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Mar 11, 2009

港千尋評論「琥珀の心─消滅をめぐる美術のごく小さな歴史」

季刊『ART IT』(No.23、2009 Spring)での特集、「記憶のアート/消滅のアート」 に、港所員が寄稿しています。

「琥珀の心─消滅をめぐる美術のごく小さな歴史」と題された文中では、 太古の時代の樹脂が地中で石化した琥珀の中に、まれに一緒に閉じ込められた昆虫や植物があること を切り口に、記録や記憶について、それらに絡んだ美術作品を挙げて考察しています。

『写真とは、いずれあるときに不在になるということを、先回りして記録してしまう技術である。』 『消滅も記録も、ひとつのプロセスである。』 という語り口には、一人の写真家・映像人類学者として、被写体のみならず、 記録として保存された写真そのもの、記憶そのものがいずれ消滅することを余儀なく されている存在だということをみつめ、その視点にたって、 それでも記録や記憶することについて考える姿勢がうかがえます。

ある特定のものを保存するにはそれ以外のものの消滅を容認しなくてはいけない、という矛盾を 抱えてまで、私たちはなぜ遺跡を保存しようとし、大量の情報を博物館に保存し、 いつか朽ちることを容認しながらも、ものを作り続けるのでしょうか。 また、忘却されていたものを掘り起こして再現することの意味は何なのでしょうか。

文章の最後の一説は、そんな問いに答えようとする港所員の小さな独白のようにも受け取られます。

※同号には、内藤礼さんのインタヴューも掲載されています。  内藤さんは、2006年、愛知県佐久島での展示の際に中沢所長と対談をされました。 ※『ART IT』のページはこちらを御覧下さい。    

ポスト @ 2009/03/11 14:13 | 雑誌記事掲載

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