こんにちは、CMTELです。今回は5月27日に行われたトレンドセミナーのイベントリポートです。
TREND UNIONさんより家安 香氏を講師として招き、昨年に引き続き今年もセミナーを開催。実際にトレンドブックを閲覧しながらトレンド予測の必要性やその背景の説明を行いました。
●トレンドブックとは?
社会背景の分析やリサーチを行い、それに基づいて1年半から2年半先のトレンドを予測し作られたブックです。詩的なキーワード、カラー、美しいヴィジュアルで構成されており、デザインしたり構想を練るために必要かつ役立つ情報が詰まっています。そして貴重なファブリックサンプルも多数添付されており、実際に触れることができます。全てのページがインスピレーションの源になっている貴重なブックです。
●TREND UNION(トレンドユニオン)とは?
パリを本拠地にして、トレンドに関する情報発信を行っています。キーワード、カラー、テクスチャーなどトレンドを知る上で大切な情報をブックにまとめ発行。また、世界各地で年2回セミナーも開催しています。TREND UNIONは、人間本来のもつクリエイティビティーを信じ、その「自然の欲求」が向かう先を繊細かつ大胆に捉えている全10種類のトレンドブックを年2回発行しています。
●セミナーの様子
1.講義
「トレンドは誰かが作るもの?」
一般的に『トレンド』という言葉はファッションの世界においての”流行り”という意味で使われがちです。またトレンドは”誰かによって作られるもの”と言われます。しかしこれらは間違った概念です。
人の価値観や興味は、その人の置かれている環境に影響を受けます。身近な例を挙げると、ここ数年スニーカーを履いている人を見かける機会が多くなりました。通勤する人達でさえスニーカーを履いていることは珍しくありません。
この現象のきっかけの一つとなったのは東日本大震災。帰宅困難者で街は大混乱になりました。歩きやすく疲れない靴を求めて、とあるスポーツブランドショップではスニーカーが売り切れたそうです。この時不安な気持ちから人々が靴に求めたのは機能性でした。機能性に優れた素材・デザインのモノを持つことで安心感を得たのです。
また日本だけではなく、地球規模でも様々な異常気象が頻発しています。予知できない災害に対する不安な気運が高まる中、人は不安な状況を少しでも改善しようと行動します。これは自然な心のはたらきです。こういった状況下で、人が求めるモノはどんな色や素材で作られているべきでしょうか?まさしくこれらの情報が『トレンド』なのです。
自然な心のはたらきを反映したトレンド情報は、こういった理由からファッション業界に限らず金融業界や流通業界など様々な場面で影響を及ぼし形となって現れます。実際にトレンドユニオンさんのクライアントには銀行や食品メーカーもいるそうです。トレンドユニオンさんの商品は、世の中の一人一人の微妙な心の動きを読み、2年後・3年後その動きがどうなっているのかを考える世界規模の未来予測なのです。
「トレンド予測がなぜ必要なのか」
講義では”お茶のデザインをすること”を例にしたお話がありました。この場合に、いきなりペットボトルやロゴのデザインをするだけでは、意味がなく表面的なデザインになってしまいます。人がいつ・どこで・なぜお茶を飲みたいのか、人の心理にまで掘り下げた『トレンド予測』(=人間研究)をすることで、お茶をデザインすることの意味が変わってきます。
家安氏は講義の中で”デザインは形や色を設計することではなく、その商品が人生にどのような影響を与えるのかを考えること”ととても印象的な言葉を学生に投げかけました。トレンド予測はモノを作る前には欠かせないプロセスなのです。
2.トレンドを具現化したオーディオビジュアルの上演
トレンドのイメージを感覚的に表したオーディオヴィジュアル(音と映像)の上映です。ここでは実際上映している様子は載せられないのですが、美しい写真に合わせて流れる音楽は歌詞もその場面に合ったものを選曲しているのだそう。
3.ブックの閲覧
セミナーでは普段CMTELには無い様々なジャンルのブックを13冊見ることができました。セミナーで流したオーディオヴィジュアルとリンクしているGENERAL TREND(CMTEL所有)、建築と人についてのARCHITECTUREやプロダクトやインテリアのヴィジュアルが豊富なLIFESTYLEなど幅広いジャンルのブックがあります。
今回取り揃えたのは最新の2017-18秋冬と現在の2016春夏のブック。今と未来を見比べることができます。更にその2シーズンの間に発行されたブックも一部ジャンルをディスプレイ。
添付された珍しいファブリックに興味深々です。どのブックも装丁のデザインが凝っていて次から次に手が伸びます。ポートフォリオの参考にもなりますね。
4.質疑応答
講義後に家安氏のもとへ学生達が集まっています。彼らはプロダクトやテキスタイル、グラフィックや工芸などそれぞれに別の専攻をしている学生達です。彼らからは普段制作を通して考えていることや将来のことなど様々な意見、質問が寄せられていました。
その中で、ブックでのフォントの使い方についての質問がありました。2017-18 秋冬のメインテーマである「肉体労働への愛」。無骨でダーティーな写真にはスマートで洗練されたフォントが使用されており、その点を”意外ですね”と尋ねる学生がいました。「労働」が力強く粗っぽいイメージだからこそ、あえてフォントは線の細いものを使用したのだそう。そうすることで「労働」を崇高で品格のあるものに昇華し、それを賛美する今シーズンのメインテーマを表現しています。
自分の質問が終わった後もその場を離れずに、別の学生と家安氏の会話に聞き入る学生も多くいました。講義の最中同様、家安氏からの核心を突く多くの言葉を逃すまいと必死にメモをとり続ける姿が印象的でした。
多摩美でのセミナーは(今回を含めて)年内に2回開催されます!今回のセミナーを楽しんでくれた方や今回参加を逃してしまったという方、後期開催予定のセミナーに是非参加してください!
またCMTELでは GENERAL TREND 2017-18 秋冬 とGENERAL TREND 2017 春夏 を常時展示しています。美しい写真と豊富な種類のファブリックを、見に触りにお越しください。また、トレンド情報について詳しい内容の書かれた日本語訳の解説ブックも付いています。