[title] Institute for Art Anthropology INFORMATION

Jan 14, 2009

富山県南砺市・調査報告7

報恩講のお斎(おとき)には、二つのお膳が用意されます。

お椀のふたを開けた様子です。 一の膳は6品。 手前真ん中から時計回りに、なめこの柚子おろし。むかごご飯。 小豆と南瓜のいとこ煮。煮しめ(牛蒡、煤竹、人参、ぜんまい)の上にのった五箇山豆腐。 ずんだの大根あえ。そして真ん中の高槻が、そうめん瓜とふきの煮物に胡桃。

二の膳は7品。 手前右のお椀があつもの五種(湯葉、椎茸、お麩、卵など)。 その上の皿には右からりんご。南瓜の煮物。蕎麦生地にハムとアスパラを巻いた蒸しもの。 ジャガイモ。ゆべし。左端にとち餅があります。

このほか、大皿とお重に詰められた蕪の梅酢漬けと煤竹の煮物、そして 呉汁(漉す前の豆乳に塩で味付けしたもの)、手打ち蕎麦、地酒が振舞われました。 法会の精進料理なので、肉魚はなく、動物性たんぱく質は卵くらいでした。

食べきれない量ですが、それは皆了解済み。 数やお品書きに決まりはないものの、多いことが常なのだとか。 親鸞の好物の小豆は必ずそえられます。 お椀からはみ出すほどの五箇山豆腐はお決まりで、「はみ出すほど大きいことが大事」と言います。 残す人にはあらかじめ容器が用意され、料理を詰めて持ち帰り、家族で頂きます。

一年に一度の特別な食事には、珍しい食材を奮発して用意したり、 普段は食べられない料理を連想しがちですが、このお膳には変わったものは見当たりません。 「よその土地から取り寄せる食材はあるのですか?」と質問したところ、 やはり、それはないですねえ、という答えがとても自然に返ってきました。

「自然の徳と土地の実りに感謝する食事ですから、自ずと土地のものになるのでしょうね。 おかずに使った食材は、この土地で作られたり、裏山で採ってきたものに手を加えたものばかりです。 呉汁の大豆はもともとすり鉢ですり潰して作りますが、今はフード・プロセッサーを使います。」

土地の実りを大切に頂くことこそ贅沢なのだと、当時の人達は考えていたのかも知れませんね、 と料理を作った方は話すのでした。

ポスト @ 2009/01/14 16:54 | 調査報告

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