小さなマッチ箱の中には無数の本になる前の文節が無造作に入っている。この小さな枠の中から言葉を取り出して文をつくり、再び枠の中に戻す。この過程は規定された日本語という枠の中から自らの意思で文を作り出し、そして世に出す。その過程を簡略化したものであり、この際受け取り手はどのように受け取ってもいいし、不完全に受け取ることも是である。この小さなマッチ箱の中身は閉じている時には外にいる人には誰にも中身は見えない。いわば自分以外の徹底的な他者でありブラックボックスであり、言葉以前の混沌である。シュレディンガーの猫のようにこの小さな不可視の枠の中で私たちによって選択されることを待っている。もしくは私たちは言葉によって選択されるのを待たされている。