コロンビアに”取材”にやってくるのは、一人は監督風の、もう一人はその助手らしき二人組の欧米人の男。“貧しい国”コロンビアを撮ろうとする二人組は、外で遊ぶ子どもたちに声をかけ、お金を投げて池に入らせることで”ストリートチルドレン”を撮影したり、なんてことのない普通の家族と打ち合わせをして、たまたま見かけた古い家屋の前で”貧しい家庭”にインタビューをしたりする。しかし家屋の本当の住人が出てくることで事態は急変し、私たちはこの作品が“モキュメンタリー”であることに気付く。
「この作品は、“社会政治的”と思われるドキュメンタリー映画が増殖していながら、貧困ポルノとも言うべき新しいジャンルを生み出すほどに、商業映画主義が貧困を搾取しているという現実を指摘するものだった」と今年度の特集カタログ『ラテンアメリカ——人々とその時間:記憶、情熱、労働と人生』の中でルイス・オルビナ監督が語っているように、作中では欧米人二人組がわざとらしいくらいに貧困層を搾取していく様子が描かれる。その大げささやツメの甘さは思わず笑ってしまうほどだが、「ドキュメンタリーをこんな風に撮っている訳がない」とは思い切れない自分にも少しぞっとした。貧困がテーマのものに限らず、ドキュメンタリーを見る時には多かれ少なかれ「やらせなのではないか?」という気持ちが漂ってしまう。ドキュメンタリーにおける「やらせ」が必ずしも悪いことではないと思うが、描かれた現実だけが「本当の現実」なのではない、ということを改めて考えさせられた。豊かになった現代日本にも貧困は存在するだろう。本当の問題は、私たちの見えないところにもたくさん潜んでいる。
文=今井楓
『貧しさを吸い取る者たち』(英題:Agarrando pueblo)
コロンビア/1978/カラー・モノクロ/28分
監督・脚本・製作=ルイス・オルビナ(Luis Ospina)、カルロス・マヨロ(Carlos Mayolo)