多摩美術大学芸術学科大学院修士課程(博士前期課程)のウェブページへようこそ。
本課程は、芸術分野における理論研究を深めて専門の道に進むための土台となる素養の育成を目的としています。皆さんが学部までの間に蓄積してきた知識や培ってきた思考力を、大学院では研究対象を絞り込むことによって可能な限り深め、入学2年後に修士論文を書くことを最終目標にしています。
ファイン・アートやデザインの理論、時代や国・地域を問わない美術史、現代美術の批評的な視点からの考察、映像や文学、民俗学など幅広いジャンルの理論探究などを対象とした広い視点での研究を可能にしているのが、本学科の大学院の特徴です。
入学後は大学院生それぞれに専任教員が指導のためにつき、一緒に考えながら研究を進めます。専任教員はそれぞれ異なるジャンルのスペシャリストです。教員一人ひとりのメッセージをぜひお読みになって本課程の扉を開き、充実した学究生活へ旅立たれてください。
芸術学科教員一同
※ 入試に関しては下記のURLを参照してください。
http://www.tamabi.ac.jp/admission/exam/gp_master.htm
専任教員
※ 担当授業は2024年度のものを掲載しています。
安藤 礼二
Ando Reiji
家村 珠代
Iemura Tamayo
受験生へ
私は、美術展キュレイトリアルの実践を行なっています。
毎年、さまざまな切り口から展覧会を企画していますが、一貫していることは、アーティストと協働して展覧会をつくるということです。明確な役割分担をあらかじめ決めず、「現場」から、その内容の想定を超えたところまで膨らませていく、こうした実践を通して、展覧会やキュレーションの可能性を開いていければと考えています。
こうした現場の体験をもちながら、アーティスト論やアートの動向等を論文のテーマとしていきたいという意欲のある学生と一緒に実践研究ができたらと思っています。
専門分野
キュレーション
担当授業
芸術学Ⅰ
制作/作品/展示を、間口をひろげて探索することで、制作/作品/展示に対する既成概念を外すこと、あるいはずらすことから見えてくる、制作/作品/展示への新たな視点を提示します。
越後谷 卓司
Echigoya Takashi
受験生へ
映画が総合芸術かどうかはともかく、音楽、美術、文学、演劇等の分野とも深く関わることは間違いありません。俯瞰的な視点による、柔軟な思考で知的好奇心を育んでほしい。
専門分野
実験映画、ビデオアートを軸に、ドキュメンタリー、アニメーション、劇映画等の領域も視野に入れ、映像を考察しています。
担当授業
芸術学Ⅲ
複数のショットから構成される映画で、各ショットを有機的に結び付ける役割を果たしているものの一つに、人物間の視線のやり取りがあると考えます。ただ視線は映画においてのみ機能しているのではなく、先行する絵画や写真でも機能し、またマンガ(特にストーリーもの)は映画からの影響が色濃いでしょう。本講ではそれら周辺領域にも目配せしながら、映画における「まなざし」について考えてゆきます。
大島 徹也
Oshima Tetsuya
受験生へ
美術史、あるいは美術を中心とした芸術学や博物館学などを研究する人を受け入れています。特に美術館学芸員や研究者の育成に力を入れていますが、それに限りません。美術史を学んだ経験を活かして社会で活躍したいと考えている人を歓迎します。基礎として、美術館や画廊を訪れて作品現物に積極的に接することと、文献を渉猟して丁寧に読み込んでいくことが重要です。また、作家との対話やアトリエ訪問なども、大切かつ楽しいものです。
専門分野
西洋近現代美術史
担当授業
芸術学Ⅱ
20世紀前半に生み出されて以後、現在に至るまで、美術のみならず芸術・文化においてさまざまな豊かな展開を見せる <コラージュ> の美学や実作品について考察していきます。
小川 敦生
Ogawa Atsuo
受験生へ
私は前職の美術記者時代に「情報は足で稼げ」と多くの先輩記者に教えられ、全国を駆け回りました。旅は多くの刺激をもたらし、歩くことは脳を活性化します。美術研究の基本は、まず作品の実物を見ること。ここでも「足で稼ぐ」フィールドワークは大きく物を言います。本学でも、頭だけでなく足を使うアクティブな大学院生の研究ぶりを見るのを何よりも楽しみにしています。
専門分野
ジャーナリズム
担当授業
芸術学Ⅶ―美術の発生と変容〜文字と絵の関係を通して俯瞰する―
美術はいかにして発生するか。またいかにして変容するか。主に、お互いが極めて親しい存在であり続けてきた日本の書と絵の関係を見ながら、多角的に考察する。
金沢 百枝
Kanazawa Momoe
受験生へ
私は中世美術史が専門です。とくにロマネスク美術を専門にしているので、キリスト教図像学や建築などについても調べています。西洋美術史といっても、まだ十分に研究されていない分野も多いように思います。モノとしっかりと向き合い、それをどのように歴史のなかに位置づけるのか。史料を精読するとともに、見るセンスを磨くためにはどうしたら良いのか、開かれた世界は広大です。ともに歩みましょう。
専門分野
西洋中世美術史・キリスト教図像学
担当授業
芸術学Ⅵ―図像学入門―
図像学(Iconography)とは、美術史学で絵画や彫刻を分析する際の方法論のひとつです。様式論や、解釈学(Iconology)と組み合わせて、分析を進めてゆく基本的な方法論で、西洋美術史の基礎といえるでしょう。この授業では、主にキリスト教図像学を学ぶことで、どのように伝統的な美術史学が成り立っているのかを、講義、講読、そして自ら発表することによって方法論を学びます。
研究手法の基礎を学ぶことで、その考え方を、作品制作や、美術史研究、あるいは文学研究に生かしていただけたらと思います。
講読する文献は、履修者の興味に照らし合わせて考えるつもりですが、現在のところ、アーウィン・パノフスキー、アンドレ・シャステル、メイヤー・シャピロなどを考えています。
木下 京子
Kinoshita Kyoko
受験生へ
本学着任前はアメリカの美術館で日本美術の学芸員をしていました。
歴史も文化も社会制度もあらゆることが異なる地で日本美術の展覧会や日本文化の普及に携わることには様々な葛藤がありましたが、けれども海外にいることでアジアの一国として日本を捉えることができ、自国について新たな見識を持つことができたと思います。
研究を進めるには、異なる視点を持ちながら柔軟に思考することが重要です。
自分自身の感性を大切にして、自身の置かれた環境を楽しみながら、共に研究活動に勤しみましょう。
専門分野
日本美術史・文化史
担当授業
美術史Ⅳ—ゼミを通して、調査力・思考力・コミュニケーション力・人間力を深めよう!—
自分の思ったことや感じたことを、自身の考えとして深化させること。形にすること。
自分の思いや考えを他者(本ゼミの履修者)に伝えること、表現にすること、文章にすること。積極的に意見交換ができるようになること。
そして、究極的には自分自身と対峙すること。
受験生へ
私は文芸批評を行っています。「批評」とは広い意味での解釈学だと思っています。書くためには読まなければならない。創造的に読むことが創造的に書くことにつながる。それが私のモットーです。対象は「文学」ですが、書物だけに限らず、表現が発生してくる現場を人類学や民俗学などのフィールドに探っています。祝祭のなかで人間は自分を超えた世界を垣間見ることができます。さまざまな領域で表現に関心をもつ皆さんを歓迎いたします。
専門分野
文芸評論
担当授業
芸術学Ⅴ
鈴木大拙、西田幾多郎、南方熊楠、柳田國男、折口信夫という五人の思想家の営為をもとに日本近代思想史の可能性を再検討する。宗教、哲学、民俗学という細分化された学問分野に総合を取り戻して、それをさらに現代の現に直結する問題にまで開いてゆくことを意図している。今期は特に折口信夫の代表作を『古代研究』を読み解きながら、考察を進めていきたい。
芸術学Ⅳ
マルセル・デュシャンの専門家である中尾拓哉の協力のもと、デュシャンの「大ガラス」を綿密に検討し直しながら、アーカイヴとして存在する芸術作品を、シュルレアリスム(安藤)、さらにはフルクサス(中尾)にまで敷衍していきたい。
図書館やアートアーカイヴセンターに実際に収蔵されている資料を実践的に活用していきたい。