18 1月  

こんにちは、CMTELです。

今回は2018年11月13日(火)、14日(水)の二日間で開催したワークショップ、「孔版印刷(シルクスクリーン)を体験しよう!」の当日の様子をご紹介します。

株式会社JAM様(以下敬称略)より辰巳氏・武田氏を特別講師として迎え、シルクスクリーンキットSURIMACCAを用いて製版~プリントまでのプロセスを体験し、初めて触れる方にもシルクスクリーンの技法がより身近となる内容になりました。

また、今年は例年より紙・布用インクでのプリントをじっくり楽しめる構成にしました。

それではワークショップの流れを順に追っていきます。

講義1「孔版印刷(シルクスクリーン)とは」
はじめに講師の方々からシルクスクリーンの起源・変遷、そして版の構造と印刷の仕組みについての講義をしていただきました。(シルクスクリーンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。)


シルクスクリーンは孔版印刷という印刷方法の一種。メッシュ状の版にインクが通る部分と通らない部分を作ることで、刷りたい図面をTシャツや紙、バッグにプリントすることができる印刷技術です。

SURIMACCAとデジタル製版機
シルクスクリーンで必要なのは(しゃ)とです。従来の方法で作ろうとすると、必要な機材や工程が多く技術が必要とされます。初心者からするとシルクスクリーンを始めるにはなかなか敷居が高いものでした。

そこで株式会社JAMが生み出したのが、冒頭で紹介したシルクスクリーンキット、SURIMACCAです。パーツとパーツを組み合わせることで枠の大きさを自由に変えられ、テクニックが必要な従来の紗張りの作業を格段にやりやすいものにしました。

講師が持っているフィルム状のものが紗です。デジタル製版機(画像内:赤いマシン)を用いることで、手軽に素早く版を出力することが出来ます。この製版機に図面のデータを送信することで、数分ほどで図面の部分だけインクが通るようフィルムに微細な穴を開ける仕組みになっています。

古くからある専用の薬剤を使った製版の方法を知っている参加者からは、あまりの簡単さとスピーディーさに驚きの声が。参加者には各自制作した版データを事前に提出してもらいました。本番ではオリジナルデザインの紗を使ったプリントができます。

準備「枠に紗を張ってみよう」
紗を、枠に張っていきます。今回はSサイズの枠(プリント範囲 19×19㎝)を使用。

張る時に使用するものは、キット付属のゴムチューブローラーです。チューブを枠の4辺にある溝へ押し込んでいきます。一辺ずつ、少しずつローラーでゴムを奥まで押し込むことで、満遍なく紗にテンションが加わり、ピンと張った状態で綺麗に張り上がります。

版の完成です。次はいよいよ刷る工程に入っていきます。

実習「実際にプリントしてみる」
講師のデモンストレーションを見て、プリント時のコツを理解します。ここではそのコツを4点ご紹介。

コツ①     スキージは図面の大きさに合わせたサイズを選ぶこと
付属のスキージは全ての辺でプリントができます。大きい図面の場合は長い辺を、小さいものは短い辺を使うと良いでしょう。

コツ②    スキージはしっかりと深くにぎり45度で動かす(布にプリントする場合)
インクを押し出す時に使用するスキージーは45度の角度で持ち、「ジー」と音がするくらいの力加減で上から下に均一な力で下ろしてきます。両手の指でスキージー全体を支えながら持つと、刷る時に力を満遍なく加えることが出来ます。なお、紙などインクを吸収しない素材に刷るときは、スキージの角度は60度にしましょう。

コツ③     インクは多めに使う
図面の幅をカバーできる量を紗の上にのせましょう。スキージを動かしている途中でインクが尽きてしまうとかすれの原因になります。

コツ④     版がズレないようにしっかり固定
版がズレないようにしっかり固定して刷ることが大事です。人の手を借りられる時は版の枠を押さえてもらうと、両手を使って安定して刷ることが出来ます。

刷り方のポイントを掴めたらインクを選んで実際に刷る作業に移ります。インクは全部で15色準備しました。たくさん種類があって迷います。

インクが選べたら同じテーブルの参加者や講師にサポートしてもらいながら刷っていきます。大きい図面をプリントする時は、枠がブレやすいので誰かのサポートが必須です。

「刷れた!」
作業が始まってしばらくすると、各テーブルから喜びの声が…!
ちなみにプリントするアイテムは各自持参しました。紙製の袋や封筒・ハガキ、布製のトートバックやハンカチ・靴下など様々なアイテムが揃いました。

刷った後、版をそのままにしておくとインクが固まって目詰まりを起こしてしまうので、裏側から濡れたウエスで優しく拭いてあげましょう。刷った後版の上に残ったインクは塊がなければ再度使えるので取っておくと無駄なく使えます。

紙等インクをあまり吸わない素材にプリントする場合はスキージの角度は60度で、少し立て気味で刷るとインクが滲まずに綺麗に刷れます。
こちらはオリジナルのフォントを紙にプリントしたもの。インクが出すぎて文字がつぶれたり、インクがかすれたり、何度もトライ&エラーを経て上手くいきました!スキージの角度60度が重要なポイントです。

初めてシルクスクリーンをする方も何度も回数を重ねて刷っていくと、テンポよく刷れるようになっていました。

色々なバリエーションの素材に印刷をした方や、ひたすら同じ素材にたくさんプリントをした方と、人によって取り組み方はそれぞれ。自分が用意したデザインの図面が実際に形になると、とても嬉しいですよね。トートバックを持ってきている方が多かったです。インクの種類によっては、仕上げにアイロンをかけて定着させる必要があるものもあります。

Tシャツやトレーナーなど衣服にもプリントできます。

中にはインク2色を同時にミックスさせて刷る実験を始める参加者も。赤と黄色を版の上に置きスキージで刷ると…

マーブル模様になりました。意図しないグラデーションや色の混ざり具合がきれいです。

ピンク×ブルーの同時刷りはグレイッシュな色合いに。

 

片付け
刷り終わった、又はインクの色を変える時は、版を水洗いしましょう。この時にスポンジの硬い材質の部分で洗ったり強い力でこすってしまうと、紗がダメージを受けてしまうので、柔らかいスポンジで水をかけながら優しく洗うよう心がけましょう。

もう版を使わない時は、枠の角の部分から紗をぐいっと押すと外すことができます。

小ワザ紹介
最後にプリントする際に役立つ小ワザをご紹介します。

今回のワークショップでは紗の印刷可能範囲(19×19㎝)にまるまる一つのデザインを配置する方もいれば、数種類のデザインを配置する参加者の方もいました。たとえば下図の(右)の様なレイアウトにすると、1つの紗から3通りのプリントが楽しめます。

ここで取り上げるのは後者で、いくつかある内の一つだけのデザインをプリントする場合は他の部分にインクが通らないようにマスキング※1しておく必要があります。マスキングをしやすくするため、それぞれのデザインの間隔を3、4センチ以上離しておくことをオススメします。
※1マスキングとは…色を塗らない部分に粘着テープなどを貼って予め保護すること。

刷りたいデザインの周りをマスキングテープで十字に囲みます。スキージは刷る図面の幅に応じて、持つ辺を替えましょう。

SURIMACCAのフレームの大きさは最小80×80〜最大200×450㎜にすることができます。パーツの組み合わせ次第でより大きい形や横長のデザインも刷れるのが魅力です。また、インクと版が数種類あれば多色刷りといったより多様なデザインも刷る事が出来ますよ。

「家で作業する場所がない!」といった方には株式会社JAMが設けている、その場で製版や印刷、素材・インクの購入ができるSURUTOCOというワークスペースもあります。品川にあるので気になった方、もっと刷ってみたいといった方は是非足を運んでみてください。

ここまで読んでくださりありがとうございます。今回のワークショップは二日間で全4回開催しました。残念ながら参加できなかった方々もまたの機会にぜひご参加ください。

※このワークショップは株式会社JAMにご協力いただきました。