髙山 瑛子《あいうえお》

 CDジャケットのような本を開くとき、ディスクの代りには、透明な窓が現れた。対象の境に矩形の線が引かれ、向う側では、雨が降っていた。濡れることもなく、頁の窓辺に立つ。
 窓枠の縁に、記号は母音の形をとって置かれ、消された子音はどこかと探っていた。別の縁、行は、左右を反転させて立っていた。窓を隔てたこちらとあちらの奥行に、もう一度、音の形を求める。「しとしと」、「ぽつぽつ」、「ぽたぽた」、「ぱらぱら」、「ざあざあ」……。雨滴の描く場所は、いまはこちらかあちらか。反転した、窓の外だった。濡れながら、音を聞いていた。[K. Miyaura]