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10月2日(金)に行われたIAA主催「bi-logic研究会」の報告です。
この研究会は、研究者の発表の場として今年から立ち上げられました。 2009年度のテーマは「芸術的創造の場としての神話思考」、 第1回が5月に行われたのにつづき、第2回の今回のテーマは「モノとの同盟」です。
一人目の発表者、東海大学大学院研究生(古代アンデス文明研究)の鈴木美穂子氏は、 「モチェ図像 ーモノの反乱のテーマー」と題し、現在のペルー北海岸に紀元前後〜紀元後700年頃 にかけて興ったモチェ(Moche)文化に描かれる、擬人化された道具の図像を取り上げました。 文字を持たなかったモチェ文化が研究されるなか、これらの図像は、これまで漠然と「アニミズムの表現の 一例」と言及されるにとどまっていました。しかし、鈴木氏は発表の中で、それらを今までの西洋的な視点 とは異なる東洋的な視点で見なおした時、これまでの研究では明らかにされなかった図像に宿る“力”や、 モチェ人がモノとどのように向き合っていたか、新たな姿が見えてくることを述べました。
二人目には、武蔵野美術大学教授(民俗学)の神野善治氏を迎えました。 「モノと記憶 ー民具調査の現場からー」と題された発表のなかで、神野氏はご自身の膨大な民具調査の 一端から見えてくる、民具の世界の広がりについて言及。その構造的な研究から、民具の発達が、さな がら曼陀羅のように私たちの暮らしの中で展開されていく様子が明らかになります。 『木霊論』(白水社)の研究成果にも触れた調査報告はとても多岐にわたり、道祖神の原型といわれる 「人形」から、東京都三鷹市に現存する水車小屋の内部、そして最後に南方熊楠の「南方曼陀羅」に見ら れるような、道具の持つ流動性に言及し、発表を終わりました。
鈴木氏の南米、神野氏の日本民俗学という視点から語られる「モノ」の姿は、ともに人間との協働関係を 考えさせられる、とても新鮮なものでした。
発表後の質疑応答では、出席した研究者や中沢所長から活発な意見や質問が出され、まだまだ終わらない 空気のなか、時間となりました。
研究所ブログでは、今後、このような非公開の研究会の報告もして参りたいと思います。
■ バイロジックbi-logic研究会とは?
宇宙の生み出した人間の心とその創造性について、諸科学の探究を踏まえた根本的 な視点の転回が迫られています。バイロジックbi-logic研究会は、現生人類の「心」 を中心に据えながら、そうした諸科学の知見を総合し、21世紀の世界に新しい価値と 視点をもたらそうとする、意欲的な研究発表のための場所となることを目指します。 この研究会は人間と自然、心と宇宙の本質に関わるあらゆる事象を、研究のテーマ とします。その成果は開所4年目を迎える芸術人類学研究所(IAA)の活動、また広く社 会へと開かれた新しいタイプの講座組織=《くくのち学舎》の実践と共鳴・連動して発 表されます。学問の中心に大胆な創造性と冒険心を呼び戻し、芸術作品の創造に比す べきひらめきを手に入れるための、切磋琢磨の場面となることを目標とします。 〔コーディネーター:石倉敏明(芸術人類学研究所助手)〕
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10月2日(金)に行われたIAA主催「bi-logic研究会」の報告です。
この研究会は、研究者の発表の場として今年から立ち上げられました。 2009年度のテーマは「芸術的創造の場としての神話思考」、 第1回が5月に行われたのにつづき、第2回の今回のテーマは「モノとの同盟」です。
一人目の発表者、東海大学大学院研究生(古代アンデス文明研究)の鈴木美穂子氏は、 「モチェ図像 ーモノの反乱のテーマー」と題し、現在のペルー北海岸に紀元前後〜紀元後700年頃 にかけて興ったモチェ(Moche)文化に描かれる、擬人化された道具の図像を取り上げました。 文字を持たなかったモチェ文化が研究されるなか、これらの図像は、これまで漠然と「アニミズムの表現の 一例」と言及されるにとどまっていました。しかし、鈴木氏は発表の中で、それらを今までの西洋的な視点 とは異なる東洋的な視点で見なおした時、これまでの研究では明らかにされなかった図像に宿る“力”や、 モチェ人がモノとどのように向き合っていたか、新たな姿が見えてくることを述べました。
二人目には、武蔵野美術大学教授(民俗学)の神野善治氏を迎えました。 「モノと記憶 ー民具調査の現場からー」と題された発表のなかで、神野氏はご自身の膨大な民具調査の 一端から見えてくる、民具の世界の広がりについて言及。その構造的な研究から、民具の発達が、さな がら曼陀羅のように私たちの暮らしの中で展開されていく様子が明らかになります。 『木霊論』(白水社)の研究成果にも触れた調査報告はとても多岐にわたり、道祖神の原型といわれる 「人形」から、東京都三鷹市に現存する水車小屋の内部、そして最後に南方熊楠の「南方曼陀羅」に見ら れるような、道具の持つ流動性に言及し、発表を終わりました。
鈴木氏の南米、神野氏の日本民俗学という視点から語られる「モノ」の姿は、ともに人間との協働関係を 考えさせられる、とても新鮮なものでした。
発表後の質疑応答では、出席した研究者や中沢所長から活発な意見や質問が出され、まだまだ終わらない 空気のなか、時間となりました。
研究所ブログでは、今後、このような非公開の研究会の報告もして参りたいと思います。
■ バイロジックbi-logic研究会とは?
宇宙の生み出した人間の心とその創造性について、諸科学の探究を踏まえた根本的 な視点の転回が迫られています。バイロジックbi-logic研究会は、現生人類の「心」 を中心に据えながら、そうした諸科学の知見を総合し、21世紀の世界に新しい価値と 視点をもたらそうとする、意欲的な研究発表のための場所となることを目指します。 この研究会は人間と自然、心と宇宙の本質に関わるあらゆる事象を、研究のテーマ とします。その成果は開所4年目を迎える芸術人類学研究所(IAA)の活動、また広く社 会へと開かれた新しいタイプの講座組織=《くくのち学舎》の実践と共鳴・連動して発 表されます。学問の中心に大胆な創造性と冒険心を呼び戻し、芸術作品の創造に比す べきひらめきを手に入れるための、切磋琢磨の場面となることを目標とします。 〔コーディネーター:石倉敏明(芸術人類学研究所助手)〕