな素材を組み合わせ、アクセサリーバッジをつくる体験ができるというものでした。

UVレジンとは紫外線を当てることにより固まる樹脂のことで、身近で使われている例としてはジェルネイルがあげられます。樹脂特有の臭いもほとんどなく、紫外線を照射するUVライトを使えば5分ほどで制作ができます。扱いやすい上に失敗も少ないので、初めて樹脂を扱う方でも気軽に楽しめます。

当日は、樹脂の取り扱いに長けた学生インストラクターが各作業テーブルについてレクチャーを行いました。
では実際どのようなワークショップを行なっていたのか、ご紹介します!

.素材を選ぶ
台の上に並べられた素材の中から好きなパーツを選びます。

アルファベットや動物の形をしたパスタや、

透明なカラーセロファンをカッティングマシンでカットしたもの。

3Dプリンターでプリントした造形物とその端材。トウモロコシのデンプンから作られたポリ乳酸というプラスチックを使ってできています。

こちらは、ワックスコードを短くカットしたもの。

この他にも、CMTELならではの特殊な素材もありました。その中から珍しい素材をいくつかご紹介します。

「スチレンビーズ」(協力 積水化成品工業株式会社様)
画像左側は、発泡スチロールの原材料”原料ビーズ”(ポリスチレンの粒)です。およそ0.4mmほどのビーズの中には発泡材のガスが含まれています。蒸気をあて加熱させることで50倍以上に膨らみます。向かって右側は原料ビーズを予備発泡させた“発泡ビーズ”です。

さらに発泡ビーズを金属の型に入れ、もう一度蒸気をあて成形することで膨らんだビーズ同士が熱でくっつきます。そうして普段見慣れている生鮮食料品用の保冷梱包材緩衝材が作られるのです。

今回は原料ビーズ、発泡ビーズの両方を揃えました。原料ビーズの段階ではビビットな色半透明ですが、発泡ビーズになると乳白色・不透明色になります。触り心地も発泡前は硬いですが、発泡後はビーズ内のガスが膨らみスポンジ状になるため柔らかく弾力をもちます。日常生活では見ることのできない、身の回りの物の元の姿に驚きです。


「メッシュ」
(協力 株式会社NBCメッシュテック様)
網戸やふるいなどでなじみ深いメッシュですが、実は家電製品や自動車内のフィルター音響機器のスピーカー部材など日常生活のあらゆるところで幅広く使われています。

今回は4種類のメッシュをレーザー加工機でカットしたパーツを準備しました。

画像一番左の編み目が三角形になっているメッシュはコンクリートの補強材として利用されています。繊細なイメージのあるメッシュが建材の一部として活用されていることに驚きました。一般的には目にすることのできない貴重なメッシュです。

縦横だけでなく三軸方向に織っているのは、三方向に対して強度を保たせる機能のための造形です。元々メッシュの織り目がもつ構造の美しさは、柄という観点においても魅力的です。

他にも、暗い所で光る蓄光(ちっこう)繊維を織り込んだものや、蛍光ピンクのメッシュは靴や鞄の試作品に使われているもの、撥水加工されているものなど種類が豊富です。


「ケミカルウッド」
(協力 株式会社ミナロ様)
加工性や環境性に優れた、言葉通り人工の木材です。木のように木目がなく繊維の方向を気にせず加工ができ、色で硬度が分かれているので用途に合わせて選ぶこともできます。また、着色性にも富んでいるので模型フィギュアの製作でも多く使われています。ものづくりの可能性をひろげる使い勝手のよい素材です。多摩美生もよくお世話になっています。


番外編「UVレジンと相性の良くなかった素材」
ワークショップに使用する素材の準備・検証をしていく中で、上手くいかない素材がありました。せっかくなので、ここで余談としてその例もご紹介します。
一つ目は、水分を含むもの。植物や食べ物など、水分をもつ素材は硬化する際、気泡ができたり表面に凹凸ができてしまうことも。下の画像は押し花を封入した試作品です。わずかに残っていた水分が原因だと思われます。

二つ目は、UVレジン液を吸い込んでしまうもの。例をあげると、スポンジフェルト状の布です。浸み込んでしまうと素材の内部に紫外線が届かないため固まりません。UVライトを20分照射してもベタつきが残りました。

今後UVレジンを使う際は、良ければ参考にして素材を選んでみてくださいね。

.シリコンの型にパーツを並べる
ここからは作業用テーブルへ移動し、学生トレーナーの元いよいよ作業スタート。

今回型に使ったのは、直径3cm、厚さ5mmの正円の型です。完成時の表面底側・上側どちらになるのか考えながら、選んだパーツを自由にレイアウトします。皆さん真剣になって爪楊枝やピンセットを使って慎重に並べていました。


.UVレジンを流す
並べ終わったら、UVレジンを流していきます。UVレジンは厚くなりすぎると紫外線が中までよく通らず、表面にベタつきが残ったり固まらない原因になるので8分目を目安に。注ぎ終わったら、パーツ同士の隙間に入ってしまった空気を爪楊枝で除いたり位置の微調整を行います。綺麗な完成を目指して思わず熱の入ってしまうところです。


.UVライトをあてて固める
今回使用したUVレジンは太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線の量ではすぐに固まりません。専用の機材であるUVライトで固めていきます。UVライトが青く光っている時が紫外線の出ている時です。

まず庫内に型を並べます。それから、表側から2分、シリコン型ごとひっくり返し裏側から2分計4分紫外線をあてていきます。天地を変えるのは紫外線をまんべんなく照射するためです。

固まるまでの待ち時間は、多摩美の話、素材の話、UVレジンの話……様々な話で盛り上がりました。


.型から取り出す
つい先程まで液状だったUVレジンが…カチカチに固まりました!UVレジンは固まる時に高温の熱を発生します。十分冷まして型から取り出しましょう。

 

.ピンをつける
最後に、UVレジンを接着剤代わりにピンバッジ用の金属パーツをつけていきます。そして、再度UVライトを2分あてて固まるのを待ちます。

 

.完成です!!!

ここで完成品をいくつかご紹介!
原料ビーズ発泡ビーズを使用した作品です。左側の作品は原料ビーズの透明感が生きています。右側は発泡ビーズを用いた作品で、乳白色の柔らかい色合いがかわいいです。

UVレジンの硬化時に発する熱で、よく見ると部分的にビーズが膨らみ色も白っぽくなっています。硬化前と後で起こるビーズの表情の変化を観察する参加者もいました。

こちらはメッシュを使った作品。言うまでもなくメッシュは空気を通すので、UVレジンを注いだ時に入ってしまう気泡の泡抜けが良かったです。また、UVライトを当てて硬化させる時にも、紫外線がメッシュの穴を通過するため硬化の防げになりません。UVレジンとの相性は抜群です。

ケミカルウッドを用いた作品です。硬さの違う3種類のケミカルウッドだけで作られたシンプルなバッジです。

オレンジ色のケミカルウッドは、彫刻刀やカッター簡単に削ることができます

それから、3Dプリンタ造形端材を大胆に使ったものです。立体的であえて思い切り飛び出させるのもおもしろいですね。

左はワックスコードに一手間を加えてリボン結びにしたものを封入しています。中央はケミカルウッドワックスコードを使い花のように見立てています。素材の組み合わせが面白いです。右は3Dプリンタの端材を短く切り使用しています。多数ある端材の中から選んだ色の組み合わせにセンスを感じます。

 

今年のワークショップでも、お子様から大人の方、学生や受験生、たくさんの方が体験に来てくださいました。聞いたことはあるけれど使ったことはなかった材料や初めて見た素材に、実際に触れて、つくってみて、ものづくりの楽しさを感じていただけたようです。今回参加できなかった皆さんも、ぜひ来年参加してみてください!

05 9月 

こんにちは。2017年6月7日(水)、8日(木)に樹脂成型による多摩美リングのワークショップを行いました。今回のブログでは当日の様子に加え、後半ではシリコン型の作り方をご紹介します。(樹脂成型で失敗しないためのコツはこちら)今回のワークショップは日新レジン株式会社様にご協力をいただきました。


1回定員30名の予約制で参加者を募集し、2日間で計4回開催。毎年恒例のこのワークショップは、学生に「樹脂の基本的な特徴や扱い方を学ぶこと」「樹脂を身近な素材として知り、制作に活かすこと」を目的としています。

 

●講義「樹脂の性質と扱い方」
まず初めに講義を受け、樹脂についての予備知識を頭に入れます。


●実験「ウレタン樹脂に水を混ぜてみる」
ウレタン樹脂の特徴の1つに、湿気や水分の影響を受けやすいという点があります。では、水分が加わるとどのような現象が起こるのでしょうか。ウレタン樹脂にあえて水を入れ、攪拌(かくはん)※します。数十秒後、ぶくぶくと気体を出しながら発泡し固まりました。下の画像の左側は正常に固まったもの、右は水を加えたものです。
※攪拌…かき混ぜること

水の影響を受けると気泡の多い穴だらけの硬化物になります。


●実習「樹脂を使ってみよう」
実験のあとは、スタッフのいる各テーブルに移りいよいよ実習です。

1.型の準備
今回CMTELが用意したシリコーン型は2つに分割できる 割型(わりがた) という形状をしています。

シリコーン型の内側のゴミやカスを取り除いてから、離型剤(りけいざい)スプレーを散布します。

スプレーの散布後、型をしっかり固定するためにガムテープを型の周りに巻きます。樹脂を流し込んだ際に割型のすき間から漏れ出てしまうことを防ぎます。これでシリコーン型の準備は完了です。

素材メーカーの技術の方からも専門的なアドバイスをもらいながら進んでいきます。


2.計量

次は樹脂を扱う上で重要な計量です。今回使用するウレタン樹脂は発熱しながら硬化する2液性の樹脂です。主剤・硬化剤を1:1で混合します。


3.撹拌(かくはん)

主剤の中に硬化剤を入れ撹拌棒で約20秒しっかりとかき混ぜます。攪拌のコツを知りたい方はこちら


4.注入

撹拌が終わったらシリコーン型に素早く注ぎ入れていきます。

注型が完了しました。後は10〜15分程硬化を待ちます。完全に硬化するのは24時間後。


5.脱型(だっけい)

硬化が完了したら、型をグネグネとひねらせリングを抜き取ります。シリコーン製の型は伸びる性質を持っているため、手で形をゆがませることが可能です。


6.完成

リング以外の余分な部分をニッパーで切りおとし、切断面をやすりで整えて完成です。

ワークショップは以上で終了です。今回のワークショップは、学生にとって樹脂の特性や扱い方を体感しながら学ぶことのできた機会となったようです。

今回ご協力いただいた日新レジン株式会社様では、今回使用したウレタン樹脂とブログで登場したシームレスシリコーンの他にも透明な封入用樹脂(クリスタルレジンNeo)や、グミのように柔らかい樹脂(グミーキャスト)、また樹脂専用の着色剤なども取り扱っています。様々なサンプルをCMTELにも展示していますので、是非一度お越しになりご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・日新レジン株式会社様にご協力いただきました。

 

 

ここからはシリコーン型の作り方です。写真を交えながら、ちょっとしたコツなどもご紹介していきます。

制作手順を紹介「シリコーン型の作り方」
今回作る型はワークショップで使用したものと同じ、割型(わりがた)です。2分割の割型を作るので、今回はシリコーンを2回に分けて流すことになります。

日新レジンのシリコーンゴムにはクイックシリコーン※とシームレスシリコーン※の2種類があります。
シームレスシリコーン…引き裂き強度に優れており、複雑な形状のものの型取り適しています。
クイックシリコーン…硬化速度が速く、型作りの時間を短縮できます。硬度が高いため、分割型に適しています。

本来、割り型にはクイックシリコーンの方が向いているのですが、今回はシームレスシリコーンを使用しています。理由は、原型が有機的でやや複雑な形をしているためです。またシームレスシリコーン型は柔らかいため注型物が取り出しやすい点も加味しました。複製したい物の形状型からの取り出し方を念頭において適切なシリコーン選びをすることが必要です。


1.用意する道具

シームレスシリコーンセット(硬化剤、計量スプーン、撹拌棒含む)、離型剤、刷毛、計量器、スチレンボード、油粘土、グルーガン
※点線内で囲まれた道具がシームレスシリコーンのパッケージに含まれています。


2.型を作る
今回はスチレンボードの板で型枠を作ります。スチレンボードをグルーガンを使って接着。シリコーンは液状です。漏れださないようにしっかり囲いを作りましょう。角にどうしても隙間ができてしまう場合は内側からもグルーガンを使って埋めていきます。

型枠の完成です。型枠は原型の大きさによってサイズが異なります。今回は内寸、縦95×横125×深さ110mmの型枠を作りました。ちなみに原型の大きさは縦65×横95×深さ80mm。原型よりも縦横深さが30mm大きい型枠を作りました。


3.原型の準備をする
今回原型として準備したのはこちら。3Dプリンターで出力したもので、よく見ると積層のピッチが粗く凸凹した部分があります。スポンジやすりを使いガタガタしている所をやすります

表面のへこんでいる部分が気になったのでパテ※で埋めました。またサーフェイサー※を吹き付け、表面をなめらかにしていきます。シリコーンは微細な凸凹もひろってしまうため、原型の表面処理は最終成果物にそのまま影響します。根気強くやすりましょう
※パテ…くぼみ、割れ、穴等の欠陥を埋めて、表面の平らさを向上させるために用いられる肉盛り用の塗料。
※サーフェイサー…段差、小キズ等を消して均一な質感にするため下地材。


4.原型を粘土で埋める
原型を型枠の中央に置き、写真のように原型の下半分までを粘土で埋めます。

原型と型枠の間は約1.5cmのスペースを空けています。このスペースはシリコーン型の壁ができる空間になります。また、原型の周りの粘土には鉛筆などで凹みをつくります。この凹みが後々樹脂を流し入れる際の型ずれを防ぐ重要な役割をはたします。


5.計量と攪拌
シリコーンも前半のワークショップで使用したウレタン樹脂同様、指定の混合比があり、シリコーンと硬化剤が混ざることで固形化します。シームレスシリコーンの混合比はシリコーン:硬化剤=100:5です。今回はシリコーン500gを使用するため、硬化剤は25g使用します。

シリコーンと硬化剤が均一に混ざるように攪拌棒で攪拌します。この時、混ざりづらい底の方もしっかり混ざるよう意識しましょう。攪拌が足りないと硬化不良の原因になります。


6.シリコーンを型に流す(1回目)
型に流し入れます。シリコーンは一気に流し込むと空気を巻き込んで気泡を含み、硬化後に穴として残ってしまいますゆっくり流していきましょう。

流し終わったら、型に振動を与えて気泡を出します。その後15時間硬化させます。シリコーンは高温高湿だと硬化が早くなります。そういった環境下で硬化させれば、時間を短縮することもできるようです。


7.シリコーン型1/2完成
シリコーンが完全に硬化したら型枠を外します。型の1/2が出来上がりました。

慎重に粘土を剥がしましょう。この時注意しなければならないのが原型が型から外れないように気をつけること。原型がシリコーン型から外れてしまうと、原型を元に戻しても間にわずかな隙間ができてしまいます。この後もう1度シリコーンを流す工程の際に、その隙間に流れ込んでしまう原因になってしまいます。型の精度が落ちることになります。


8.離型剤を塗る
今回使用する離型剤は、塗ると膜ができるタイプのものです。シリコーンはシリコーン同士で付着する性質があります。この後2度目のシリコーンを流す工程の時、既に硬化した1層目のシリコーンと2層目が付着しないように離型剤を塗りましょう。塗っておかないと、分割のできないシリコーンの塊になってしまいます…。

原型を避けて、シリコーンの表面のみに離型剤を塗ります。


9.シリコーンを型に流す(2回目)

シリコーンの周りをスチレンボードで再度囲みます。

残り半分にシリコーンを流し込みます。再び15時間硬化。


10.型枠をとる

囲っていたスチレンボードをはぎとります。密着している2層の型を開くと、中にパプリカの形の空洞ができています。また2つのシリコーン型の接合面には凸と凹ができており、組み合わさった時に型がズレないようにするはたらきをします。これを作るために粘土に鉛筆で穴を空ける工程が必要だったのです。


11.湯口(樹脂を流し入れるための注ぎ口)をカッターで彫る

最後に湯口をカッターで作ります。今回はパプリカの底面に湯口を作ることにしました。

なぜ原型の天地を逆にして湯口を作っているのか2つの理由があります。1つ目は今回の原型の形の場合、下の図のように、樹脂を流した時の空気の逃げ道を考えると原型の上からより下から流した方が空気が抜けやすいからです。2つ目は樹脂が完全に硬化した後、余分な箇所である湯口部分をニッパーで切った時にできるカット跡が底面側になり目立たないからです。このように原型の造形によって湯口の向きや空気の抜け方を予め考えておく必要があります

上面から見たところ。湯口となる穴が空きました。

以上で、シリコン型の完成です。

 

試しにウレタン樹脂を流し入れてみます。

複製品ができました。

 

シリコーン型の制作は手順が多くハードルを感じる方も多いかと思います。確かに手順は多いのですが、複製までできた時の達成感と喜びはかなりの大きさです…!今回のブログを参考に、ぜひ制作をしてみてくださいね。なおCMTELではシリコン型作成や樹脂成形に関する相談にものっています。原型に使う素材選びや仕上げ方、割り型を作る際の分割の仕方など、どういう複製品を作りたいかによって制作の方法が異なります。興味のある方はお気軽にCMTELにお越しください。

31 8月 

こんにちは。2017年月5月10日(水)〜6月1日(木)の期間限定で、作品展示・技術紹介「UVインクジェットプリント表現の幅」を開催しました。(※以下UV IJプリントと表記)UV IJプリントを用いて印刷されたポスター7作品を展示。UV IJプリント表現の可能性を、目で見て手で触れて感じられる内容でした。なお今回の作品は株式会社ショウエイ様よりお貸りしました。

今回のブログではUV IJプリントの特徴と可能な表現をご紹介します!

ポスター展示と併せて、作品が完成するまでのプロセスが分かるテスト印刷紙も展示しました。


●UVインクジェットプリントとは

インクが通常のインクジェットプリンターとは異なり、紫外線で固まる成分を含んだUVインクを用いています。プリントと同時に紫外線を照射し、素材にインクを瞬時に定着させます。インクをはじいてしまうような、表面がツルツルした素材にもプリントをすることが可能です。

「インクの厚盛り」「白インクでの表現」「紙以外にも印刷」…などなど通常のインクジェットではできない表現に富んでいます。小ロット印刷にも向いており、卒業制作個人制作でも活用できる印刷技術です。


ここからは実際に展示した作品に沿って、UV IJプリントでどういった表現が可能なのかを紹介していきます。


特徴その①「クリアインクで質感に変化が出せる」
クリアインクとはその名の通り、透明なインクで印刷面の最も外側の表層にプリントされます。表面の質感をツルツルにする事はもちろん、光沢感を抑えた絹目写真のような控えめな光沢感にすることも可能。質感のバリエーションは全4種類。光沢感の少ないものから順に、マットセミグロスグロスドロップグロスとなっています。こちらの作品ではマット、セミグロス、ドロップグロスを用いています。(制作 河野愛氏×佐藤裕氏

下の写真は左側がドロップグロスをプリントした色面。画面に透明感とみずみずしい印象を与えます。向かって右側のマットな質感とのコントラストがきれいです。

こちらの作品でもクリアインク(ドロップグロス)が使われています。(制作 杉田翔平氏

使用した紙は「エドワーズ ギフトライン・ブラック」。ツヤのある斜めのストライプ柄が元から入っている紙です。UV IJプリントのクリアインクを上から重ねると…

クリアインクの色面とストライプ柄とがレイヤー状に重なり、複雑なグラフィックが生まれます。一見黒い色面が多くをしめる作品ですが、光のあたり具合が変わると黒い画面からツヤのあるパターンが現れ出ます。思わず手が伸び、ポスター上の色々な柄を触れて確かめたくなります。


特徴その②「ホワイトインク」

ホワイトインクは他のインクに比べて隠蔽(いんぺい)性が高いため、紙地を隠すことが可能。こちらの作品を例にご紹介します。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

一見白い紙に銀の箔押しをしたかのようですが…そうではありません。元々の紙はこちらの「ミラルック シルバー 210g/m2」。

縁の白い色面は用紙の上にのせられたホワイトインクで表現されています。実際にポスターを触ってみるとわかるのですが、白い縁の方がシルバーの色面よりも1段盛り上がっています。ホワイトインクを使って地と図の関係を入れ替え、まるで銀箔を押したかのような擬似的な表現ができることに多くの方々が驚いていました。

こちらは特徴その①で紹介した作品のテストプリント用紙です。元々の紙地はメタリックなシルバーですが、向かって左側はホワイトインクをのせた上に青いカラーインクを重ねているため紙地の表情は透けて見えません。一方右側は紙地の上にホワイトインクをのせていないので、メタリックな質感が見えています。ホワイトを敷いておくかおかないかで、紙の質感を透かせて見せたりあえて見せなかったりする表現も画面に深みを与えます。


特徴その③「発色がよい」

実物はまるで蛍光ピンクのようなビビットな発色をしていたこちらの作品。一般的なオフセット印刷はCMYKのインク4色をかけ合わせることで表現するのに対して、UV IJプリントはCMYK、ライトシアン、ライトマゼンタの計6色を使います。インクが細分化され幅広い色をカバーできるため、混色が少なくて済み色の濁りを抑えることが可能。そのため高い彩度を表現することができるのです。(制作 杉田翔平氏

入稿データのカラーモードは一般的にはCMYKですが、UV IJプリントの場合はRGBの方が発色良く出力できます。またRGBデータをそのままプリントすることができるので、デジタルカメラで撮影した写真作品など色味を極力壊さずにプリントすることができるのも特徴です。作品中のグリーンの発色の良さも際立っていました。


特徴その④「インクの厚盛りができる」

UV IJプリントは、インクの上からさらに2重3重とインクを重ねることができます。つまりインクを立体的に盛り上げることが可能なのです。プリントする素材にもよりますが、1層あたりの厚さは約0.3mm。こちらの作品の1つ1つのドットはクリアインクを12層重ねて作られたものです(色の違いはカラーインクによるもの)。

この立体感は「プリント=平面的」という既成概念を覆す程。まるで紙の上に別の素材を貼っているかのようです。プリントだけで作られた作品だということに衝撃を受ける方も多くいました。(制作 石井勇一氏

こちらの作品ではホワイトインクを厚盛りにしています。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

手書きで書いたアルファベットの筆圧の強弱をホワイトインクの厚さで表現しています。例えば下の画像の「P」、ぎゅっと力を入れる部分は厚く3〜5層、軽い筆圧でさらっと書いた部分は1層でプリント。1つの色面の中に、レイヤー数を多く重ねる部分とそうでない部分を作ることで、なめらかな起伏を作ることができます。

こちらの作品では中央の白い色面をホワイトインクの厚盛りでプリントしています。(制作 宮前陽氏×渡辺美里氏

この角度から見るとホワイトインクが上からのっているのがよく分かります。


特徴その⑤「紙以外の素材にも印刷可能」
表面がツルツルしたメタリックな紙やホログラム紙はもちろん、5cmまでの厚さなら紙以外の素材にもプリントが可能です。例えば、アクリル板・木の板材・金属板など。ただし表面フラットでなければなりません。最大プリント可能サイズ1.3×2.5m

左は金属の板に白インク、右は黄緑色のアクリル板に黒いカラーインクをプリントしたもの。


●今回の展示を通して寄せられた質問
Q1「厚盛りをしたい場合の入稿データの作り方は?」
オペレーターと打合せでインクの厚盛りイメージを共有した後、オペレーターがデータの作成をします。綿密な打合せが必要となるため、対面での打合せをする方が多いそうです。さらにテスト印刷(A4サイズ1枚あたり約5,000円〜10,000円)をして、それをベースにインクの盛り上げの指示を詳細に決めていきます。

Q2「クリアインクやホワイトインクを使う際の入稿データの作り方は?」
カラーデータ(RGB)とは別のファイルに分けるか、同じデータ内でレイヤーを分けておく必要があります。

Q3「印刷をする紙や素材の手配は?」
持ち込みもしくは、ショウエイ様に手配を依頼することも可能です。

Q4「印刷物はもう見られないの?」「価格が知りたい」
ポスター作品は返却してしまったためありませんが、CMTELではサンプルと印刷価格表を常時展示しています。気になる方はぜひご覧ください。

 

今回のUV IJプリント技術を通して、平面作品は2次元ではなく薄い3次元だということに気付きました。大判インクジェットプリンタが普及した2000年代から10年以上経ちますが、それから格段に表現の幅を広げるこの技術を学生が知り制作に繋がればと思います。インクジェットプリントでは表現できない質感・色・立体感が、個人制作レベルでも使えるUV IJプリント技術、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

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作品展示・技術紹介「UVインクジェットプリント表現の幅」は以下の企業様・デザイナー様にご協力いただき開催しました。(順不同)

株式会社ショウエイ
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平和紙業株式会社
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宮前陽氏

渡辺美里氏

杉田翔平氏

石井勇一氏

河野愛氏

佐藤裕氏

18 7月 

こんにちは。2016月12月7日(水)に孔版印刷のワークショップを行いました。 講師としてレトロ印刷JAM様より山本氏・伯田氏、理想化学工業株式会社様より澤田氏をお招きし、デモンストレーションを交えながら製版〜印刷までのプロセスを体験できる内容でした。今回のブログでは当日の様子にあわせて、シルクスクリーンで失敗しないためのコツをご紹介!

 

●講義「孔版印刷について」
まず初めに予備知識を学びます。孔版印刷とはスクリーン状の版に細かい孔(あな)を開け、そこからインクを紙や布に押し出す印刷技法。シルクスクリーンや、ステンシルなどを総称して孔版印刷と呼びます。現在のシルクスクリーンは、江戸小紋や伊勢型紙などの日本の捺染(なっせん)型紙の技術を元に開発されたものです。Tシャツやトートバッグへのプリントにも使われている身近な印刷技術です。

従来、シルクスクリーンの版を作るには多くの手間時間機材暗室、そしてテクニックが不可欠でした。しかし今回はそれらを大幅に短縮する「デジタル製版機」を使って版を作ります。こちらがデジタル製版機「ゴッコプロ」。マシンの中には紗(しゃ)となるフィルムがロール状になってセットされています。

このフィルムは樹脂層メッシュ層2層構造になっています。このフィルムをマシンに通し、サーマルヘッドで熱をかけると樹脂層だけに微細な孔が開く仕組みです。孔の開いた部分がインクののる色面になります。

機械とパソコンを繋いでIllustratorで作ったデータを送ります。するとデータ通りの図案がフィルムに開きます。インクをのせたい色面を、データ上では黒色で表現します。プリンタ感覚で出力が可能で、1枚の紗が100秒で完成しました。このように特別な技術を必要としないので紗に出来不出来がなく、高いクオリティーを一定に保った紗を作ることができます。

●下準備「枠に紗(しゃ)を張る」
紗とは、インクを通す(樹脂層に孔があいている)部分と通さない(孔があいていない)部分をもつシルクスクリーンの網目状の版のことです。今回紗に使用したのは70メッシュ。メッシュの数は網目の細かさを表し、数字が大きくなる程目が細かくなります。精細な図案の印刷ができ、印刷解像性が高くなります。

70メッシュの他には、120メッシュ・200メッシュ等があります。数字の大きなメッシュは細い線の表現ができる一方、インクの種類によっては目が詰まりやすく、こまめな洗浄が必要です。そのため図案のデザインどのインクで刷りたいかによって、適したメッシュ数を選ぶ必要があります。

今回はこの後の特殊加工に使うホットバインダー(粒子が大きく目詰まりを起こしやすい)で刷ることをふまえて、70メッシュを選択。70メッシュは0.35mm幅の線以上の太さなら印刷可能なので、予めその点も頭に入れてデータを作る必要があります。

1.使った道具
シルクスクリーンには紗を張るための枠が必要です。今回使ったSURIMACCAはレゴのようにパーツを連結させて7通りのサイズの枠ができるフレームパーツです。(詳細はこちら) 今回はSサイズ(200×200mm)の紗を使うので、青色と黄色のパーツを使います。なお、紗は参加者が事前に製作したデータから出力したオリジナルデザインのものを準備しました。

2.枠を組み立てる
組み立てにはちょっとしたコツが。まずコの字型に組み立てます。それを2つ作ります。その後2つのコの字同士連結させます。ぐるりと一周するように組んでしまうと最後の1パーツが繋げにくくなってしまうからです。組んだ後は連結部分に隙間が無いようにギュッと枠をしめます。

3.裏側から紗を張る
枠を裏返し、紗のツルツルした面にして置きます。付属のゴムとローラーを使って紗を張っていきます。(詳しくはこちら

通常のシルクスクリーンでは紗をたるみなくピンと張るには慣れが必要です。しかしSURIMACCAを使い、皆さん初めてでもうまく張ることができました。でき上がった版の紗は、従来のシルクスクリーンと遜色ないほどの高いテンションで張ることができました。

 

●実習1「紙・布用インクを刷る」
今回プリントをする素材は参加者に持ってきてもらいました紙袋やトートバッグなど色々なものが集まりました。インクは準備してある10色以上の中から1つを選択。

1.インクはたっぷり使う
紗の図案部分の幅をカバーできる量のインクをおいていきます。スキージで刷る時、図案途中で紗の上のインクが尽きてしまうとかすれの原因になってしまいます。刷り終わった後、版に余ったインク再利用することができます。乾燥して固まりができていなければ、密閉容器に入れてとっておきましょう。

2.スキージで紙布用インクを刷る
この時のコツは以下の3つ。

 ・“ジー”という音がたつ位の力加減で刷ること
思っていた以上に手に力を入れなければこの音はでませんでした。

 ・スキージは深くつかみ、指を広げてしっかりと持つこと
スキージ全体均等にかかるようにしないと、力のかかっていない部分のインクが厚くなってしまいます。
力のかかりムラを起こさないよう図案の大きさに応じてスキージのサイズを選ぶことも大切です。

 ・スキージの角度を45°にすること
スキージが傾きすぎると、インクが余分に孔を通り抜けてしまいにじみの原因に。

それではこの3点を意識しながら刷ってみましょう。刷っている最中に版が動いてしまわないよう近くの人に枠を押さえてもらいます。


刷っている最中に枠が動くと、この様に図案がブレてしまいます。枠はしっかりと固定しましょう。

色々な特殊紙に刷る実験をしている学生も。表面がつるつるとしたメタリックな紙へのプリントもうまくいきました。

紙袋等厚みのあるものは中に板や厚紙を中に入れてプリントします。印刷面がフラットになるよう高さを調整すると、マチ部分の凹凸でインクがたまることを防ぐことができます。へのプリントは以上で完成です!

3.布へのプリントは仕上げにアイロンをかける
布製品にしたプリントは洗濯すると落ちてしまうのでアイロンを当てましょう。インクは熱で定着します。

 

●実習2「金箔・銀箔を転写する」
箔とは金・銀のメタリックな質感をもつ転写フィルムです。このフィルムをホットバインダーを刷った箇所にのせアイロンをかけると定着し、箔の加工ができます。

1.ホットバインダーを刷る
ホットバインダーとは箔フィルムや起毛シートを印刷物に転写するための接着剤です。インクではありません。加熱することで溶け、接着力を発揮します。紙布用インクより粘り気が強く粒子が大きくザラザラしています。刷り方は布用インクと同じで、版の上にのせてスキージで刷って使用します。

ホットバインダーは色が半透明でプリントした場所が見えにくくなるため、裏技として紙布用インクを少量混ぜておく刷った場所が見えやすくなります。こうすることで、次の工程で箔を重ねる際の目印になります。また、ホットバインダーは2回刷りましょう。より厚くホットバインダーを付着させておくことで、箔をしっかりとつけることができます。

印刷後はすぐに濡れたウエスで版を裏側から拭きましょう。ホットバインダーは紙布用インク以上に早く乾燥しやすい性質を持っています。乾いてしまうと版の目が詰まり、版自体が使えなくなってしまうので要注意。ウエスの水分を与えることで目詰まりを防ぐことができます。

2.熱圧着する
アイロンを150℃に温めます。使用するアイロンのかけ面には蒸気孔の穴がないものを使用します。蒸気孔のあるものだと穴の跡がついてしまうことがあります。またアイロン台は表面が柔らかいものだとかけた圧力が分散してしまうため、硬い板(厚紙でも可)がおすすめ。

バインダーを刷った部分の上に箔を重ねます。さらにその上に料理用のクッキングシートを被せ、アイロンを3秒程軽くあてます。

クッキングシートの上からウエスで優しくなでます。ホットバインダーと箔の間に残っている空気を抜き、しっかりと密着させるためです。

箔がずれないように気をつけながら、さらに20秒加熱。しっかりと体重を乗せ圧力をかけます。

3.熱が完全に冷めたら箔フィルムを剥がす
ホットバインダーを使った転写で、最も重要なポイントがここです。フィルムを剥がしたくなる気持ちをぐっと堪えましょう…!冷める間に熱で溶けたホットバインダーと箔とが、しっかりと固着します。熱が冷めないままフィルムを剥がしてしまうと、固着が不十分で箔がまだらについて失敗します。十分冷えたらフィルムをゆっくりと剥がし完成。


 

●実習3「起毛加工をする」
ここで使用するのは起毛シートホットバインダー。起毛シートとは台紙の上に短い毛がついているシートです。加工した面はベロアのようにふわふわした肌触りになります。こちらでもホットバインダーを使い、箔と同じ要領で定着させていきます。

1.ホットバインダーを刷る
箔の加工時と同じく、ホットバインダーを2回刷り終わった後はすぐに濡れたウエスで版を拭きます。

2.熱圧着する
箔の時よりもアイロンの温度を上げ165℃にします。起毛シートは、白い台紙を上にしケバケバした面が下になるよう重ねます。クッキングシートの上からアイロンで軽く3秒加熱した後、クッキングシートを重ねたまま上から布でなでて空気を抜きます。その後再びアイロンで20秒しっかりと圧着します。

3.熱が完全に冷めたら台紙をはがす
何度も繰り返しますが、ここでもやはり焦りは禁物です!冷えてから台紙をはがすと…プリント面がふわふわケバケバになります。講師陣の経験とアドバイスのおかげで、起毛シートに初めて挑戦するにもかかわらず、皆さん順調に加工ができました。

ちなみに、冷めきらないうちに台紙をはがしてしまうとこんなことに…。温かい状態だと接着があまく、毛をプリント面に定着させることができません。

 

今回のワークショップでは、大変なイメージのあるシルクスクリーンを身近に感じることができました。また成功させるためには一つ一つの作業に細やかな配慮工夫が必要なことを学びました。 製版から印刷、特殊加工までと内容盛りだくさんなワークショップは2017年度も開催予定です。今回参加出来なかった学生の皆さん、次回をお楽しみに。

今回ご協力いただいたレトロ印刷 JAMさんでは、SURIMACCAの販売はもちろん、孔版印刷サービスも行っています。興味のある方は是非、HPをご覧ください。

※このワークショップは、サポート企業・レトロ印刷 JAM理想化学工業株式会社様にご協力いただきました。

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17 4月 

EVENT REPORT!「トレンドセミナー」

Posted by CMTEL  |  2017/04/17 15:56

こんにちは、CMTELです。今回は2016年11月29日に行われたトレンドセミナーのイベントリポートです。

Edelkoort East 株式会社(TREND UNION)様より家安 香氏を講師としてお招きし、前期に引き続き後期もセミナーを開催。実際にトレンドブックを閲覧しながらトレンド予測の必要性やその背景の説明を行いました。(以下敬称略)

●トレンドブックとは?
社会背景の分析やリサーチを行い、それに基づいて1年半から2年半先のトレンドを予測し作られたブックです。詩的なキーワード、カラー、ヴィジュアルで構成されており、デザインしたり構想を練るために必要かつ役立つ情報が詰まっています。そしてファブリックサンプルも多数添付されており、実際に触れることができます。全てのページがインスピレーションの源になる貴重なブックです。


TREND UNION(トレンドユニオン)とは?
Lidewij Edelkoort
リドヴィッジ・エデルコートを中心として、本拠地のパリでトレンドに関する情報発信を行っています。キーワード、カラー、テクスチャーなどトレンドを知る上で大切な情報をブックにまとめ発行。また、世界各地で年2回セミナーも開催しています。TREND UNIONは、人間が本来もつクリエイティビティーを信じ、その「自然の欲求」が向かう先を繊細かつ大胆に捉えている全10種類のトレンドブックを年2回発行しています。


セミナーの様子
1.講義
「トレンド流行」
一般的に「トレンド」という言葉は「流行」という意味で、“次のトレンドカラーは◯◯色”や“スカートの丈は短め”といったファッション分野の言葉としてよく使われます。しかしTREND UNIONは、ファッションに限った断片的な流行情報を扱っているわけではありません。

なぜ◯◯色を求めるようになるのか・短いスカートを履きたくなるのかという、これから起きる人々の心(欲求)の変化を過去・現在を元に予測しています。つまり未来予測がTREND UNIONの商品なのです。そしてその予測に基づいて選んだカラーや素材等の情報を発信しています。

「人の心(欲求)を変化させるもの
未来予測のための研究対象となる人の心は、周りの状況から影響を受けます。例として、ここでは「周りの状況」=「経済状況」として考えてみましょう。

現在も世界中で続く不安定な経済状況。経済状況を改善するため、小さな子どもがいる家庭でも共働きをする夫婦が一般的になってきました。母親も仕事で外へ出ていく機会が増えると、必然的に父親が子どもを預かり一緒に過ごす時間が増えます。するとそれまで外でバリバリ働くことが主で、見た目も硬派でいなければならなかった父親に変化が起こります。

第1の変化が現れるのはです。子どもは緊張感を感じる父親よりも、優し抱きしめてくれるような父親が大好きです。子どもの喜ぶ優しい父親でいるうちに、子どもが父親にある気付きをもたらします。それは“男性も優しくていい”ということです。

こうして優しい男性像を肯定された父親には、第2の変化がおきます。その一例として様相(見た目)が挙げられます。子どもの柔らかで繊細な肌に触れることが日常となった男性の選ぶ服は、どの様な素材・色・形になるでしょうか?きっと以前と比べて選ぶ基準が異なるはずです。

例えば、生地には優しくソフトな肌触りや汚れても洗えばすぐに乾く衛生的な機能を、また服自体の形状には子どもと出かける時のことを考え、荷物で手が塞がらないようポケットの数や大きさを気にするかもしれません。そしてこの変化は服装だけではなく、肌の質感、食べ物、移動の手段など様々な分野に及びます。

今回は経済状況を例に挙げましたが、その他にも人の心に影響を与えるのは世界情勢・消費者動向など。これらが複合的に作用し、欲求を形作ります。

このように「人がどのように変化するか」を感じとることができれば、それをきっかけにしてデザインをはじめることができます。ファッションやプロダクトのデザインはもちろん、食品の企画開発や新しい交通手段の提案など、おのずとデザインができあがっていくのです。そのためTREND UNIONのクライアントの業界は幅広く、製造業以外にも食品加工や金融、航空業界など様々です。意外にもアパレル系のクライアントは全体の3割ほどだそうです。


「ブックを作るTREND UNIONのメンバー」
ヘッドのエデルコート氏は主体となって未来予測の研究をしている中心人物です。彼女をはじめとしてディレクターアイコングラフィストキュレーターを含む多国籍なメンバーでチームを組み、ブックを作り上げています。

ディレクターはエデルコート氏と同様に、未来予測の研究を行います。アイコングラフィストとはメンバーが持ち寄った予測を聞き、その言葉をビジュアル(写真)に転換する特殊な作業を担当する人物です。キュレーター新しいアーティストデザイナーの作品をピックアップし、次のデザインのあり方を発表します。


「トレンド情報の集め方」

目に見えない情報を扱うトレンド予測はどのようにして導き出されるのでしょうか。

トレンドは人の心(欲求)が生み出すもので、流れをもちます。未来を予測するためには過去・現在を把握しなければなりません。そのためTREND UNIONの情報収集は、今起きていることをサンプリングするところから始まります。

街をぶらぶらする人、本や写真を見る人、アート作品を見る人など、情報収集の方法はメンバーによって様々。中には拾ってきたものを集める人もいるのだそうです。しかしそれらの方法に共通するのは、人をじっくり観察するということ。“前髪が短い人が増えた”や“ドラマの設定が変わってきた”など、人々の様子で共通して起きている現象や変化をキャッチします。

次に集めた情報を皆でシェアすると、共通点が見えてくるといいます。似た事柄をグルーピングし、カテゴリーごとに分類・分析していきます。そしてカテゴリーに対して仮の定義を考えます。“男性が女性化するきざしかも?”“新しいものに興味がなくなっているとしたら?”といったように。それからその定義を答えとして断定しないまま、飛行衛星のように宙に浮かせた状態でしばらく過ごします。

しばらくすると裏付ける関連事象がだんだん集まってくる定義もあれば、そうでないものもあるといいます。裏付けがとれないカテゴリーは仮定が間違っている可能性があるので、もう一度考え直します。この試行錯誤を繰り返してトレンド情報を形作っていきます。

この方法で情報収集が可能なのかとよく聞かれるそうなのですが、実際に行っているそうです。確かに個人の感じることと世界規模の大きなトレンドでは、スケールの違いに大きくかけ離れたギャップを感じるかもしれません。しかし世界はでできています。個人の欲求の変化は小さくても類似する変化が束になれば、大きなうねりとなり世界のトレンドに発展しえます。一人一人がトレンドを生み出す当事者なのです。トレンド予測にはミクロな視点とマクロな視点の両方をもつことが必要です。


「制作のアイデア探しにも有効」

普段の制作のアイデア探しやリサーチにもこの方法は活用できます。一番身近な自分を調査・研究対象にして、日常のごくごく小さな変化を探します。

“読む雑誌が変わった”や“前まで聴いていた曲を聴かなくなった”というような、何となく気分で片付けてしまいそうな心の変化に敏感になってみましょう。心の変化には必ず理由があります。その理由を“なぜ?”と突き詰めるのです。

さらに心の変化に仮の定義をつけて周りの人を観察します。その定義が合っていれば裏付けが集まり始めます。この定義は制作する時の大きな材料となります。自分の変化した心が結果として“別の雑誌や曲”を求めたのだとしたら、この心に似た心をもった人が欲しくなるキッチンツールは?パッケージデザインは?…というように自分の製作の分野に展開させていきます。すると問題提起と同時にメッセージ性のある作品になります。変化とその理由を知ろうとする力は、世の中の動き未来を読み解く洞察力に繋がっていきます。

髪型・ドラマの設定・その日買った飲み物・選んだ交通手段、それぞれ一見関連性のないようなできごとでも共通する情報を発しています。その情報が、自分の制作ではどんな意味になるのか変換する。そうしてアイデアを膨らませることも可能でしょう。


2.トレンドを具現化したオーディオビジュアルの上映
今回のセミナーではトレンドのイメージを感覚的に表したオーディオヴィジュアル(音と映像)の上映を行いました。セミナーの会場のみで上映されるムービーでは、美しい写真に合わせて流れる音楽は歌詞もその場面に合ったものを選曲しているのだそう。


3.ブックの閲覧
セミナーでは普段CMTELには無いジャンルを含む計13冊のブックが閲覧可能。オーディオヴィジュアルとリンクしているGENERAL TREND、建築と人についてのARCHITECTUREやプロダクトやインテリアのヴィジュアルが豊富なLIFESTYLEなど、幅広いジャンルのブックを取り揃えました。ブックのシーズンは2018春夏とセミナー開催時の2016-17秋冬。今と未来を見比べることができました。

ビジュアルや豊富なファブリックサンプルにじっくり見入る学生の姿も。
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4.質疑応答
講義の最後に家安氏と学生による質疑応答が行われました。彼らはプロダクトやテキスタイル、グラフィックや工芸などそれぞれに別の専攻をしている学生達です。彼らからは普段制作を通して考えていることや将来のことなど様々な意見、質問が寄せられました。

 

多摩美でのセミナーは(今回を含めて)1年で2回開催されました!セミナーを楽しんでくれた方や今回参加を逃してしまったという方、2017 年度開催予定のセミナーに是非ご参加ください。(開催日程は決定次第このブログ・Twitterにてお知らせします)

またCMTELでは3月に入荷したばかりの最新号ACTIVEWEAR 2018-19秋冬を閲覧できます。その他、バックナンバー3冊も常時展示中。豊富な写真とファブリックを、ぜひ見に・触りにお越しください。また、トレンド情報について詳しい内容の書かれた日本語訳の解説ブックも付いています。

※今回のセミナーはEdelkoort East 株式会社様にご協力いただきました。