Master of Art Studies大学院 芸術学専攻

多摩美術大学芸術学科大学院修士課程(博士前期課程)のウェブページへようこそ。

本課程は、芸術分野における理論研究を深めて専門の道に進むための土台となる素養の育成を目的としています。皆さんが学部までの間に蓄積してきた知識や培ってきた思考力を、大学院では研究対象を絞り込むことによって可能な限り深め、入学2年後に修士論文を書くことを最終目標にしています。

ファイン・アートやデザインの理論、時代や国・地域を問わない美術史、現代美術の批評的な視点からの考察、映像や文学、民俗学など幅広いジャンルの理論探究などを対象とした広い視点での研究を可能にしているのが、本学科の大学院の特徴です。

入学後は大学院生それぞれに専任教員が指導のためにつき、一緒に考えながら研究を進めます。専任教員はそれぞれ異なるジャンルのスペシャリストです。教員一人ひとりのメッセージをぜひお読みになって本課程の扉を開き、充実した学究生活へ旅立たれてください。

芸術学科教員一同

※ 入試に関しては下記のURLを参照してください。
http://www.tamabi.ac.jp/admission/exam/gp_master.htm

専任教員

※ 担当授業は2024年度のものを掲載しています。

安藤 礼二
Ando Reiji

受験生へ
私は文芸批評を行っています。「批評」とは広い意味での解釈学だと思っています。書くためには読まなければならない。創造的に読むことが創造的に書くことにつながる。それが私のモットーです。対象は「文学」ですが、書物だけに限らず、表現が発生してくる現場を人類学や民俗学などのフィールドに探っています。祝祭のなかで人間は自分を超えた世界を垣間見ることができます。さまざまな領域で表現に関心をもつ皆さんを歓迎いたします。

専門分野
文芸評論

担当授業
芸術学Ⅴ
鈴木大拙、西田幾多郎、南方熊楠、柳田國男、折口信夫という五人の思想家の営為をもとに日本近代思想史の可能性を再検討する。宗教、哲学、民俗学という細分化された学問分野に総合を取り戻して、それをさらに現代の現に直結する問題にまで開いてゆくことを意図している。今期は特に折口信夫の代表作を『古代研究』を読み解きながら、考察を進めていきたい。

芸術学Ⅳ
マルセル・デュシャンの専門家である中尾拓哉の協力のもと、デュシャンの「大ガラス」を綿密に検討し直しながら、アーカイヴとして存在する芸術作品を、シュルレアリスム(安藤)、さらにはフルクサス(中尾)にまで敷衍していきたい。
図書館やアートアーカイヴセンターに実際に収蔵されている資料を実践的に活用していきたい。

家村 珠代
Iemura Tamayo

受験生へ
私は、美術展キュレイトリアルの実践を行なっています。
毎年、さまざまな切り口から展覧会を企画していますが、一貫していることは、アーティストと協働して展覧会をつくるということです。明確な役割分担をあらかじめ決めず、「現場」から、その内容の想定を超えたところまで膨らませていく、こうした実践を通して、展覧会やキュレーションの可能性を開いていければと考えています。
こうした現場の体験をもちながら、アーティスト論やアートの動向等を論文のテーマとしていきたいという意欲のある学生と一緒に実践研究ができたらと思っています。

専門分野
キュレーション

担当授業
芸術学Ⅰ
制作/作品/展示を、間口をひろげて探索することで、制作/作品/展示に対する既成概念を外すこと、あるいはずらすことから見えてくる、制作/作品/展示への新たな視点を提示します。

越後谷 卓司
Echigoya Takashi

受験生へ
映画が総合芸術かどうかはともかく、音楽、美術、文学、演劇等の分野とも深く関わることは間違いありません。俯瞰的な視点による、柔軟な思考で知的好奇心を育んでほしい。

専門分野
実験映画、ビデオアートを軸に、ドキュメンタリー、アニメーション、劇映画等の領域も視野に入れ、映像を考察しています。

担当授業
芸術学Ⅲ
複数のショットから構成される映画で、各ショットを有機的に結び付ける役割を果たしているものの一つに、人物間の視線のやり取りがあると考えます。ただ視線は映画においてのみ機能しているのではなく、先行する絵画や写真でも機能し、またマンガ(特にストーリーもの)は映画からの影響が色濃いでしょう。本講ではそれら周辺領域にも目配せしながら、映画における「まなざし」について考えてゆきます。

大島 徹也
Oshima Tetsuya

受験生へ
美術史、あるいは美術を中心とした芸術学や博物館学などを研究する人を受け入れています。特に美術館学芸員や研究者の育成に力を入れていますが、それに限りません。美術史を学んだ経験を活かして社会で活躍したいと考えている人を歓迎します。基礎として、美術館や画廊を訪れて作品現物に積極的に接することと、文献を渉猟して丁寧に読み込んでいくことが重要です。また、作家との対話やアトリエ訪問なども、大切かつ楽しいものです。

専門分野
西洋近現代美術史

担当授業
芸術学Ⅱ
20世紀前半に生み出されて以後、現在に至るまで、美術のみならず芸術・文化においてさまざまな豊かな展開を見せる <コラージュ> の美学や実作品について考察していきます。

小川 敦生
Ogawa Atsuo

受験生へ
私は前職の美術記者時代に「情報は足で稼げ」と多くの先輩記者に教えられ、全国を駆け回りました。旅は多くの刺激をもたらし、歩くことは脳を活性化します。美術研究の基本は、まず作品の実物を見ること。ここでも「足で稼ぐ」フィールドワークは大きく物を言います。本学でも、頭だけでなく足を使うアクティブな大学院生の研究ぶりを見るのを何よりも楽しみにしています。

専門分野
ジャーナリズム

担当授業
芸術学Ⅶ―美術の発生と変容〜文字と絵の関係を通して俯瞰する―
美術はいかにして発生するか。またいかにして変容するか。主に、お互いが極めて親しい存在であり続けてきた日本の書と絵の関係を見ながら、多角的に考察する。

金沢 百枝
Kanazawa Momoe

受験生へ
私は中世美術史が専門です。とくにロマネスク美術を専門にしているので、キリスト教図像学や建築などについても調べています。西洋美術史といっても、まだ十分に研究されていない分野も多いように思います。モノとしっかりと向き合い、それをどのように歴史のなかに位置づけるのか。史料を精読するとともに、見るセンスを磨くためにはどうしたら良いのか、開かれた世界は広大です。ともに歩みましょう。

専門分野
西洋中世美術史・キリスト教図像学

担当授業
芸術学Ⅵ―図像学入門―
図像学(Iconography)とは、美術史学で絵画や彫刻を分析する際の方法論のひとつです。様式論や、解釈学(Iconology)と組み合わせて、分析を進めてゆく基本的な方法論で、西洋美術史の基礎といえるでしょう。この授業では、主にキリスト教図像学を学ぶことで、どのように伝統的な美術史学が成り立っているのかを、講義、講読、そして自ら発表することによって方法論を学びます。
研究手法の基礎を学ぶことで、その考え方を、作品制作や、美術史研究、あるいは文学研究に生かしていただけたらと思います。
講読する文献は、履修者の興味に照らし合わせて考えるつもりですが、現在のところ、アーウィン・パノフスキー、アンドレ・シャステル、メイヤー・シャピロなどを考えています。

木下 京子
Kinoshita Kyoko

受験生へ
本学着任前はアメリカの美術館で日本美術の学芸員をしていました。
歴史も文化も社会制度もあらゆることが異なる地で日本美術の展覧会や日本文化の普及に携わることには様々な葛藤がありましたが、けれども海外にいることでアジアの一国として日本を捉えることができ、自国について新たな見識を持つことができたと思います。
研究を進めるには、異なる視点を持ちながら柔軟に思考することが重要です。
自分自身の感性を大切にして、自身の置かれた環境を楽しみながら、共に研究活動に勤しみましょう。

専門分野
日本美術史・文化史

担当授業
美術史Ⅳ—ゼミを通して、調査力・思考力・コミュニケーション力・人間力を深めよう!—
自分の思ったことや感じたことを、自身の考えとして深化させること。形にすること。
自分の思いや考えを他者(本ゼミの履修者)に伝えること、表現にすること、文章にすること。積極的に意見交換ができるようになること。
そして、究極的には自分自身と対峙すること。



論文

大学院芸術学専攻では、修了論文指導教員から個別に指導を受け、また調査・研究をすすめながら40,000字以上の修士論文を執筆します。
また、年に数回、プレゼンテーションと質疑応答を行ったり、論考の提出があります。

※ 過去5年間の修士論文タイトルを掲載しています。

2023年度

  • 1970年前後のジェームズ・タレル:制作の転換期とその背景ー外部へと開かれる作品を巡って
  • 1950年代における河原温の実践とその展開についての調査研究
  • パーシヴァル・ローエルとオカルトー御嶽講と近代スピリチュアリズム

2022年度

  • 『ブレードランナー』シリーズからみるレプリカントと⼈間の死の価値観
  • 憑依と身体、「力」を巡る考察〜ジャワ島の芸能ジャティランと伝統武術シラットを通して〜

2021年度

  • 車窓と移動の経験 鉄道における視知覚現象と社会・文化の考察
  • ラパ・ヌイ人の再構築と彼らの創造について──ラパ・ヌイ人の精神世界の再検討──

2020年度

  • 魯迅思想における『域外小説集』装幀の研究
  • 球体関節が人形の身体にもたらすもの―四谷シモンの人形と澁澤龍彦の『人形愛序説』の分析を軸とした考察―
  • 「非場所的な美術館」―ザ・ヴァーチャル美術館の形成、展開と意義―
  • 1986年前後の砂澤ビッキ作品の制作とその背景について――「⾵雪という名の鑿」の解釈を巡って――
  • 多重混交モデルにおける死⾓と遍在――非−認識的コレスポンダンスの考察――

2019年度

  • バンクシーのストリート・アート作品の分析、及び美術史的コンテキストでの位置付けについての考察
  • 重源の構想した礼拝空間における超越的力の顕現
  • 「瀟湘八景図屏風」と狩野尚信――東京国立博物館蔵狩野尚信筆「瀟湘八景図屏風」を中心に――



出版

大学院芸術学専攻では、1年生を中心に、研究誌『Subject』を毎年発行しています。
『Subject』は主催するイベントの報告や、自由にテーマを設けた論考・国内外の展覧会レビュー・インタビュー、1・2年生の研究報告からなり、編集なども学生が行います。

※ 過去5年間の目次を掲載しています。

Subject’23
特集
◎ トークイベント「舞踏(身体表現)と記録」に関する対談

論考
◎ 漢代画像石についての研究の変遷と埋葬施設における機能
◎ ユージン・スミスとマグナム・フォトー1955年の参加をめぐって
◎ 嶋本昭三による「壜投げ」ー制作方法として、パフォーマンスとして
◎ ドサ回り、リアリズムー制作者懇談会絵画部の活動に関する基本的情報の検証と考察

研究報告
◎ 2023年度 修了論文要旨(博士前期課程2年)

Subject’22
特集
◎ トークイベント「横断すること 文学/美術/世界」

論考
◎ ジェームズ・タレルと日本─ 一九六九年の黒田辰秋訪問を巡って─
◎ 河原温による「印刷絵画」の取り組み─ 基本的情報の整理とその意義についての考察 ─
◎ パーシヴァル・ローエルが見た御座と日本人

研究報告
◎ 2022年度 修了論文要旨(博士前期課程2年)

Subject’21
特集
◎ トークイベント「身体を通して世界と向き合う〜経験から表現へ〜」

論考
◎ 『ブレードランナー』シリーズにおけるレプリカントの人間性
◎ インドネシア・ジャワ島の芸能ジャティランを通して考察する身体技法としての憑依

研究報告
◎ 2021年度 修了論文要旨(博士前期課程2年)
◎ 2021年度 修了論文中間報告(博士前期課程1年)

Subject’20

論考
◎ 鉄道の車窓景観における地域認識に関する考察——多摩ニュータウン路線におけるフィールドワークから——
◎ モアイに至るまで——ラパ・ヌイ人の起源

研究報告
◎ 2020年度 修了論文要旨(博士前期課程2年)
◎ 2020年度 修了論文中間報告(博士前期課程1年)

Subject’19

特集
◎ トークイベント「Making――人ならざるものと かたちづくること――」

論考
◎ 武満徹と図形楽譜――『リング』から考察する図形楽譜の性質――
◎ 地域美術館の「ブランド」活性化について――島根県立美術館や青森県立美術館の考察を含めて――
◎ 砂澤ビッキ作品とトーテムポール――「トーテムポール的」砂澤ビッキ作品を巡って――
◎ 人ならざるものとの共同制作はマウンドである――コレスポンダンスにおける非認識的領域の考察――

研究報告
◎ 2019年度 修了論文要旨(博士前期課程2年)
◎ 2019年度 修了論文中間報告(博士前期課程1年)



企画

大学院芸術学専攻では、1年生を中心にゲスト講師などの方を招いてイベントの企画を行います。

※ 過去5年間のイベント概要を掲載しています。

2023年度

白と黒 目に映る光線、身体に映る影

ゲスト:上杉満代(舞踏家)、高松真樹子(舞踏家/映像作家)
日時 :2023年9月22日(金) 第1部 ワークショップ 13:00~14:40 / 第2部 対談 15:00~17:00(開場14:50)
会場 :多摩美術大学八王子キャンパス 芸術学棟3階25-312教室
企画 :多摩美術大学 大学院美術研究科 芸術学専攻

2022年度

横断すること 文学/美術/世界

ゲスト:宮内勝典(小説家)
日時 :2022年9月24日(土) 16:00〜18:00
会場 :多摩美術大学八王子キャンパス 情報デザイン棟・芸術学棟3階 25-311教室
企画 :多摩美術大学 大学院美術研究科 芸術学専攻

2021年度

身体を通して世界と向き合う〜経験から表現へ〜

ゲスト:第1回 伊藤比呂美(詩人)、第2回 最上和子(舞踏家)、高無宝良(剣術家)
日時 :第1回 2021年11月13日(土)13:00〜15:15、第2回 2021年11月25日(木)10:00〜16:00
会場 :多摩美術大学八王子キャンパス 情報デザイン棟・芸術学棟3階 25-312教室ほか
企画 :多摩美術大学 大学院美術研究科 芸術学専攻

2019年度

Making――人ならざるものと かたちづくること――

ゲスト:平倉圭(横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院Y-GSC准教授)× 金子遊(本学芸術学科准教授)
日時 :2019年9月27日(金)13:10〜16:00(13:00開場)
会場 :多摩美術大学八王子キャンパス 情報デザイン棟・芸術学棟3階 25-311教室
企画 :多摩美術大学大学院 芸術学専攻芸術学研究領域

2018年度

生の芸術の捉え方――みずのきと考えるアール・ブリュット――

ゲスト:奥山理子(みずのき美術館キュレーター)
日時 :2018年7月15日(日)13:00〜15:00(12:40開場)
会場 :多摩美術大学八王子キャンパス 情報デザイン棟・芸術学棟3階 25-312教室
企画 :多摩美術大学大学院 芸術学専攻芸術学研究領域