本学科非常勤講師の中尾拓哉先生がキュレーターとして手がける展覧会「メディウムとディメンション:Apparition」が開催されます。
会期中は本学科専任教員の安藤礼二教授によるトークイベントも予定されております。
下記詳細をご覧ください。
【展覧会概要】
「メディウムとディメンション:Apparition」は、「Apparition(アパリシオン)=出現」をテーマにした展覧会です。この幽霊・神などの出現を意味する言葉は、マルセル・デュシャン(1887-1968年)のメモに残された思索に由来します。それは、デュシャンの代表作《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)》(1915-1923年)において、現実的な三次元を超えた高次元世界にある対象が、三次元世界の目前に「出現」することを説明するために用いられたものです。「出現」は機械とエロティシズムを通じて、高次元の存在を捉えようとするこの芸術家の制作の本質であると同時に、現代美術における創造行為においてもきわめて重要な観点となります。本展は、山内祥太の作品を通じて「Apparition=出現」という語が示す意味を現代の視点から再考し、二次元、三次元、さらに高次元を表現することの可能性を模索するものです。
本展では、二つの作品が邂逅します。一つは山内の個人的な恋愛体験を背景にコンピュータグラフィックスで仮想空間上に誕生した、衣服のように皮膚を脱ぐ《舞姫》(2021年)。もう一つはマキ・ウエダとの共同で制作された、水槽で眠る人物が見る夢の中で繰り広げられる、匂いをめぐる演劇『汗と油のチーズのような酸っぱいジュース』(2023年)を再構成するインスタレーションです。山内はデジタル技術と身体表現を掛け合わせ、前者では触覚を、後者では嗅覚を、感情や記憶と結びつけながら立ち上げてきました。それぞれに自律する二つの作品のメカニズムを連動させることで、山内の作品世界で共振する、あるいは新たに生み出される現れが体感されることでしょう。
2023年はデュシャンが《大ガラス》の制作を放棄してから100年を迎えます。《大ガラス》の大きなテーマとなったのは、機械とエロティシズムでした。100年前に制作が止められた、現代の人間像の叙事詩ともいわれる《大ガラス》。本展は、現在のメディアを駆使して表現を続け、仮想空間と現実空間を重ね合わせ「テクノロジー」と「愛」について考察する山内の作品によって、「機械」と「エロティシズム」、その現在性を歴史的な年に問うものです。
会期中にはパフォーマンスを不定期に実施します。パフォーマーの動きと連動し、二つの作品はさらなる化学反応を引き起こし合い、一つの循環的なシステムを出現させます。
【基本情報】
企画展名|メディウムとディメンション:Apparition
キュレーション|中尾拓哉
アーティスト|山内祥太
会期|2023年12月1日(金)-12月24日(日)
[パフォーマンス]毎週 金・土・日
開廊時間|13:00-20:00
定休日|月・火・水
会場|青山目黒
住所|〒153-0051 東京都目黒区上目黒 2-30-6 保井ビル1階
Tell|03-3711-4099
Email|info@aoyamameguro.com
Web|http://aoyamameguro.com
主催|メディウムとディメンション実行委員会
協力|KYOTO EXPERIMENT
支援|令和5年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
【トークイベント】
「Apparition」とはなにか?――外観と出現をめぐって
安藤礼二(文芸評論家)×中尾拓哉×山内祥太
12月16日(土)
15:30-17:00
【プロフィール】
中尾拓哉(なかお・たくや)
美術評論家、芸術学。博士(芸術)。1981年生まれ。近現代芸術に関する評論を執筆。特に、マルセル・デュシャンが没頭したチェスをテーマに、生活(あるいは非芸術)と制作の結びつきについて探求している。著書に『マルセル・デュシャンとチェス』(平凡社、2017年)。近年のキュレーションに「メディウムとディメンション:Liminal」(柿の木荘/東京、2022年)など。
https://nakaotakuya.com
山内祥太(やまうち・しょうた)
アーティスト。1992年生まれ。インターネットが普及した1995年以降のリアリティとともに育った世代として、自己と世界の関係性や、自分の認識する世界と現実の間にある裂け目といったものを、さまざまな方法で明らかにしようと試みてきた。映像、彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど表現メディアは多様で、クレイアニメーション、クロマキー、3DCG、3D印刷、VR、モーションキャプチャなどの技術も自由自在に用いる。
http://shotayamauchi.com