東京FILMEXレポート1〜開会式/オープニング上映作品『野火』〜

MEX.TIFF

 日本で最も独創的なラインナップを誇る映画祭「東京フィルメックス」は2014年で15回目を迎えた。11月22日(土)〜30日の9日間、有楽町朝日ホールをメインに会場に厳選の25本が集められ、「ミラクルやサプライズを共有しましょう」とディレクターの林加奈子氏の宣言により映画祭は幕を開けた。

 今回のコンペティションの審査員長は『青の稲妻』(2002)や『罪のてざわり』(13)で知られるジャ・ジャンクー監督。審査員はル・シネマ(渋谷、東急本店bunnkamura)の番組編成を担当する中村由紀子、撮影監督の柳島克己、フィルムパブリストのリチャード・ローマン、そして映画批評家の張昌彦(台湾)の4名である。

 柳島克己監督は開会式の中で「特殊映画、一般映画もさることながら、特にコンペティションは新しい作家との出会いを感じている。最近の映画はデジタルで撮影されることが多く、フィルムの映画が撮影されない地域からも映画が出てきている。そういった地域からの独特の映画に会えることを楽しみにしている」と映画祭への期待を語った。

©SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

©SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

 オープニング作品として上映されたのは塚本晋也監督の『野火』(14)。舞台は第二次世界大戦末期、フィリピンに攻め込んだ日本兵が極度の飢えに苛まれながら敗走する田村一等兵を視点に撮られている。また、本作は監督が高校生の頃に出会った大岡昇平の同名戦争文学を原作に、20年間にわたり構想し続けた一本でもある。上映前の挨拶では塚本監督、出演者のリリー・フランキー、森優作、音楽を担当した石川忠が登壇。「“今撮らないといけない”という強い思いが集まった映画」と森優作、「見所もいっぱいあるが、聞き所もいっぱい。楽しんで打ちのめされてほしい」と石川忠がそれぞれ本作への思いを述べた。

 監督は上映後に行われたQ&Aの中で「戦争が起こってしまったらどうなってしまうんだろうということを考えながら撮った。戦争の映画はたくさんある。日本だったら日本が被害者になってそれが“いやだ”という描き方もある。だけど僕は加害者になってしまう恐怖を描きたかった。戦争が始まるとこれどころではない。暴力は映画の中だけでたくさん」と映画に込めた思いを振り返った。

『野火』(2014年/87分)
監督・脚本・編集・撮影・製作・出演:塚本晋也
原作:大岡昇平『野火』(新潮文庫)
出演:リリー・フランキー、中村達也、森優作
配給:海獣シアター *2015年7月25日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国劇場公開予定

文=韓松鈴