fuka torii《the light》

 光源の位置は、移りゆく。陽は昇り、月は傾く。照り返しに浮かぶ世界とは、プリズムの生む多面体のようだとも。春と夏とに分類される二書。光の位置が、移ろっている。円窓の空から踏み出され、追うべき光源を前に置いた春。夏の書は、逆光の陰影に、世界の諸相を捉え直すよう。著者を、決意の光が射抜いてもいた。人工内耳手術を控え、見渡した世界。しかし音のない世界もまた、光学のうちにある、ひとつの世界。
 経本折りの本は、あるいは虹なのだ。春夏の後にも季節は移ろう。過去と未来は、なに色と架かるか。どんな目が、それを美しいと見上げるか。[K. Miyaura]