本学科卒業生による企画展覧会を下記の通り開催いたします。
芸術学科展覧会設計・構想計画設計ゼミ出身のキュレーター3名(伊藤結希、長田詩織、三宅敦大)による「見立て」をテーマとした現代美術の展覧会「オリオンベルト、あるいはからすき星」を2月11日(金・祝)より開催いたします。
出品作家は、新進気鋭のペインター木村萌、彫刻の在り方・可能性を模索しながら作品を発表する冨井大裕、50年以上自然石を収集し「水石」を愛する西山巍の3名です。先を見通し辛い日々が続きますが、ぜひお誘い合わせの上お越しください。
<開催概要>
タイトル :オリオンベルト、あるいはからすき星
出品作家 :木村萌、冨井大裕、西山巍
キュレーター:伊藤結希、長田詩織、三宅敦大
会期 :2022年2月11日(金・祝)〜2月28日(月)
開場時間 :13:00-19:00(18:30最終入場)
休場日 :火曜、水曜、木曜(ただし祝日は開場)
会場 :HB.Nezu (東京都台東区池之端2-6-12)
アクセス :東京メトロ千代田線根津駅2番出口より徒歩5分、東京メトロ南北線東大前駅1番出口より徒歩13分
入場料 :無料
協力 :HB.、Yumiko Chiba Associates
デザイナー :中村陽道、乗田菜々美
助成 :東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト
お問い合わせ:say.exhibition@gmail.com
<展覧会の内容・見どころ>
根津からほど近い台東区上野にある寛永寺(1625年創建)は、京都御所の鬼門(東北方向)を守る位置にある比叡山延暦寺に倣って、江戸城の鬼門にあたる上野に東叡山として開かれました。また、寛永寺の周辺では、清水観音堂が京都清水寺に、不忍池が琵琶湖に、不忍池の中にある弁天堂が琵琶湖の竹生島に見立てた構成になっており、「見立てる」力が働くことで、空間を超えて異なる土地が関係しています。
私たちはここで行われている「見立てる」行為について、目の前の現実に存在する対象のなかに別の存在を想像することだと定義します。別の存在は、想像する私たちのすぐ目の前にはありませんから、対象を「見立てる」というとき、私たちは実際には「見ているかのように想像している」だけだといえるでしょう。しかし、見立てにおける想像は決して連想や思いつきといった突発的・恣意的なものではありません。それは、確かに自身が知覚した対象に即しているのです。「見立てる」行為には対象の表面的な見え方・対象が置かれた状況や環境を変えることなく、新たな世界の見方を創造する面白さがあります。
私たちのものの見方はこの社会に溢れる膨大なイメージによって規定されています。「見立て」は、そうした私たちの眼や思考は解放する可能性を持つでしょう。
オリオン座中央部を構成する三つの星は、等間隔に並ぶその形から農耕具のからすきにちなんで「からすき星」とも呼ばれています。本展では、出品作家3名を同じ明るさで輝くオリオン座の三連星に見立て、現実の知覚に立脚しながら想像力の営みが実践されている作品をご紹介致します。新進気鋭のペインターである木村萌は、素材の組み合わせや、素材を何かに見立てる過程で新たなイメージを創造します。ありのままの木・針金・石に見える像は、私たちが自ら積極的に見ることで、木村が描いたもう一つの存在をあらわにします。冨井大裕が日々Twitterで更新する《今日の彫刻》シリーズは、日常で遭遇する事物を彫刻という枠組みで捉え直し、デジタル写真で記録したものです。いわば自然の彫刻ともいえる本作は、冨井が感得した彫刻的性質を鑑賞者が受け取ることで、何気ない物が彫刻として見立てられます。西山巍は日本の伝統文化である水石を50年以上もの間、愛しんでいます。水石は形や文様から様々な風景・対象に見立てて鑑賞するものですが、西山は私たちが想像もつかない仕方で自然石を観察し、その眼差しによって驚くべき想像力を働かせます。
三者三様に実践される「見立て」をぜひご高覧ください。
<参考作品>
《悪庭》 木村萌 2017-現在
©moe kimura
《月へ帰る》 西山巍
©Takashi nishiyama
《今日の彫刻(110908-160908)》 冨井大裕 2011-2016
©Motohiro Tomii, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
撮影:柳場大