芸術学科科目「21世紀文化論」では、専任教員がさまざまな分野からゲストを招き、特別講義を実施しています。
10月14日の大島徹也教授担当の回では、画家の松本陽子氏による特別講義が行われました。
松本氏は1960年代より一貫して抽象絵画を制作しており、今回の講義では、東京藝術大学入学から現在の制作にいたるまでの経緯についてお話ししていただきました。
前半の講義では、藝大在学当時の社会状況や大学の様子、卒業後に滞在したアメリカでの西洋名画との出会いや、アクリル絵具の発見といった、松本氏の絵画表現を築くに至ったさまざまな経験についてうかがいました。
とくに、1972年から本格的にアクリル画の制作を始めたお話では、長年の試行錯誤によって培われた、松本氏と絵具との密接な関係性が印象強く伝わりました。
また、2005年から再び制作した油彩画についても、油絵具特有の素材的・歴史的な性質に対する松本氏の姿勢について詳しく知ることができました。
後半の質疑応答では、会場から寄せられた数多くの質問に答えるかたちで、絵画への向き合い方や、制作を続けるための心構えについて、松本氏にお話していただきました。
徹底して絵を描き続けてきた松本氏だからこそ考える、絵画のむずかしさや魅力について、多摩美の学生たちも真剣に聞いている様子でした。
作品をつくり続けるというのは、単純ながらもむずかしいことですが、制作への意欲を高めてくれる、力強いお言葉をたくさんいただきました。
今回の「21世紀文化論」は、松本氏の絵画表現の内実にせまる、貴重な講義となりました。