28 2月  

EVENT REPORT@「トレンドセミナー」

Posted by CMTEL  |  2019/02/28 15:21

こんにちは、CMTELです。今回は2019年1月9日に行われた、2020春夏シーズントレンドセミナーのイベントリポートです。

Edelkoort East 株式会社(TREND UNION)様より家安 香氏を講師としてお招きしセミナーを開催。実際にトレンドブックを閲覧しながらトレンド予測の必要性やその背景の説明を行いました。(以下敬称略)

●トレンドブックとは?
社会背景の分析やリサーチを行い、それに基づいて1年半から2年半先のトレンドを予測し作られたブックです。詩的なキーワード、カラー、ヴィジュアルで構成されており、デザインしたり構想を練るために役立つ情報が詰まっています。そしてファブリックサンプルも多数添付されており、実際に触れることができます。インスピレーションの源になる貴重なブックです。

TREND UNION(トレンドユニオン)とは?
Lidewij Edelkoort
リドヴィッジ・エデルコートを中心として、本拠地のパリでトレンドに関する情報発信を行っています。キーワード、カラー、テクスチャーなどトレンドを知る上で大切な情報をブックにまとめ発行。また、世界各地で年2回セミナーも開催しています。TREND UNIONは、人間が本来もつクリエイティビティーを信じ、その「自然の欲求」が向かう先を繊細かつ大胆に捉えている全10種類のトレンドブックを年2回発行しています。

セミナーの様子

1.講義
「トレンドはファッション業界のもの?」
トレンドとは一般的には、次にどんな服や色が流行るかということだったり、とりわけファッション業界のこととして捉えられがちな言葉ですが、TREND UNIONの発信する「トレンド」は違います。TREND UNIONが発信しているのは、純粋に「人(mind/心理欲求)を研究」した結果を核にした未来予測の情報を「トレンド」としています。



トレンド予測は天気予報にも似ている」

トレンド予測のプロセスの解説をするにあたり、会場のスクリーンに登場したのは気象予報図。いうまでもなく、高気圧・低気圧・前線、これから天気がどうなるか予想をするためのものです。高気圧が張り出して前線を押し出すと晴れるエリアが広がるように、それぞれの気象現象は離れたりくっついたり打ち消しあったりと、互いに影響し合い変化します。

天気図(気象庁ホームページより)

実はTREND UNIONの予測もこれと全く同じなのだそうです。現在ある事実を配置し、それぞれの事実が持っている勢力の強度を見ていきます。現在ある事実とは、規模の大小にかかわらず、人々の間で共通して起きている事象をいいます。

例えば「パンケーキが流行っている」「チーズ入りホットドッグをSNSでよく見る」、今起きている「現象」の一つです。ではこの二つの現象の間にある関係性は…?なぜそういうものを人々は求めるのか、現象を単体で認識するだけでは不十分で、現象同士の共通点や意味を考えることが重要です。
身近な食べ物の例をあげましたが、そういったミクロな視点はもちろん、世界の政治経済といったマクロな視点でどんな現象が起きているのかまでを広く見つめ、正しく現象を配置していきます。TREND UNIONで、これをいち早く見つけてくるのはディレクターたち。これがトレンド予測の起点になっていきます。

そしてこの現象同士はそれぞれのパワーバランスによって、長く勢力を維持したり衰退し新しい現象にとって代わられたりと構図を変えていきます。それぞれの勢力の強弱をどう見極めるのかもポイントになりそうですね。


「トレンドの成り立ち」
TREND UNIONでトレンド情報をまとめるにあたって実践している4ステップを今回特別に教えていただきました。図解のプリントも配布、みなさんたくさん書き込んで持ち帰っていました。

① analization of moment
ディレクターやアナリストのアンテナに引っかかった「現在の世の中のムード」、「人々の中で共通しておきている現象」などを集めます。

②mind tendency
その状況がもたらす人のmindの変化を分析。

③translation to action
mindの変化を反映するマーケットのアクションを予測。どういう価値観が求められるか、クリエイティブ層がデザイン・ビジネス展開しやすいキーワードに言葉化する。

④season theme and color
マーケットや商品、地域の多様性をベースに毎回16テーマ分程の小テーマ発表。キーワード・テーマを視覚化するビジュアルを専門職のアイコングラフィストが選定。それをブックにまとめ発行します。

ちなみにブックに使われている写真は、6〜7割は既存の写真(フォトグラファーが撮ったものや雑誌などのもの)です。全て撮り下ろしにしないのは、全て作ると作り物になってしまうから。これからの天気を知るための天気予報図は、現在の事実(高気圧・低気圧の位置や勢力)を元にしています。これと同じように、今世の中に存在する膨大なビジュアルの中から、次の未来を予感させる新しい芽になるような写真をピックアップします。そして残りの数割はオリジナルの撮り下ろしです。ピックアップした写真だけでは伝えきれない行間を補い、写真同士を繋ぐことでより強いメッセージを見る人に与えます。


「2020年春夏のテーマ Folklore(民俗学)
テーマを象徴する16のキーワードを挙げながら、家安氏よりテーマについての解説を行いました。

今、政治をはじめ世界には排他的な主張やムードが漂っています。そして、性・宗教・文化などにおいて「多様性」という言葉が頻繁に叫ばれる時代でもあります。

人類の多様性を認めるにはまず「私たち人類のルーツが同一だということを知る必要があるということ」、そして美しい未来を作る第一歩となるのは、「世界各地の文化には世界でたったひとつのものは存在せず、遠く離れた国同士であってもその文化には共通性があるということを知ること」だという大きなテーマが込められたシーズンでした。

2.トレンドを具現化したオーディオビジュアルの上映
今回のセミナーではトレンドのイメージを感覚的に表したオーディオヴィジュアル(音と映像)の上映を行いました。セミナーの会場のみで上映されるムービーでは、美しい写真に合わせて流れる音楽は歌詞もその場面に合ったものを選曲しているのだそう。


3.ブックの閲覧
セミナーでは普段CMTELには無いジャンルを含む計7冊のブックが閲覧可能でした(2019-20秋冬シーズン、最新の2020春夏シーズン)。オーディオヴィジュアルとリンクしているGENERAL TREND、プロダクトやインテリアのヴィジュアルが豊富なLIFESTYLEなど、幅広いジャンルのブックを取り揃えました。


4.質疑応答
講義の終了後、時間の許す限り家安氏に質問をする学生もいました。


今回の参加を逃してしまったという方、2019年度のセミナーにぜひご参加ください。(開催日程は決定次第このブログ・Twitterにてお知らせします)

またCMTELでは常時下記のブック(日本語訳の解説ブックつき)が閲覧できます。豊富な写真と添付してあるファブリックを、ぜひ見に・触りにお越しください。
2017年春夏号 GENERAL TREND
2017-2018年秋冬号 GENERAL TREND
2018年春夏号 ACTIVE WEAR
2018-2019年秋冬号 ACTIVE WEAR
2019年春夏号 GENERAL TREND
2019-2020年秋冬号 GENERAL TREND
2020年春夏号 GENERAL TREND

※今回のセミナーはEdelkoort East 株式会社にご協力いただきました。