大野 詠史《つちかえるる》

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 背板がないことで、押され、引かれもする抽斗。あるいは綴じを、無効化して意識される本以前。器としてもあるが、押し出すことで、彼方の土壌へ、身ひとつの手が、伸ばされ離される。押し返す者があるとして、その者は、こちらからは見えない。
 糊には膠が使用され、気配としての異形が、指に触れる。向こうもまた、未知の身ひとつで、押し返すか。
 この運動性は、こちらとあちらの距離を、問題とした。しかし器は、どのような形式としてあり、なにを受け止めうるのか。遠方から、接近するものがあるとして、それはなにか。[Y. Noguchi]